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分析で大事なことは水曜日のダウンタウンに学べ

こんにちはHikaru Kashidaです。
この記事を書いているのは9月の末、秋が訪れようとしている季節です。
夜の肌寒さがちょうど心地良いシーズンですね。

秋は一年の中で僕が最も好きなシーズンです。居酒屋のもつ煮込みが美味しい。みなさまはいかがお過ごしでしょうか。

さて、前回は下記のような記事を書いて、『分析とは一体何なのか』というテーマでお話をしました。

またその中で分析を行う上での典型的な流れを、やや抽象的に記述しました。簡単に復習すると、

分析とは、『A or B』という問いに対して解を出すこと

であり、分析という仕事の全体像をステップに分けて表現すると次のようになるという内容でした。

step① 解くべき問い(知りたいこと)を見つける
step② AoB問の形に落とす
step③ そのAoB問にどうすれば解を出せるかを定義する
step④ 必要な数字を揃えAoB問の解を導出する
step⑤ 解となる情報を説明可能な形に落とす

本記事のテーマ

さて上記で復習がてらに紹介したこの『分析の流れ』、実は私が大好きなあるものに非常に似ているのです。

何だと思いますか?

それはTBSで水曜日の夜に放映している愛すべきバラエティ番組、『水曜日のダウンタウン』です。

今回は "水曜日のダウンタウンと分析” についてお話したいと思います。

ネタ切れなのか?

いまみなさんの頭の中には次のような疑問が浮かんだかもしれません。

まだ 第②回 なのになぜ突然、某松本氏と浜田氏がMCを勤めるバラエティ番組について話しだしたのだろう?

もしや、わずか二作目にしてこいつは早くも分析についてのネタが切れたのではないか?Hikaru Kashida とは空虚な存在なのではないか?

言わせてください。それは違います。

決してネタが尽きたので適当なことを話そうとしているわけではなく、僕はわりと本気でこのテーマについて語りたいと思っています。

実はこの『水曜日のダウンタウンは理想的な分析の流れ体現してんじゃねーのか仮説』について、4ヶ月ほど前に自分のTwitterにてなんとなしに呟いたことがありました。

特に誰の共感を得ることもないのではないかと思っていた適当なツイートだったのですが、意外にも多くの方からリアクションをいただき、ひとり驚いておりました。

これは本当に意外だったのですが、もしかして同じようなことを考えていた人は世の中に多かったのでしょうか?

画像1

TwitterのAnalyticsによると、この駄ツイートが20万人もの方の目に触れてしまったようです。

うーむ、これは、このツイートで言いたかったことをもう少しちゃんと書く必要があるのではないか...そのような強い(無駄な)使命感からこの記事を書くべく、筆を取っています。

水曜日のダウンタウンとは

さて、本記事の読者全員がこの番組について十分な知識を持っているわけではないと考えるのが妥当と思いますので、『水曜日のダウンタウン』という番組について簡単に解説しておきましょう。

ざっくりシンプルに言ってしまうと『芸人が思いついたある考え(=説)が正しいかどうかを、番組が検証する』という企画です。

例えば、次のような説があります。

・東京で八ツ橋買う人アリバイ工作以外考えられない説
・飲食店の看板に一番多く描かれている生き物 うなぎ説
・日本一多い曲のタイトルは「さくら」説
・ZARD曲のタイトル絶対サビに持ってくる説
・街でバンドT着てる人そのバンドのイントロクイズに答えられなかったらTシャツ没収されても文句言えない説

こういった正直どうでも良いといえばそれまでだが、もし知っておけるなら実は面白いかもくらいの仮説の検証を行うのが、この番組の秀逸かつ非常に面白いところです。

水曜日のダウンタウンに関する見解

この機に『水曜日のダウンタウン』について少し調べてみます。
番組の公式HPには次のように書かれています。

人は誰しも自分だけが信じる“説”をもっているはず。そこに確かな裏付けや科学的根拠がなかろうと、個人が妄信的に信じ込む“説”を芸能人・有名人たちが独自の目線と切り口でプレゼン。その“説”についてスタジオメンバーと激論を交わしながら展開していく。アカデミックでありながら、くだらないトーク&情報エンタテインメント番組だ。
 
その説は定説になりうるのか──
はたまた、人々を混乱させる前にこの世から処分すべきデマなのか──
実験ロケなども混じえて徹底検証していく!!

