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ギャンブル依存症との戦い

いつもの精神病棟だが何か違和感を感じる。空気がざわついている例えば雨の前に木々がざわついている感覚、ここは木のある温もりを感じる精神病棟の瀬野川病棟3F(スリーエフ)、エアコン完備で生活保護者が時折涼みに来る事でも有名だ。

看護師「今日の新人さんを紹介しますね。」

普段はいつの間にか新人が増えている精神病棟だけあって、看護師の紹介があるのは異常中の異常、もしや木々のざわめきの感覚は危険信号出会ったのか??

??「ども、水原です。」

ざわざわ、木々の危険信号が患者にも伝わって来る。

水原「ギャンブル依存症治療で来ましたが、皆さんが御存知の通りかもしれませんけど、今はお金があまり無かった為に、特別室が使えませんでしたので、皆さんと同じ病棟スリーエフとなりました。」

水原「先にご挨拶をする事で争い事が減ると伺い、看護師さんの方にお願いし特別に時間を取って頂きました。」

心の声

光れ「毘沙門天、どう思う?」

毘「まぁまぁね。計算高く韓国のプロ棋士にも劣らないわ。」

休憩時間になると水谷氏の周りには人だかりが出来て、時々患者からの笑い声が聞こえるので、耳を済ませると「水原でなくボウヤと呼んで」「あ、はははは」、く、くそ、人の金で良い生活をしやがって許せね。

光れ「水原打つぞ、てめぇの人生を投了させてやる。」

水原氏は一瞬びくっとしたが、すぐに口元が緩みこう聞き返した。

水原氏「ただじゃぁ、やんねー、いくら賭ける?」

光れ「個人情報でどうだ?」

鼻で笑った後に

水原氏「お前のか?」

光れ「そ、そうだな、好きなやつの個人情報を教えてやる。」

光れ「お前の好きなパスワードは0721だろ?」

水原氏の額から汗が吹き出す。

水原氏「迂闊には信じれない、日本の詐欺集団が安全の為に刑務所や精神病棟を利用するのは聞いた事があるが、その一味か、そのリーダー格か、、」

水原氏「いいだろ、お前の欲しい物は何だ?」

光れ「新聞紙の永久購読、全国紙と東京新聞と、、」

水原氏「と?」

光れ「中国新聞だ!」

水原氏「いいだろう!!!!」

黒、光れ
白、水原氏

ギャンブルが好きなわりに手堅い印象を受けるが、まず隅を荒らして地を稼ぐ定石から中を荒らした。

白は定石通りなら伸びるが抑えて来たか、令和に入りネット囲碁が普及する関係で、自由な定石が入ってるのは知ってた。

光れ「この定石は?」

水原氏は盤面から目をそらさずに答えた。

水原氏「ヤケノハラ、定石外しでボコボコにしてやるって意味だよ。」

こいつの目はマジだが思い出すと、アメリカでは合法、日本では違法の薬物もあったが、様子からまだ薬が抜け切ってない、依存症特有の集中力には恐怖を感じ、自然と碁石を持つ手が震えが襲う。

隅を荒らすつもりが反対に地を守る戦いになる。

こちらは切って戦おうにも白に簡単に生きられてしまう。

タケフの形を作るも守るべき石になるのは痛い。

ここで勝負手をかけ思わず独り言がもれ、

光れ「ヒロシマヤキ」

水原氏「アトミックボム?」

光れ「ノー」

水原氏は盤面の中央を睨みながら黒を切って来るが、実は俺の狙いはそこじゃない。

左隅の大石を狙っていたのだ。

水原氏「ヒロシマヤキ、オコノミヤキ、ひっくり返し、、、」

水原氏「君は私の使用パスワードを知っていたようだが、それは組織でかい?」

光れ「俺に勝ったら教えてやるよ。」

水原氏「本気を出そう。」

中盤も終わりヨセが始まり、整地をすると白の2目半勝ち。

水原氏「約束だが何で私のパスワードを知ってたのかい?」

光れ「依存症の好きな奴は英字プラス0172、オナニーと相場が決まっているんだが当たってたか?」

水原氏「あはは、君のはったりには驚いたよ。君には囲碁の才能がある私には勝てなかったけど、世間から隔離させるのは惜しい、新聞の方は手配しておくよ。」

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