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ジャニーズの市場攻略法〜環境分析(SWOT分析)編〜

企業がマーケティング活動をする上ではじめに取り組むべきことは「マーケティング環境分析(SWOT分析)」である。どんなに細かい分析をしたところで、自社を取り巻く環境を理解していないと、適切な判断ができず誤ったマーケティング活動をしてしまいかねない。

今回は、書籍「[改訂4版]グロービスMBAマーケティング」の内容をもとに、ジャニーズ事務所を環境分析してみた結果を共有したい。

※筆者はあくまでも一ジャニーズファンであり、ここに書かれている内容はあくまでも一ファンの主観を交えた内容であるという点を理解いただいた上で読み進めて欲しい。

環境分析とは

「[改訂4版]グロービスMBAマーケティング」に書かれている環境分析の説明は以下である。

■環境分析とは
市場の機会と脅威(外部環境)を整理し、自社の強みと弱み(内部環境)を踏まえた上で市場戦略の方向性を見出すこと。全ての企業にとっての市場機会ではなく、自社にとって魅力的で、かつ競合他社が真似できない強みを発揮できる市場機会を探さなくてはならない。

引用:[改訂4版]グロービスMBAマーケティング

ジャニーズ事務所を取り巻く外部環境

外部環境とは、市場動向や競合他社の動きなど、社内でコントロールできない領域のことを指す。

外部環境の要素は以下2つである。

外部環境①:機会(Opportunity)

機会(Opportunity):外部環境のうち、目標達成にプラスの影響を与える要素を指す。

具体的には市場拡大や競合よりも優位性が保てる要素などが挙げられる。

外部環境②:脅威(Threat)

脅威(Threat):外部環境のうち、目標達成にマイナスの影響を与えうる要素を指す。

市場や顧客、政治、流通など、自社の頑張りだけではどうしようもない環境が該当する。

ジャニーズ事務所における「機会」

  • 圧倒的な知名度とブランド力

  • 「推し活」トレンドによるロイヤルカスタマー(=熱狂的なファン)の獲得

  • 音楽に限定せず、エンタメ市場全体をターゲットとすることができる

  • ITの普及により、世界中にコンテンツを配信したり、IT技術を取り入れたサービスを提供することができる

ジャニーズ事務所における「脅威」

  • コンテンツの多様化(韓国アイドルや地下アイドルの登場)によりジャニーズ一強の時代ではなくなってきている

  • マスメディアの衰退により、テレビや雑誌などこれまでの活動フィールドでの露出や収益が少なくなってきている

ジャニーズ事務所を取り巻く内部環境

内部環境とは、経営資源など、社内でコントロールできる領域のことを指す。

内部環境の要素は以下2つである。

内部環境①:強み(Strength)

強み(Strength):目標達成にプラスの影響を与える経営資源や武器のこと

強みは顧客の購買理由になりうる、売上・利益向上につながる具体的な強みが該当する。したがって競合と比べて有利に働くことや、重要な取引条件であることなどが該当する。

内部環境②:弱み(Weakness)

弱み(Weakness):目標達成にマイナスの影響を与えうる経営資源のこと

悪い点や改善点のほか、機会や可能性に活用できない経営資源やネックな点が弱みに該当する。

ジャニーズ事務所における「強み」

  • グループだけでなく個人の認知度が高いタレントが多く所属しているため、CMなどの広告に起用されやすい

  • ロイヤルカスタマーが多く、SNSで情報が拡散されやすい

  • ジャニーズ事務所内でのタレント同士のつながりが多く、担降り先がジャニーズ内にとどまることが多いため、ターゲットの囲い込みがしやすい

  • 音楽活動だけではなく、バラエティや俳優業、舞台公演など幅広い活躍の場があるため、タレントによって適材適所の活躍の場を提供することができる

ジャニーズ事務所における「弱み」

  • サブスクによる音楽配信が一部のグループでしか行われておらず、消費者がジャニーズの楽曲に触れる機会が少ない

  • ファンクラブの入会が国内に限定されていることや、海外向けのプロモーションが十分でないことから、市場が日本国内に限定されている

  • ロイヤルカスタマーによる複数名義保持や転売により、ライト層のライブチケット入手が困難な状況であることが、ライト層の顧客満足度を下げる要因となっている

目指すべき戦略の方向性

前述までに挙げた4つの要素を掛け合わせることにより、4つの戦略に分類することができる。
ここで分類した各戦略をもとにマーケティング戦略の方向性を検討していく。

4つの要素の掛け合わせ(クロスSWOT分析)

積極戦略(機会 × 強み)

最も競争優位性が発揮しやすい戦略。4つの戦略の中でも最も検討優先度の高い戦略である。

  • 事務所のブランド力×個人の知名度:CMなどの企業広告案件の獲得

  • 推し活×SNSでの情報拡散:知名度の拡大、間接的なプロモーション

  • コンテンツ配信×ライブ・舞台など:ライブ配信、公式SNS、YouTube

改善戦略(機会 × 弱み)

時間をかけて弱み改善が必要な戦略。機会によって弱みを引き上げる必要があるためハードルは上がるが、力を入れることで売上増加や事業拡大につながる。

  • サブスクによる認知度拡大、収益増加、新規顧客の獲得、海外への市場開拓

  • IT技術を活用したチケット入手の制限や規制によるライト層の顧客満足度の増加とロイヤルカスタマーの増加

差別化戦略(脅威 × 強み)

脅威を逆手にとり差別化を目指す戦略。
強みを武器に脅威に対抗することで売上増加や事業拡大をしていく。

  • ロイヤルカスタマーによるSNSでの拡散、集客

  • ロイヤルカスタマーの囲い込み

  • 音楽活動以外での収益化

  • マスメディアでの地位の確立

致命傷回避・撤退縮小戦略(脅威 × 弱み)

生き残りのために前向きに検討すべき戦略。
「脅威」の影響を最小限にとどめるための防衛的な戦略であり、最終的には、事業の撤退も視野に入れる必要がある。

  • 海外メディアでの認知獲得

  • 海外での公演

まとめ

ここまでジャニーズを例に環境分析と、環境分析で抽出した要素をもとに戦略の洗い出しをしてきたが、ジャニーズが今後取り組むべき戦略は「改善戦略」であると筆者は考える。

「積極戦略」は本来一番力を入れるべき戦略であるが、ジャニーズ事務所が現在進行形で力を入れている戦略である。今後も継続されるだろうが、それだけでは事業は成長しないため、別の戦略を推し進めていく必要がある。

また、「差別化戦略」は強みの影響力によってどのくらい力を入れるべきかが変わってくるわけだが、ジャニーズにおいてはロイヤルカスタマーの影響力がかなり高いためそれほど優先度の高い戦略ではないと考える。

一方で「改善戦略」においては、まだ注力していないが事業拡大に影響を与えることができるため、新たに戦略を練る際には優先的に取り組むべきである。

ただし、「積極戦略」が蔑ろになるまでリソースをかける必要はない。なぜなら、「積極戦略」が現状の収益の中でもっとも多くのシェアを獲得しているからである。

現在のシェアが縮小することは事業存続にとって最も脅威である。
現在の戦略を継続しつつ、不要な戦略は撤退し、力を入れるべき戦略に注力することが大切である。

なのでどうかジャニーズ事務所には、早急にサブスクの解禁とデジタル化を推進していただきたい。これは、ジャニーズファンからの切なる願いでもある。


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