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「大人だって、泣いたらいいよ」を読んで。

まず本の帯にも書かれている様に、著者の紫原明子さんは何かの「専門家」ではない、自称「凡人」である。
お悩み相談の回答者として、何かの専門性を持っていたらそれに沿ってするのだろうけど、そうではない。そんな紫原さんがお悩み相談を引き受けるにあたってされた覚悟とは、どんなものだったんだろう。
本を読ませてもらって、同じ人間として自分の全てをさらし、生きてきた時間や経験、人生をかけて答えてくれている。そう感じる。
まずは思いを一緒に受け止めて泣いたり笑ったりして、その後「じゃあどうしよっか?」と、好奇心も覗かせた表情で、時には自由すぎるアイデアを提供しながら、とことん考えて寄り添ってくれる。そんな著者の魅力があふれる本である。
そのいう本って、なかなか無いんじゃないだろうか。

まずは相談内容をしっかりと受け止めた上で、こじれた心の絡まりをほぐして整理してくれる。すごく親しみやすい文章なのに、理論的でフェアなので、それがきちんと腑に落ちる。
そして、解決方法を示す時も、丁寧に相手がイメージできる様に話しかけてくれる。相談の文章の5〜6倍、時にはもっと沢山の言葉をついやし、正確に伝わるよう相手に寄り添って語りかけてくれる。平易な言葉だけどはっとさせられる、これまでありそうでなかった視点を示してくれる。
特に4章の「お母さん現象」は素晴らしいと思った。そしてこの家族に関する章では、お楽しみの笑いは控えめ。6章の人生編も同様で、より真摯に感じる。

時には、すぐには解決法が見つからない相談もある。できる事はしながら、時が経つのを待つしかない場合もある。当然と言えばその通り。相談者さんだってさんざん悩んでもがいて模索して、それでも見つからないから、紫原さんに相談してきているんだ。
その時は、その「どうしようもなさ」受け止めて、一緒にいてくれる姿勢がある。これって実は難しい事だと思う。多少ギリギリでも無理があっても、「解決方法」らしきものを示してしまった方が楽だ。とりあえず自分の肩の荷は下ろせるし、次に行ける。
けどそうはせず、そのしんどい状況に一緒にとどまり、時が経つのを待ってくれる。その真摯さと誠実さに力をもらう。

相談の合間に3つ、自分の事を書いたエッセイを差し込んでくれている。お悩み相談に回答するだけでなく、自分も実際どうやって悩みながら生きてきたか、生きているか、自分自身の人生をリアルに見せて共有してくれる。このレベルの違う寄り添い方に、覚悟と底無しの愛を感じる。みんなどうぞ、その愛に抱かれて欲しい。

硬軟自在。時には出先なのにニヤニヤが止まらず困るくらい笑わせてくれるのに、そうやってお気楽に緩んだ心に、気づくとスッと、人の寂しさや心の深淵に寄り添う言葉を差し込んでくれる。不意を突かれて言葉を失い、思わず泣きそうになってしまう。

傍観者なのに、他者の相談とそれに対する回答を読んでるだけで泣いている私は何…
時々差し込んでくれるエッセイを読んで、また泣きたくなっている私は何…

そうか、「泣いたらいいよ」は、私にも言ってくれてたんだな。読んだ全ての人に、言ってくれてたんだな。

多分、これからも人生の中で何度も読み返す。その度に、また新たに自分のアンテナにヒットする所があるはず。そんな事も楽しみに思う。
沢山笑ってじんわり泣いた後に力をもらう。
人間生きてればお悩みなんて尽きないけど、それでも大丈夫。世界はそんなに悪くない。
そう思ってにニヤニヤして、明日も生きていけると思う。そんな本でした。

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