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〜マンチーズでハイチーズ〜

(はじめに)

冬といえば冬眠、多くの動物は食べてじっとしている時期ですね。
みなさんちゃんと食べれていますか?

呼吸による空気と口から摂る飲食物、この2つで人間の体はほぼ創られています。
脂身の多いお肉ばっかり食べていたら、おならと便、いわゆる排泄物は臭いますし、汗も変な匂いがしますよね?
煙もっくもっくな工業地帯の空気は、「さすがにマスクした方がよくない?」って気持ちも出てくる気がしませんか?
追い求めていけば自然豊かな土地に住み、人工物の入っていないオーガニックなものをとるのかもしれません。
ヒトは発生した当初は草を食べ、種の生存競争から生き残るために肉を食べるようになったから今がある、そんな気がしています。ビーガンは生物学的にみたら遺伝子aa、ミートイーターが遺伝子AA、肉も草もはAa、交雑したら種類が多いのはAa、多様性、ダイバーシティ。新興宗教ばりに押しつけるのだけはやめてほしいもんですね。
心に1番潤いをあたえてくれるものが人工物の塊であるジャンクフードだったりするのはなんだか人体の不思議ですね。

(グレリンとは)

あたりまえですけど食べれないと一気に体力が落ちてしまい、寿命が縮みます。
消t化器外科医にとっての退院の基準は、「食べれるようになったら退院。」です。なので食べれないことへの執着は人より強いのかもしれません。
よく仕事で使っちゃう言葉、「食べれるものでいいから食べてくださいね。」。体にとりあえずなんでもいいからエネルギーになりそうなものを吐かない程度にぶちこんで、病気と戦うパワーをつけてほしい、そんなメッセージが込められています。

ところで、大麻を摂取すると食欲がとまらなくなる状態になることがあります。
マンチー、Munchies、幸せな時間ですね。
大麻を摂取したことがある方には、それぞれ推しの「マンチーごはん」があることでしょう。

どうしてこんなことになるのでしょうか??
大麻を摂取する、日本の法律では有害物質で違法とされているTHCを摂取すると、THCが脳内のカンナビノイド受容体に結合し、グレリンが分泌されることがわかっています。
ちなみにCBDを摂取してもグレリンは分泌されません。
グレリンとは日本人の研究者である児島将康教授が発見したホルモンで、「STAP細胞はあります!」で有名になった世界一有名な科学ジャーナル、Natureに発表されて日の目を浴びた、食欲を刺激する作用をもったペプチドホルモンのことです。
グレリンを分泌する細胞の90%以上は胃の胃体部に存在し、腸や膵臓、視床下部、胎盤、腎臓にも存在しており、グレリンには成長ホルモンの分泌、心血管系保護作用、エネルギー代謝調節作用といった働きがあります。
大麻を摂取するとグレリンが血中にドバドバ出て食べれるようになる仕組みです。


今まで発見されたペプチドホルモンはほぼすべて薬に利用されています。
代表的なものを挙げれば、インスリン、グルカゴン、プロラクチン、レニンなどなど。
ちなみに日本でグレリンの分泌を促す薬として漢方の六君子湯、2021年に発売された経口グレリン様作用薬のアナモレリンが挙げられます。
このグレリンの発見によって小野薬品はアナモレリンという新薬を開発することができました。
アナモレリンは新しい薬で適応疾患は「がん悪液質」のみ、がん悪液質への支持療法としてQOLの維持や改善、さらには予後の改善の可能性も期待されています。
とても良い薬だと思います。
ただ1日1回100mgを摂取、1錠50mg250円弱とお高め、月に15000円近くかかってしまうのが難点ですかね。
六君子湯もよく処方しますが、粉なので内服し辛いといった不人気なところもあります。

「がん悪液質」の診断基準は
・過去6ヶ月間の体重減少>5%
・BMI<20で体重減少>2%
・サルコペニアで体重減少>2%
上記のいずれかを満たすこととなっています。

進行がん患者さんの80%は上記に該当してしまいます。パチンコで継続率80%はほぼ連チャン、ボートレースで1号艇のイン逃げ率が80%はほぼ逃げるイン戦巧者、そんな割合ですね。

(グレリンとがん悪液質)

がん細胞は炎症性サイトカインを惹起し全身性の炎症を引き起こします。それによって骨格筋の減少、脂肪分解の促進、代謝異常、食欲抑制を引き起こし体重が減少してしまいます。
グレリンには、食欲の促進だけではなく、抗炎症作用、筋蛋白質分解の抑制、筋蛋白質合成の促進、アポトーシスの阻害、脂肪貯蔵の増加、エネルギー消費の低下作用もあり、がん悪液質の複数の病態を改善すると考えられています。
どうやってがん細胞と戦っていこうか?まずはグレリンをどばどば出して、ごはんを食べれるようになって体力つけようということになります。

進行がんの中でもより末期のがん患者さんにとっては、医療大麻の方がメリットが大きいのではないかと思います。
食欲不振だけでなく、悪心嘔吐、抑うつ、がん性疼痛といった症状を緩和し、QOLの維持や改善の可能性も期待されており、より良い最期を迎えられるのではないかと思ってしまいます。

末期がん患者さんにとって誤嚥のリスクは常に付きまといますが、好きなものを食べてほしい。
最後の晩餐すら満足にできない患者さんもいます。
これから迎える超高齢化社会、だからこそ良い最期を過ごしてほしいですね。

(あとがき)

2月にはタイに行って海外での現状を視察しに行きます。
楽しみです!
よろしクッシュ!!

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