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結局ひとは、今の満足を棄てられないのか。

デービッド・アトキンソンさんの「日本企業の勝算」。

2025年までに約7割の企業の経営者が70代になり事業承継を迎える、また現状で企業全体の約3割が後継者未定という状況の日本。

アトキンソンさんは、日本企業の社長になるなど 30年以上も日本企業の特に地方創生への研究や提言をされていて、2020年には政府の成長戦略会議の議員もされていた方。

日本の未来について本当に真剣に向き合ってらっしゃるその提言は、日本人の私たちよりも真剣なのではないかと自分が恥ずかしくなるほど。

人口減や高齢化に伴う労働力やGDPの低下に対して、アトキンソンさんの結論は、

「企業の規模を拡大すること。」
「これからは労働生産性の向上が必要になる。」

日本は世界的にも国際競争力が高いのに、生産性が低いのは何故かという問いが投げかけられています。

「日本企業の売上高を見ると、1億円以下の企業が全体の50%強。平均値で約5億弱。
10億を超える企業は全体の約9パーセント。」

「420万社のうち小規模が84.9%、中規模が14.8%、大規模が0.3%。」

「中小企業の定義は業種によって異なる。
サービス業の場合は、資本金5000万以下または従業員100人以下。」

まず自分の会社ですら、中小企業じゃなかったんだ!ということにも驚きました。それは確かに中小企業の定義がどうなんだろうかと。

中小企業の割合があまりに多くロングテールになっていること、そのような制度になっていることが大きな課題であると指摘されています。

「中小企業を守る政策が首を絞めている。」

「赤字法人は上がり続けて全体の約60-70%に。」

またどうしても中小企業の割合が多いことが経営者の質にも関わってくるとも。

「経営者の質と生産性には密接な相関関係がある。」

1.企業が増えるほど平均的な経営者の質が下がる
2.賃金が低いほど経営者になるインセンティブが高まる
3.企業規模は経営者の能力を映す鏡
4.大学教育の質が経営者のレベルを左右する

また、中小企業が小さすぎる原因として、

1.中小企業の定義が小さい
2.規制などこ中小企業に対する優遇策が手厚い
3.最低賃金が低い

それに対しての解決策として、

1.中小企業の定義を500人以下に引き上げる
2.企業規模の拡大を促す
3.資本金1億円以下などの規制を廃止する

「生産性の高い国ほど中小企業の税制優遇策が少ない」

ということも他国のデータ比較満載で提示されています。

キーワードになるのは「monopsony(ひとつの買い手)」

「ひとつの買い手が供給者に対して独占的な支配力を持つこと。」

「新monopsony論となり、雇用者が労働者に対して相対的に強い交渉力を行使し割安で労働力を調達することができる、に変わった。」

まとめとして書かれているのは、今後のマクロな変化が起こす中小企業への打撃。

「人口減少によるマイナスの影響が中小企業を集中攻撃する。」

「新monopsony論により規模の小さい中小企業が爆発的に増えた。monopsonyが弱くなればその力に頼っている中小企業がもっとも困るようになる。」

「生産性の向上がうまい企業ほど存続率が高くなる。規模の経済により中堅や大企業が有利に。」

そもそも今回のデータはどれも意外に思うものも多く、改めて全体の構造がよく分かりました。最近どの話もそうですが、人口増加を前提とした制度や仕組みが引き起こした問題に時代が合わなくなっているってことですよね。

で、実はそれは予測できたことも多いんでしょうが、結局取り組まなかったのは、その時の満足を棄てられないことからきていますよね。やっぱり人はリスクを取って新しいことに取り組むのはとても難しいんですよね。

あとは自分だけはギリギリ逃げ切れるんじゃないか妄想も重い。狭間にいる我々世代は葛藤しながらも少しでも良いバトンをつなげたいですよね。

そう考えると自分にできるのかなと絶望しますけど、うちの会社で先日立ち上げた地方創生プロジェクトのように、自分の強みと市場のペインの重なるところで、ひとつひとつ積み上げていくしかないよな、って思います。

#デービッドアトキンソン
#日本企業の勝算

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