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新・証券投資論Ⅱ 実務編(伊藤・荻島・諏訪部):サステナブル成長率

証券アナリスト試験の参考テキストでもある伊藤らの新・証券投資論Ⅱでサステナブル成長率の項を改めて確認したので備忘録的に内容をまとめておきます。

純資産が内部留保(純利益ー配当)の分だけ成長する場合、クリーンサープラス関係が成り立つと言います。すなわち、$${t}$$時点の純資産、純利益、配当を$${B_t}$$、$${E_t}$$、$${D_t}$$とすると、

$${B_t=B_{t-1}+E_{t}-D_{t}}$$

です。上式を式変形すると、

$${\frac{B_t-B_{t-1}}{B_{t-1}}= \frac{E_{t}-D_{t}}{B_{t-1}} = \frac{E_t}{B_{t-1}} (1- \frac{D_t}{E_t} ) = ROE_{t} \times (1-d_t)}$$

ただし$${ROE_t}$$、$${d_t}$$は$${t}$$時点のROE、配当性向です。ROE×(1ー配当性向)(内部留保率)をサステナブル成長率と呼びます。上式から明らかなようにサステナブル成長率はクリーンサープラス関係を前提とした時の純資産成長率です。

さて伊藤らにはROEと配当性向を一定(以下、それぞれ$${ROE}$$、$${d}$$と表記します)とすると純資産成長率、利益成長率、配当成長率はサステナブル成長率となるとありますが、自明なのか何ら導出過程については述べていません。入門レベルのテキストとしては簡単な方針くらいは記述して欲しいところですね。

純資産成長率についてはそもそもそのようにサステナブル成長率定義しているので、自明と言ってもいいでしょう。

配当成長率は、$${D_t = E_t \times d}$$であることを想起すれば、

$${ \frac{D_t}{D_{t-1}}-1 = \frac{E_t \times d}{E_{t-1} \times d } -1= \frac{E_t }{E_{t-1} }-1}$$

純利益成長率に等しいことが分かるので、純利益成長率がサステナブル成長率になることを示せばよいですね。記号が煩雑になるので、$${t+1}$$期について考えます。$${t+1}$$期の純利益成長率は、

$${\frac{E_{t+1}}{E_t } -1= \frac{B_t \times ROE }{E_t} -1  = \frac{(B_{t-1} + E_t(1-d) ) \times ROE}{E_t} -1 =\frac{1}{ROE}\times ROE + (1-d)\times ROE -1 = (1-d)\times ROE }$$

となり、サステナブル成長率に等しいことが示せました。ただし、クリーンサープラス関係より、

$${B_t=B_{t-1}+E_t(1-d)}$$

が成り立つことを使いました。


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