(番組公式HPより引用)

番組のテイストの割には、なんだか勢いのある正統派っぽい感じの解説でちょっと驚きました。どバラエティな番組ながら、『アカデミックな要素がある』ということを謳っているのが面白いですね。

また、個人的にはこの冒頭の一節は非常に含蓄が深いように感じます。

人は誰しも自分だけが信じる“説”をもっているはず。そこに確かな裏付けや科学的根拠がなかろうと

僕自身は普段はビジネスのシーンにデータアナリストとして身を置いているのですが、この一文の『ほんそれ感』はただごとではありません。

そう、企画担当者も事業責任者もマーケティング部もそれぞれみんなが自分が信じる説(=仮説)に基づいており、明確に周囲とコンセンサスが取れる状態となるほどの論拠が無いということかと思います。そしてデータアナリストの役割はカオスをこの『独自のセンス』という(時として正しく、時として怪しい)ものに基づいており、明確に周囲とコンセンサスが取れる状態となるほどの論拠が無いということかと思います。そしてデータアナリストの役割はカオスをこのを持っている....問題は大抵の場合その根拠がいわゆる『独自のセンス』という(時として正しく、時として怪しい)ものに基づいており、明確に周囲とコンセンサスが取れる状態となるほどの論拠が無いということかと思います。そしてデータアナリストの役割は少なからずカオスを含むこの状況において関係各所と、

....長くなりそうなので一旦止めておきましょう。この話はまたいつか改めてしてみたいです。

さて情報源を変えて、wikipedia には次のようにあります。

お笑い芸人及び芸能人が自らの提唱する様々な「説」をプレゼン、その「説」を検証した模様をVTRで紹介し、スタジオでパネラーと観覧やトークを展開する番組。番組後半では、世の中にある「説」や視聴者から投稿された「説」を紹介、検証するコーナー「みんなの説」が行われる。

- 中略 - 
番組視聴率は、初回は7.0%であった。が、その後は上昇傾向にあり、2014年9月3日に歴代最高視聴率となる12.7%を記録。その後概ね平均8%台を推移している

( wikipedia 執筆時点2018/9/24 より引用 ) 

テレビはさほど詳しくないのですが、おそらくこの視聴率は決して悪くない数字なのでしょう。面白い番組なので、末永く続いてくれると嬉しいです。

具体的な例で解説する

さて、番組についての理解を深めたところで、『水曜日のダウンタウンは理想的な分析の流れ体現してんじゃねーのか仮説』についてひとつ具体的な例で説明してみましょう。

※ 以下注 
こちらで使用している画像なのですが、著作権の問題を勘案し、最初は全く同じ内容の画像を似せて自作して利用していました。
しかし水曜日のダウンタウンのオリジナルの世界観をお見せしたかったので、このTweetなどを中心に実際の番組中の画像を引用させていただいています。
著作権の問題などでご意見を頂いた場合には、自作の画像との入れ替えをして対処する所存です。

水曜日のダウンタウン中では、素晴らしい仮説検証の流れを披露している企画がいくつもあるのですが、わかりやすい例として次の説を取り上げます。

画像2

2016年2月17日 放送  "ZARD 曲のタイトル 絶対サビに持ってくる"
プレゼンター(= 仮説の提唱者): 天野ひろゆき(キャイ~ン)

これは多少世代を選ぶかもしれませんが、ZARDが流行していた時代に生きていた方々であれば、それなりに筋の良い仮説であることはなんとなく肌感として持っていただけるのではないかと思います。

( 読者でZARDのことをあまり知らない世代の方、申し訳ありません 😂 )


また、キャイ~ン天野さんはいくつかの曲の例を上げて、この説の筋が悪くないであろうことを帰納的に説明しています。仮説に一致する具体的な実例をいくつか挙げるという、帰納的なアプローチは周囲の同意を得る上で大事ですね。水曜のダウンタウンでは、仮説提唱の冒頭部によくこの手法が使われています。

さて、いずれにせよこの仮説提唱が前回の記事でいうところのStep1~2にキレイに該当している点に注目してください。

また、この説はYes or Noで回答できるAoB問の形式になっていますね。
参考になる!

