マガジンのカバー画像

読書記録

42
私が読んだ本の記録です。
運営しているクリエイター

2019年1月の記事一覧

小説の効能

最近小説をよく読むようになった。ここ2年くらいは、エッセイやビジネス書や自己啓発書を読むことが多かったし、フィクションより現実世界で起こっていることが知りたいという気持ちがあったのだと思う。 でも、先日ラジオで落合恵子さんの講演を聞いたときに、落合さんは、ノンフィクションで書ききれない事実を小説なら詳細に表現できるという趣旨のことを仰っていた。同じようなことを、はあちゅうさんも最近ツイートか何かで書いていたと思う。 小説は時に、事実を我々が手に入れられる情報以上に、目を覆

大原扁理 著『なるべく働きたくない人のためのお金の話』【後編】

昨日こんな記事を書きました。 大原扁理(おおはらへんり)さんは現在台湾にお住まいなのですが、この本は大原さんが2010年12月から2016年9月まで、約6年間東京で隠居生活をされていた時のことが、詳細に書かれています。 ・家賃28,000(国分寺にてバス・トイレ付き) ・仕事は週二回、時々臨時アルバイト(年収90万円) 本の前半は、大原さんがこのような生活に至った経緯や、気持ち、そこから具体的にしている行動について書かれていました。そして後半は、お金についての考え方や、具

池上彰・津田大介著 『メディアの仕組み』【後編】

昨日前編を書きました。この続きです。 『第三章:ネットの仕組み』より私はなるべく柔軟な思考を持っていたいと思っていて、自分が好きな意見や賛同したいことがあっても、その逆の立場のことも考えてみようとはいつも思っているつもりです。 池上さんもこの本の中で、以下のようなことを仰っていました。 例えば、福島の原発事故を受けて「放射能はとても危険だ」と思っている人がネットで放射能について調べたとします。そうすると、いくらでも「放射能は危険です」という話が出てくる。そこでつい「ほら

池上彰・津田大介著 『メディアの仕組み』【前編】

この本は約6年前の2013年5月に発売されたものです。今や情報に関するツールの流行り廃れの動向は激しく、我々を取り巻く環境は刻一刻と変化していますが、この本はメディアというものに携わる方の信念や情熱についても深く触れていて、時代において届けるツールの形は変われど、「この情報を伝えたい」という熱い想いを持つ人の志は、いつ何時も変わらないのだということを知り、感銘を受けました。 6年前ともだいぶ変わっている現代社会のメディア環境においても、内容として古いという感覚はなく、むしろ

辻村深月 著『盲目的な恋と友情』

自分が長く深く抱えていた悩みは、その深刻さは異なれど、多くの人が同様に抱えていたものなんだなということは、年齢を重ねるにつれてだんだん判明してくることだ。でもそういった苦悩の沼みたいなものに、はまり続けてしまう人と、いずれ通り過ぎることができる人の差はなんなんだろうということを考え続けてきて、だんだん分かるような気にもなってきた。 苦しい恋から永遠に抜け出せない蘭花と、コンプレックスに苛まれ、友人との距離感がうまくつかめず、理想の人間関係が築けない留利絵。その「イタさ」が、

大原扁理 著『なるべく働きたくない人のためのお金の話』【前編】

大原扁理(おおはらへんり)さんは現在台湾にお住まいなのですが、この本は大原さんが2010年12月から2016年9月まで、約6年間東京で隠居生活をされていた時のことが、詳細に書かれています。 ・家賃28,000(国分寺にてバス・トイレ付き) ・仕事は週二回、時々臨時アルバイト(年収90万円) この条件の中で、心から満足して毎日を楽しく、しかも丁寧に暮らしている様子が淡々と伝わってきます。 お金について考えるとき「自分がどうありたいのか」という問題を避けて通ることができません。