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あと少しだけ夢を。


あんまり家の話はするもんじゃない、と

本当にそう思うけど、だけど、

どうしてもどこかに書き留めておきたくて。


祖父が体調を崩したのは昨年11月のこと。

長年のツケが来たというか、なんというか、

意外ではなかったけれど、突然だった。


入院したらもう私たちのことはわからなく

なってしまうと家族は怖がっていたけれど、

病院から帰ってきてもちゃんと私のことを

覚えていてくれたし、私の好きなものも

ちゃんと覚えていてくれたし、

猫のことも気にかけていたし、

そのときは本当に泣きそうになった。


今は、意識朦朧としながら闘っていて、

たぶん、もうあまり残り長くない人生の

まとめにかかっているのかもしれない。


私は、初孫でもなければ跡継ぎでもない。

ついでに言うと外孫だから苗字も違う。

そんな私を一番可愛がってくれた祖父。

ひかりのことを一番大事にしてたねと

今日も病室でみんなが話した。

祖父が大切に育てたいちごも、

毎年私が一番最初に食べた。

大学生になって一人暮らしを始めても、

「1番はひかりに持っていくから」と、

手伝った母や同居の叔母よりも

誰よりも早く食べられるよう、

毎年私にイチゴを持ってきてくれた祖父。


私が進路に迷ったときも就活で悩んだときも、

口先だけじゃなくてハード面(お金とか)でいつも

背中を押してくれた祖父。


少し個性的なメンバーの身内で、

私は祖父がいないと完全に性格が歪んでたと思う。


生まれたときは無条件に可愛かったかもだけど、

なんやかんや23年も生きてたら、

可愛いときも、可愛くないときもあっただろうし、

今でこそ頻繁に会いに行くけれど、

同年代との休日が楽しくて寄らない時期もあった。


なのにいつ行っても、小言ひとつ言わず、

たくさんのイチゴや野菜やジュースと一緒に

またおいでという言葉をくれた祖父。


どちらかというと無愛想で無口で、

人付き合いもあんまり得意じゃなくて、

祖母といつも口喧嘩ばかりしていて、

だけど、動物に優しくて、心優しくて

私のことをいつも気にかけてくれて、

私が20歳のときに写真スタジオで撮影して

店のショーウィンドウに置かれてた写真を

スタジオに頼んで持ち帰り、大事に保管してた祖父。

(そういうわけで、みんなが集まる部屋に

額に入った私の写真がある謎空間がうまれた)


入院することになった最初のとき、

こっそりと、でも一番に私に言ったのは、

「ひかりが車買うお金、置いとくけんね」だった。

そのときは、軽くながしたけど、

祖父ナシの世界なんて想像もつかなかった。


今は少し、現実味をおびてきていて、

病室で徐々にだけど呼吸を浅くしていて、

酸素を鼻から送られていて、

表情も殆ど無くなって、

前みたいににっこり笑うことも、

一緒にご飯を食べることもできなくて、

会うたびに少しづつ痩せていく祖父を、

見るのが本当に辛くて、


先日、祖母がぽつりと言った。

「やっぱりな、おじいさんがおらんと

それはそれで なんか さみしいわい。

当たり前って突然なくなるんやな」


素っ気ない言葉を返した気がするけれど、

胸が苦しくて堪らなくて、

耐えられなくなって、庭に飛び出た。


祖父は手術や病気の説明をされたとき、

孫の結婚式までは生きていきたいからと、

担当のお医者さんに伝えたらしい。


ほんと、

会ってないときもそわそわしてしまって、

ほんと縁起でもないんだけど、

前に一緒に遊びに行ったときの

写真のなかからいい感じに撮れてるやつを

丁寧にレタッチしてみたりして、


もうひとりで生きていけるだろって、

無理やり自分に言い聞かせるようにして、

そうじゃないと本当に不安で、

不安で仕方がなくて、


無条件に特別に愛してくれる人って、

本当に貴重だったんだな。


月並みなことだけど、

当たり前って突然いなくなるんだなと、思った。


だからこそ一日一日を大切にとか、

会えるときに会うとか、後悔ないようにとか、

そういうのももちろん大事だとは思うけど、

私は、その当たり前がなくなったとしても、

いつまでもうじうじと後ろむくことなく、

ちゃんとさみしく思って、

ちゃんと悲しんで、

ちゃんと切なくなって、

ちゃんと泣いて、

そして、いつの間にか軽くなって、

思い出を大事にしながらしっかり生きること。

そういうのが、一番大事なのかもなと思った。


しっかり向き合うとか

そんな大層なことじゃないけど、

私が幸せになることを誰よりも思ってくれた人が

望むことはそれなんじゃないかなと。


いや、もし全然そうじゃないとしても、

今だけは都合よく解釈させてほしい。



もう少しだけ、

あたたかい手に触れていさせてほしい。

夢をみさせてほしい。














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