画像3

説の立証基準の提示と調査

この説(=AoB問)の可否を検証していく、というのが企画の主な趣旨になりますが、この番組の素晴らしいところは、検証VTRの冒頭部分で立証可否の基準を必ず明言するという点です。

今回の場合では水曜日のダウンタウン制作部(おそらく優秀なデータアナリストがいると思われる!)は次のような定義で検証を進めています。

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最初にきちんと『立証の条件(= AoB問の判断基準)』を提示しているのが分析フローとして見ても秀逸な点です。

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『タイトルサビ率』という、一種の指標を発明していますね。名称から内容も容易に推定できるため、よい指標だと思います。

単にZARDだけについて検証するのであれば、こういった指標をあえて作る必要はありませんが、この企画ではこの指標のもとで他のアーティスト(※)も網羅的に調査し、ランキングを作っています。

指標を作るとその指標についてのランキングを作成することができ、それ自体がひとつのデータ情報となりますよね。

※ 企画中では、調査の対象とする条件を『活動歴5年以上、オリコン年間ランキングTop100に5回以上ランキングしたアーティスト』としていることを明言しています。データの範囲を名言するのはデータアナリストとしてとっても大事なことですね!

マジレスすると、この対象範囲の絞りは非常に重要で、よく考慮しないと

・1曲しかリリースがない歌手でタイトルサビ率=100%は意味がない
・ありとあらゆるアーティストを対象とすると調査が大変

といった問題に直面しかねないからです。参考になりますね!

仮説の検証と付帯するデータの提示

そして、上の条件に当てはまるアーティスト全体について、タイトルサビ率を計測してランキングの上位を取ると次のような結果になるそうです。

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ZARDは 『 タイトルサビ率 = 48曲 / 49曲 = 97.9% 』 とのこと。
100%ではなかったものの、全アーティスト中で2位と高い水準の数字であることがわかりました。

そして、元の仮説=AoB問

ZARDのシングル曲のサビタイトル率=100%

に対しての解は、限りなく"Yes"にちかいものの、"No"であることが検証できました。

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そして、ここからが水曜日のダウンタウンと言う稀代のデータアナリストの本領の発揮です。

最初に定めた仮説の検証は無事に完了したものの、検証のために定義した『サビタイトル率』を使って、更に別の検証を進めていきます。

まず、両者ともシングル曲ではサビタイトル率=100%で同率1位だったWANDSとSKEの2者に対して、どちらがより上かの白黒をはっきりすることを試みています。ここではアルバム曲も含めて検証(=データの範囲を広域化)を行い、WANDSのほうがよりサビタイトル率が高い傾向があることを結論づけています。

最初に用いたデータだけでうまく結論が出ない場合、適切な形でデータの範囲を広げ、結論を導く。

まさに基本に忠実で、お手本的な手法ですね。参考になる!

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さらに、この説の中では、検証したい内容とは逆の『曲名とサビが一致しない率』のトップアーティストも算出しています。

LTVが高いセグメントの研究をしたい場合、LTVが低いセグメントも同様に分析することでなんらかのインサイトを得られるかもしれません。

測定指標が、『高い』ことがひとつの特徴なら、『低い』ことも一つの特徴であり、重要な知見です。参考になる!

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ちなみにここでは伏せられている1位はあの若手アーティストで、そのサビタイトル率はなんと驚異の0%らしいです。面白いですね。

この検証のまとめ

知りたいこと : ZARDのサビって曲名が多い気がする

AoB問:ZARDの曲名とサビの一致率は100%なのではないか
⇢ 結論:一致率は98%と高いが、結論はNo


その他のインサイト
・曲名とサビの一致率が最も高いのはWANDS
・最も低いアーティストTop3がわかった

執筆後の感想

いつものことなのですが、まだまだ書きたいことはあるのですが大分長くなってしまったので、一旦このあたりにしておきます。

今となってみればなぜこのような記事を書いてしまったのか、自分でもよくわかりません。しかし僕が、『水曜日のダウンタウンは理想的な分析の流れ体現してんじゃねーのか仮説』について熱い想いを持っていることだけは読者の皆さんに伝わっていれば幸いです。

いずれにせよ、多少なりともそういった観点でこの番組を見ていただけると、分析業務に興味を持っている方には面白いのでは無いかと思います。

水曜日のダウンタウンに興味を持った方はこちらをどうぞ。

それではまた次の記事でお会いしましょう。


いつも読んでくださってありがとうございます。 サポートいただいたお代は、執筆時に使っている近所のお気に入りのカフェへのお布施にさせていただきます。