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読書記録

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私が読んだ本の記録です。
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2019年2月の記事一覧

佐々木典士著 『ぼくたちに、もうモノは必要ない。[増補版]』

いきなり全然違う人の話をするけれど、先週福岡に行って『途中でやめる』というファッションブランドを手がけている山下陽光さんに会ってきた。そして山下さんと話をしているなかで、改めて実感したことがある。 人が、物や思想や映像など誰かが手がけた何かに対して「あ、いいな!」と感じる理由は多くの場合、物体そのものの後ろに超絶なバックボーンがあるからなのだと思う。(当たり前だけれど。そして、そうじゃないこともたまにあるけど。「なんでこれ流行った?」みたいな。) 山下さんの服は、世界的メ

池井戸潤 著『シャイロックの子供たち』

「シャイロック」とはシェイクスピアの戯曲『ヴェニスの商人』に登場する、強欲で非道な金貸しのことで、その末裔のような銀行員がたくさん登場する銀行の裏側が描かれている小説。 これが連載されていたのが2003年と、今から16年も前だということに少し驚く。「家族のためには、どんなに辛い仕事も耐えるしかない!」というような気持ちで生きている人は、少しずつ社会が変われども、未だスタンダードだと思っているので。 池井戸潤さんも元銀行員なので、銀行や、融資を受ける会社にまつわる小説が多い

薬丸岳 著『Aではない君と』

この本は、息子が殺人事件の容疑者となってしまった父親の話です。以前読んだ窪美澄さんの『さよなら、ニルヴァーナ』も少年犯罪を扱った小説で、加害者・被害者の親・加害者に恋をする少女・それらを取材する小説家の視点でリアルに描かれていましたが、息子が加害者かもしれないと思う親の視点もまた、自分にはとても想像が及ばなかった心理だと、深く感じました。 昔、『「少年A」この子を生んで』という、神戸連続児童殺傷事件の加害者少年Aの両親の手記を読んで、自分の子どもが加害者となってしまったとき

チョ・ナムジュ 著『82年生まれ、キム・ジヨン』

2016年に韓国で刊行され、100万部を超えるベストセラーになり16ヵ国語に翻訳。日本では2018年12月8日に邦訳が刊行されました。 著者のチョ・ナムジュさんは、放送作家として10年間社会派ドキュメンタリーの番組を担当していたそうです。この本は小説なのですが、まるで自伝やドキュメンタリーのような感覚があり、韓国の実際の歴史が、ノンフィクションでも描ききれない部分までつまびらかになっているような現実味があります。 小説の主人公であるキム・ジヨンは、'82年に韓国で生まれた