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サケとハコ

「利き酒」という言葉は、みなさんどこかできっと耳にしたことがありますよね。
五感を使って日本酒を飲み比べ、味や品質をチェックすること。ガチな鑑定〜気楽な飲み比べのニュアンスまで幅広い意味で使われている言葉です。

今回わたしがご縁あって出演のご依頼を受けたのは「聴き酒」の会! おや?なんだか漢字が違います。そしてどうやらミスではない様子。

どういうことかお話を伺ってみると、主催の方の「日本酒」にかける情熱が、メキメキと伝わってきました。

あのですね。日本酒、というのは、日本の、国の、酒、なんです。ワインなんかよりよっぽど手間ひまかけて作られる。それなのに、ワインボトルは洒落た店で何十万円もするボトルがあって、日本酒はせいぜい一万円がいいとこだ、というのは、考えてみれば何ともおかしな話じゃーありませんか。日本酒だって、もっともっと高級で、スマートな一流の酒だという認識が広まって、酒造さんたちがこの伝統と精神をきちんと後世へ引き継いでいく土壌が必要だ。わたしたち日本人はもっと、自分の国の酒に、プライドを持つべきなんですよ!そして、日本酒への意識を変えるためには、ガブガブ飲んでガハハと笑ってただ呑んだくれるのではなくて、極上の音楽に耳を傾けながらじっくりと上質な酒と音を味わう、というのが、わたしは最高だと考えているんです。そこで、是非かおりさんに、歌っていただけないかと。

わーおもしろそう!やりましょう!と二つ返事で出演を決め、自分自身はアルコールに弱くてほとんど飲めない「お酒」について少しずつですが勉強をはじめました。笑

ここで日本酒についてわたしが語るにはあまりにも知識が浅すぎるのでもちろん無理なのですが、しらべてみると、酒(=日本酒)のある風景や、そのときの感情の波を「詩」にしている作品が、思いのほか多かったことに驚きました。

当日は、そんな「酒」にまつわる詩にメロディをのせて歌をお届けしよう、というイメージがつぷつぷと膨らんでいきました。

会場は福岡、神聖な筥崎宮(はこざきぐう)の前に佇む「もも庵」さん。昨年も演奏させていただいた大好きな場所で、偶然にもまた今年ここへ帰ってくることができてうれしかった。

以前よりもピアノの音色がやわらかくまろやかに進化していたことも印象的でした。すっごく好きな響き方。
日本酒でいうと、フルーティーで豊潤、だけど後味はさっぱりとした甘口、といったところ、でしょうか(合っているかはわからない笑)

丁寧に、大切に弾かれていることがわかる、女性的なピアノです。

毎年秋になると蔵開きされる季節の日本酒「冷やおろし」に合わせて、秋の童謡をゆったりと奏でたり、中秋の名月を眺めながら盃を傾ける風情ある景色をイメージして、moon river なども。案外洋楽も合うものですね!とのご感想もいただき、喜んでいただけてうれしかったー。

10月は日本酒の月といわれているそうなのですが(今回初めて知りました!)酒という漢字は、もともと酉(とり)から来ていて、そのまたもとを辿れば、この漢字は酒樽(壺みたいなかたち)の象形文字。昔は「酒」のサンズイなしで、酉(さけ)と読んでいたのだそうです。

そんで、酉(とり)は干支でいうと、ねーうしとらうーたつみーうまひつじさる…とり!10番目。だから10月は酒の月、というストーリーがあるんだって(これがいわゆる、普段わたしが聞くのも話すのも苦手な「ウンチク」というやつですね 笑)

34年間も生きてるというのにまったく、わたしたちの日常の風景は、知らないことだらけで構成されているのだなーと思います。

知らなくても生きていけること。知っているとより一層楽しめること。知らないほうがよかったなと苦笑いすること。

どうせいろいろ、いろいーろあるのなら、世界を素敵に眺められるストーリーを、吸収してシェアしていきたい。

この夜、歌にした詩の一部をご紹介しますね。大酒呑みだったらしい、作者である詩人若山牧水さんのエピソードとともに。

白玉の歯にしみとほる秋の夜の
酒はしづかに飲むべかりけれ

それから「サヨナラダケガ人生ダ」という井伏鱒二さんの名訳の元になったといわれる漢詩「酒ヲ勧ム」も、原文と翻訳の両方にメロディをつけ、言葉のリズムと響きをそれぞれに味わい進めていきました。

場の空気や集中力が高まってきたので(けっこうな量のお酒を呑んでいるというのにすごい!笑)会場のみなさんと一緒に「箱崎物語」という日本酒をイメージして、言葉を集め、即興での曲づくりにもチャレンジ。

参加型、一夜限りのメンバーによるクリエイティブなステージは、みなさんにもご好評いただけて白熱のひとときとなりました。

(味の感想は…ちょっと避けます、サケだけに、みたいな、まさかの駄洒落もぴゅうーと飛んできましたよ。これも無理やり、歌詞にぶち込みました笑)

終演後は、持ってきていたCDもなんと完売!売れ切れてしまってからも、じゃあ郵送でお願いしていいですか?と追加でご注文くださる方がいたりして、ありがたかったです。泣

人前で演奏する機会が限られている中、こうして必要として呼んでくださる方がいて、熱心に聴いてくださる方が確かに、目の前に、いて。心強く励まされた「聴き酒」の会でした。
こんなふうに、街が元気になる、人が笑顔になるイベントを、細々とですがこうして続けていけたらいいなぁ。

ご紹介が最後になりましたが、「聴き酒」という言葉の発案者である、高光産業株式会社代表の妹尾八郎さん。素晴らしい日本酒を提供してくださった、200年の伝統を持つ蔵元、綾杉酒造さん。大変お世話になった、ハコと場をつくる株式会社SAITOのみなさん!
お集まりくださったお客さま、もも庵さん。貴重な機会をいただき、ほんとうにありがとうございました。

打ち上げは、筥崎宮前のシビれる屋台、花山(はなやま)へ〜!

そして、あれっ?この写真って…?とすでにお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが。いつも東京で撮影してくださっているカメラマン谷本さん、偶然にも福岡でまったく別件の撮影ロケが入っており、しかもこの日だけオフで(!)奇跡的に、ライブを聴きにきてくれてステージ撮影が実現してしまったのです!
これって実は、けっこーすごい確率じゃないか?ということで、打ち上げもご一緒して福岡メンバーとともに盛り上がりました笑

この翌日は「ふくおか食べる通信」さんのPV撮影が朝5時〜スタート!早起きがんばった!
そちらのエピソードも、また次の記事で綴っていきますね。

PS.
さいきん、noteの記事を書くと「サポート機能」というのを使って、ご支援をしてくださる方が増えてきています。
なんでみんなそんな優しいと!?何もお返しできんっちゃけど!と思わず北九弁で叫んでしまうくらい、毎回ビックリします。しかも、お会いしたことない方がたくさんいて、温かな応援コメントも添えてくださったり。

みんなのおかげで、今日を生かされてます。
ほんとうにありがとうございます!

またがんばって書くねっ

かおり

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