見出し画像

池上彰・津田大介著 『メディアの仕組み』【後編】

昨日前編を書きました。この続きです。

『第三章:ネットの仕組み』より

私はなるべく柔軟な思考を持っていたいと思っていて、自分が好きな意見や賛同したいことがあっても、その逆の立場のことも考えてみようとはいつも思っているつもりです。

池上さんもこの本の中で、以下のようなことを仰っていました。

例えば、福島の原発事故を受けて「放射能はとても危険だ」と思っている人がネットで放射能について調べたとします。そうすると、いくらでも「放射能は危険です」という話が出てくる。そこでつい「ほら、やはり放射能はとても危険なんだ。自分の感覚は正しかった」と思って満足し、それ以上調べるのをやめてしまうものです。ただ、そこであえて、「いや、放射能の危険性はたいしたことないよ。騒ぎすぎだよ」と考えている人の意見も調べてみる。すると、これもまた山のように情報が集まります。この両方に接することが大事な体験なんです。

このように、自分の信念があったとしても、相対する意見についても調べたり考えたりする行為を怠らないようにしたいと思います。

ネットは自分で情報や情報源を取捨選択できるので、どうしても得る情報が自分の好みやそれを推奨するメディアなどに偏りがちなんですよね。

池上さんも津田さんも、自分では想像もつかないような「違う視点」と接することの重要性を説いています。

新聞という知りたかった情報と別のものが目に入ってくるレイアウトや、本屋という、目的の本を探している途中に興味を惹かれるものが見つけられる本屋という場所の良さについても語られています。

「正しい情報」と「間違った情報」を瞬時に切り分ける能力ではなくて、「実は分かっていないんじゃないか」という恐れをもつこと。それがメディア・リテラシーなんだと思います。

池上さんのこの言葉は、常に自分の中に持っておきたいと思います。

『第四章:情報で世の中を動かす方法』より

この章の中で、自分もずっと心得ておきたいと思った池上さんの言葉がありました。

「真実」は分からない。でも、世の中にはさまざまな「事実」がある。

「真実」とは安易に口にできない言葉だと思いました。というよりは、実体験以外のことにおいて、使うことはできないのかもしれません。

私は、「真実を伝える」という言葉は嫌いです。私にはそんなことはできないと思っています。ただ、事実を伝えることはできる。でも、どの事実を選ぶかによって、そこで描かれるものは違ってきます。どうしても自分の主観は入ってきます。自分の主張にとって都合の良い論拠となる事実だけを集めてくることは難しくない。それが、とても怖いと思っています。

私たちは、社会を二分するような問題に、常に対峙しているといっても過言ではありません。専門家でも意見が分かれるような問題に対して、これが「正しい」ということは難しいと思います。

ただ、信憑性のある事実にはたくさん触れ、そのなかで「自分はどう思うか」という気持ちは大事にしていたいと思います。その際にも、積極的に自分と違う意見に触れていくことは心がけていたいです。自分のことも疑い、知りたくないような事実にも目を向けていきたいと思います。

『第五章:「伝える」力の育て方』より

池上さんは、毎朝8紙の新聞にざっと目を通し、寝る前に改めて大事なページを破るそうです。綺麗にスクラップする時間もないので、破ったそれらを積み上げておき、1,2ヶ月経った頃に読み返すと、実際に重要なニュースだったのかそうでなかったのかが、時間の経過によって分かるということだそう。

また、ー~三章の中でも出てきましたが、お二人ともリアル書店は、ネットにないメリットをすごく感じているようです。知りたいテーマが集まった「棚」の前に行くことで、今そのテーマで出ている本がどんなものかが分かると。その中で十数冊をまとめて買っても、重要な本は2,3冊だそうですが、やはり本を読むことで、ニュースの見方に奥行が出るそうです。

池上さんは、情報収集効率が悪いのでテレビは見ないそうです。(勝間和代さんも、自分が言いたいことを伝えるのにテレビでは効率が悪すぎると以前言っていました。)

津田さんのインプットは、3割活字:3割ネット:4割人づて・・・だそうです。取材や会食や対談などで得る情報もかなり多いそう。津田さんは確かにすごく取材をしているなあという印象があります。

津田さんの以下の言葉を読んで、やはり自分で知ろうとする姿勢が大事なんだと思いました。

誰かがみんなを引っ張る時代でも無いと思うんです。みんなが物事の仕組みを理解して自発的に動いてもらわないといけない。そういう時代にいて、必要なのは、複雑な問題を分かりやすく「複雑なんだよ」と伝えることなんじゃないでしょうか。

ものごとはそんなに難しくないよと言わないところがいいなあと思いました。そう、やっぱりあらゆることは複雑で難しくて触れたくもなくなるんですよね。そんななかで、池上さんや津田さんの、自分が興味を惹かれる発信を見ていると、こういう事実をたくさん知りたいと思います。

自分にとってそういう存在の人がいることも大事だし、一方で、「あまり触れたくないな」と思うような情報だからこそ、知っておこうという、ちょっとした勇気も忘れずにいたいと思いました。

折に触れて何度も読み返したい本です。

#日記 #エッセイ #毎日投稿 #毎日更新 #メディアの仕組み #メディア #津田大介 #池上彰 #新聞

いろいろな方にインタビューをして、それをフリーマガジンにまとめて自費で発行しています。サポートをいただけたら、次回の取材とマガジン作成の費用に使わせていただきます。