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ちきりん著『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと』

4/4発売、ちきりんさんの新刊。リノベーションには今のところ縁のない私にとっても、絶対におもしろいはずだと思って購入しましたが、期待以上でした。

【その理由】
・ちきりんさんのロジカルな思考は何が題材でも新鮮で惹かれる
・リノベーションを通して社会の仕組みの一端を知ることができる
・リノベーションに限らず、人生における買物や様々な取引に応用できる点がたくさんある
・住環境において「部屋の使いやすさ」がいかに重要かがわかる
・ちきりんさんの部屋が見られる

ざっと挙げるとこんな感じでしょうか。

【こんな人が読んだらいいのでは】
・業者の方(顧客の意見として非常に詳細でわかりやすい。顧客と業者双方に深いニーズがあると思うので、ショールームとかで配ってもいいんじゃないかと思う。)
・もちろんリノベーションをしたい方(定価1,944円だけれど1万円でも安いと思える情報量だと思う。)
・リノベーションに全然興味がない人にとっても、ロジカルな思考やちきりんさん自身が好きな方(単純に読み物として面白い。)

まとめると、「ちきりん」「リノベ」どちらかのワードに少しでもひっかかった人なら、ほとんどの人が楽しめる本だと思います。

この本は、おおまかにはこんな構成で書かれています。
・そもそもリノベとは何か
・予算とスケジュール
・リノベ会社の選び方
・現地調査
・工事
・完成

これだけを読むとリノベーションの手引書であり、人生の中でニーズがあるけれど全員が経験するほどでもないことのノウハウです。

しかし、ちきりんさんは、あらゆる角度からリノベと向き合い詳細に分析し実行していて、それを読むことで、そもそも会社とはなにか、顧客満足とはなにか、客としてどうあるべきかなど、これまで気付かなかったたくさんの視点を得ることができました。

たとえばこの本では、ちきりんさんが「世の中の取引」について以下のようなことを述べています。(要約です。)

世の中の取引には以下の2点があります。
・等価な価値を交換する取引
(例:500円で500円の弁当を買うなど。)
・両者で共に創出した価値を分け合う共同プロジェクト型取引
(例:スポーツジムや英会話学校など。お金を払っただけではその対価が得られない。互いの努力が必要。)

リノベーションは後者であること。それに気付けないとリノベは成功しないということが書かれています。

「1000万も払うのだから理想通りになるはず」と思うのは、「英会話学校に20万も払ったのだから英語が喋れるようになるはず」と思うことと同じなんですね。

ここはかなりの盲点だと思いました。ちきりんさんは、「自分がやっているビジネスが等価交換型だと、共同プロジェクト型の取引について理解するのがとてもむずかしい」と書かれています。

(経営コンサルタントと自動車メーカーの例で)
たとえば顧客の勤める会社が自動車メーカーだったとしましょう。
彼らは車の対価(代金)を受けとる際、常に「完璧な自動車」を顧客に提供します。(中略)こういう会社で働いていると、1000万円ものコンサルティング料を払いながら、自分たちも価値創造に協力しなければならないなんて、なんと甘えたことかと感じてしまいます。

リノベーションも同じということ。「お金はいくらでも払うから完璧な家を作ってちょうだい」ではうまくいかないのだそう。

~共同プロジェクト型取引では「問題は起こって当たり前」で、「それをどう共に解決するかが重要」です。医者が処方した薬を指示通り飲んでも、すべての患者に同じ効果が表れたりしません。(中略)「医者が飲めと言った薬を飲んだのに治らない!」と怒るより、すぐにでも医者と協力し、「次の手」を一緒に考えるべきなのです。

リノベでも必ず問題は起こるし、解決には双方の協力が不可欠で、それを理解しないとリノベは成功しない、と書かれています。

これは、例にも挙げられているように人生のあらゆる場面で遭遇する問題だと思いました。

まず私は、取引において二種類あるという意識がありませんでした。言われてみればその通りなのですが、自分でも過去に「○○円も使ったのに全然効果なかったわ!」と言っていたことが、よく考えたら共同プロジェクト型取引だったということは結構ありそうです。

この視点がなかったから、お金を払っても効果がなかったんですよね。(分かっていても効果が出ないこともありますが、すくなくとも全て相手のせいと怒るのは筋違いということは理解しておきたいですね。)

これはかなり最初のほうに出てくる項目なのですが、この点で一気にひきこまれました。

リノベ会社の選び方や見積もり、質問に対して各社の答えが違うこと、料金の違いにも、そこにはすべて理由があるのです。普段自分が知ることのない会社や取引の内容についても、つきつめればすべてに論理があること、そういった社会の理を知られることがとても興味深く、わくわくしました。

同時に、自分がこの社会の中で何かしらの取引をしたときに、「なんでだろう?」と思うことにもすべて理由があるわけです。

ここまで書いてきたことは序章のあたりですが、この本の中でちきりんさんがリノベにおいて「この会社にしよう!」と選んだ理由や、言ってよかったこと、もっとこうすればよかったことなどは、リノベ予定などない私にとっても、人生の様々な場面にあてはめて考えたいと思うことばかりでした。

あらゆる人におすすめしたい一冊です。(2234字/1時間31分)



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