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因果応報の話

裸だった。
雨が降っていた。

わたしは大きな団地の最上階に住んでいて、なんとかして裸のまま
自分の住む階まで戻ってきたところだ。
しかし、エレベータホールから自宅のドアまでがなかなか行けない。
向かいの棟の住人が廊下をひっきりなしに通るので、向こう側から裸のわたしを見つけられてしまいそうだ。寒い。

なんとかドアまでたどりつく。鍵は開いている。
部屋に入ると、ちいさく鼻歌が聞こえる。お風呂場の電気が点いている。
どろぼう?
玄関に置いていた傘を持ち、かまえて、お風呂場へと向かう。
シャワーを浴びているのは、別れた元夫だった。
なあんだ、と肩の力を抜く。元夫とは今も普通に行き来があるのだ。
わたしもシャワー浴びよう、と、元夫と入れ替わりにお風呂場に入る。
どうやら元夫のあたらしい妻も一緒に来たらしい。
シャワーの前にふと姿が目に止まり、どうも、と黙礼する。あたらしい妻とは初対面だ。
シャワーを浴びる。冷えたからだが温まってゆく。ほっとする。

シャワーから出ると、元夫とそのあたらしい妻の姿はない。
そして、
うちに置いたままになっていた元夫の荷物が、ごっそりなくなっていた。

2部屋あるうちの1部屋が、がらんと何にも無い。
リビングからも、元夫のものだったものは消えていた。テレビが無くなったのはちょっと寂しいな。どうしよう新しいの買うかな。
いつか片付けなきゃね、いつかぜんぶ引き取ってね、と話してあった。
だから何の問題もないのだ。
なのにわたしは、何にも無い部屋の、あらわになった畳のくすみを眺めつつ
寂しさのような、当惑のようなものを感じて、途方にくれていた。

因果応報って何だろう。
因と果は同じ量であるのかな。
それは誰が量るのかな。

がらんとした部屋。
これはかつて、わたしが誰かにしたことのある しうちだ。
たしかにその記憶がある。

そんな夢をみた。


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