見出し画像

趣味は、心から楽しもう

この頃は、来る日も来る日もギターを練習している。

1ヶ月前に、職場の音楽好きの人に触発されてついにアコースティックギターを買ってしまった。

実は、私は5年程前にギターを買ったことがある。しかし、たったの一週間程で「Fコードができない、指が痛い」とほざいて弾くのを辞めてしまった人間である。もう絶対にギターなんてやらないし、やってもロクなことがないと信じていた、それなのに再び買ってしまった。

ところが、今回はそれが良い方に転がった。ギターを買ってから1ヶ月が過ぎようとしているが、毎日2〜3時間くらい弾いている。ひどい時は4〜5時間くらい弾いて、手汗とギターの弦さびで指先が真っ青に染まることもある。この一ヶ月くらいで左手(弦を抑える方の手)の指先の皮が何度も生まれ変わって厚くなり、感覚がなくなってきた。(上手い人によるとこれは良い傾向らしい。)無論、Fコードも弾けるようになった。

昔、ピアノを習っていた。あの頃は、毎日の練習が好きじゃなかった。楽器というのは(真剣に取り組むのであれば)毎日1時間くらいは弾かないと感覚が鈍って上手くならないし、練習しなければピアノの先生にサボったことなど簡単にばれるし、毎月高い月謝を支払う親にとってはきちんとその元を取らない子どもは大変腹立たしいものである。私は泣く泣く練習していた。ピアノはそこそこ上手かったが、最終的には自分の意思できっぱりと「辞める」と言った。

いまとても楽しくギターを弾けているのには、いろいろなラッキーや境遇が重なっているからだと、この頃感じるようになった。考えたことをいくつかあげてみる。

一つ目は、誰にも干渉されずにできること。ギターは完全に趣味だし、ひとりで黙々と弾いているだけなので、何時間練習しようとしまいと、誰にも文句を言われることはない。もしまた辞めてしまっても文句は言われない、自分のお金で買ったギターだから。でも、まだ楽しいのでもうしばらくは続けると思う。続けたいと思う。

二つ目は、まだまだギターが下手だからだ。私は自分のことを器用貧乏な人間だと思っている。いろいろなことがそれなりにこなせるし、“こなせるように見せることができる”人間だと思う。(これは自分の良いところでもあり、大嫌いなところでもある。)こなせるようになるのが早いので、飽きるのもとても早い。好きで得意だったはずなのに飽きてしまうことが多いので、能力と気持ちが裏腹な点が非常に残念に思う。

でも、ギターは“幸運にも”こなすことができない。音楽(芸術)にはゴールがない。きっとどんなに上手くなっても本物の音楽家のような演奏は到底できないし、YouTubeで素人が演奏しているレベルでさえ私にとってはエベレスト並に高い。だから、飽きるまでの道のりがまだまだ遠そうなことが、私にとっては喜ばしいのだ。

三つ目は、私が音楽を大好きだからだ。私は小さい頃から音楽が大好きだ。(不思議だがこれだけは唯一飽きが来なかったものである。)音楽は素晴らしい、音楽は裏切らない、ただそれだけ。理由などいらない。

だからいま自分が夢中になれていることが、やっと心から大好きなものと重なったのがうれしい。

四つ目は、大好きな趣味を無理にシェアしなくてもいいこと。もしかしたらこれが一番大事かもしれない。巷では、「なんでも発信したほうがいい」と耳にするようになった。それはそれで良いと思う。だが、やはり他人に見せるとなると、(私の場合は)少なくとも体裁を気にしたり、ついつい「いいね!」の数を期待してしまったり、あるいはその期待が外れて内心落胆してしまったりと、何かと気疲れする部分もなくはない。

これまで(こんな風に)文章を書いて投稿したり、絵を描いてSNSに載せたり、無意識的にも意識的にも、自分が作ったものを他人に見せてきたことが多かった。最初は自分が楽しくて始めたことなのに、そのうち他人の視線を気にして取り繕おうとしたり、高評価を狙ったりして、肝心の自分は果たして楽しめているのか?と疑問に思うことも、全くないとは言えない。

私にとってギターは、「他人に見せびらかし、それに対する評価を気にする」という機会がない趣味だ。(一度SNSにあげたものの、見せびらかしたところで特に意味がないと感じた。上手くなったら調子に乗ってまたやるかもしれないけど。)実のところは、部屋に篭って好きなアーティストの曲を真似てひたすらジャカジャカ弾いているときが、何よりも楽しい。ただ、楽しい。それだけなのだ。本当の意味で「趣味だなあ」と感じるのだ。

私にとって、趣味はとても大事だ。(とてもとてもとても。)

仕事とか、生活とか、制約とか、他人にどう思われるとかこうしなきゃいけないとか、そういうことがすべて遮断され、好きなものに身体を包まれた世界でただただ時間が過ぎていく。そうだ、趣味は自分が一番楽しめるものじゃなくちゃ。自分が一番楽しめる場所で、楽しめる方法で、楽しめる範囲で、楽しめばいい。

こんなおおっぴらな世界になってしまったから、自分の大事な世界くらいは自分で守りたいものだ。もしあなたにも趣味があるのなら、趣味を心から楽しんで、そして何よりも、一番にあなた自身を楽しませてあげてはいかがだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?