温もりを感じる心が共通なら、痛みを感じる心も共通だということ。

現在、中国・武漢市で発生した新型肺炎ウイルスが世界中でとても深刻な問題になっているのは、皆さんすでにご存知の事でしょう。

今日は私が音楽家として経験した出来事と、この新型肺炎ウイルスの問題から広がりを見せている差別について、感じていること書きたいと思います。


私が作詞作曲を担当した、アーティスト・稲村壌治の最新曲「Lamp」のMVがYoutubeに公開されました。
(楽曲についてはこちら↓を読んでください。)

たった一人で台湾に乗り込み、音楽の力でどんどん活動を広げ、台湾のメディアに取り上げられ、現在日本で放送されている、台湾観光局のテレビCMにも出演中の稲村壌治くん。
彼のファンは日本、台湾、中国へと広がっています。
そんな彼の最新曲「Lamp」のMVが、Youtubeに公開され、その直後からコメント欄には、たくさんの中国語のコメントが書き込まれていました。

この曲の歌詞は日本語で、MVでは中国語に翻訳された歌詞のテロップが付いています。
しかし、日本語の歌詞に合わてつけたメロディーで、この曲に込めたメッセージが、日本語が分からない彼のファンたちに、果たして伝わるだろうか。そして、言葉を超えて想いが伝わるほどのメロディーが、私に書けただろうか。

制作のときから、言葉がわらなくても耳に馴染み、雰囲気が伝わりやすいメロディーを意識して書いていたので、外国のファンたちの感想がとても気になり、コメント欄を翻訳して読むことにしたのですが、そこに書かれていたコメントに、私は思わず感動しました。

コメントのほとんどはとてもポジティブな感想した。

“メロディーが心地いい”
”温もりが伝わる曲”
”人生に迷った時に聴きたくなる曲”

そこに書かれたコメントは、私の不安をぬぐうだけでなく、音楽家としての私に、勇気と自信を与えてくれるものばかりでした。

純粋な想いや、情熱を込めて書いた音楽は、ちゃんと聞き手の心に届くということ。

そのエネルギーは、言語を超え、文化を超えて、遠くの国の誰かの人生を有意義にするほどの、大きな力を持っているということ。

そのことを学んだ今回の経験は、きっと私の今後の創作活動に、大きな影響をもたらすだろうと感じています。

そして、この経験から私が感じた、もう一つの大事なこと。

温もりを感じる心が共通なら、痛みを感じる心もやはり共通だ、ということ。


中国から広がった新型肺炎ウイルスは、命に関わるとても深刻な問題です。たくさんの情報が飛び交い、世界中がその対応と対策に追われています。
自分の大切な人を守るための対策は、とても重要なことだと思います。

でもそれと同時に「反中意識」が世間に拡大することは、私はとても悲しいと感じます。

「中国人くんな!」という発言を日常で聞くたびに、心の中でとても悲しい気分になります。中国語を話す人が電車にいるだけで、差別的な目を向ける人もいます。彼らは旅行客ではない可能性もあります。

不満を訴えるなら、各国の対応です。
中国の初期対応、日本の初期対応。これまでにも、感染症が広がり深刻となった過去があるのに、どうして今回もまた、世界中に新型肺炎ウイルスが広がり、多くの死者を出してしまっているのか。
過去の経験を活かしていない中国政府や、入国対応の遅れがあった日本政府にも、確かに問題があります。

でも貴方の不安や不満を、たまたま目の前にいる中国語を話す誰かに向けるのは、ただの差別です。

実は中国人かどうかもよく分からないのに、中国語を話してるから中国人、そして”保菌者”として差別意識を持ってしまいます。

台湾から来た人かも知れないし、10年も前から日本に住んでる人かも知れない。日本に興味を持ち、日本で夢を見つけて勉強している留学生かも知れない。両親が中国出身で、日本で生まれ育った人もいます。

繰り返しになりますが、
温もりを感じる心が共通なら、痛みを感じる心もやはり共通。

「中国人くんな!」は、あまりにも軽率で、愚かな差別です。
それを聞いた人の気持ちを考えてみてほしい。

最後に、私が東日本大震災から一年後にニューヨークに行った時の出来事を書きます。

私は黒人が多く住むハーレムにあるゲストハウスに滞在し、歌を学んでいました。それが初めての海外で、英語もかなり勉強不足。しかも黒人が多い街だということで、勝手に恐怖心を持ち、ずっとビクビクしながら暮らしていました。

ある日、バスを待っていると、黒人のお婆さんに声を掛けられました。
「どこから来たの?」と聞かれて、「日本」と答えると、すぐにお婆さんは思い詰まったような顔をして、「貴方の家族は大丈夫だった?」と私に尋ねました。最初は何を尋ねているのか分からず困っていると、「大きな地震と大きな津波」とお婆さんは言いました。
私は知っている単語を並べて「私の家族は西日本にいて無事だった」と伝えると、お婆さんはニッコリと笑って、「それは良かった」と言いました。
それから「貴方の旅の安全を心から祈っているね」と、まっすぐに私を見つめながら、手を合わせてくれたのです。

私は英語は得意ではないけど、お婆さんの気持ちは確かに伝わりました。
そしてその言葉がどれだけ私の緊張をほぐし、その後の旅を豊かにしてくれたことか。
感情というのは、言葉だけではなく、声色や表情でも相手に伝わります。
ポジティブなこと、そして、ネガティブなことも。

今回、Youtubeに届いた異国語のコメントが、あたらめて気づかせてくれた、音楽の力。それは人間が持つ、本来の心の豊かさだと、私は思う。

分かり合えることを諦めていないからこそ、「反中意識」について、無意識に影響を受けている人たちに気づいてもらいたくて、今日はそのことを発信しました。

私は音楽を通じて多くの感動を知り、自分の価値観を見つめ直し、成長を続けて、大切な友人と出会い、人生が豊かになっていく日々に、心から感謝しています。

そして、私の願いは一日でも早くこのウィルスが消滅し、
一人でも多くの尊い命の未来が守られることです。


今、日本の医療機関も感染性の対応に追われています。
命をかけて、人の命を守る仕事を頑張っている方々に、心から感謝したいと思います。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


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