思い出の味を確認した話

これは牛の腎臓で、通称マメという。ホルモンのなかでもさらにホルモンというか、捨てるような部位で、多分食べたことのある人は殆ど居ないんじゃないだろうか。フランス料理では出てくるらしいが。

いきつけの肉屋で何度も高級タンの1本買いをしてたら常連として扱われるようになったので、マメは売ってないかと聞いてみたら特別に仕入れてくれるというので頼んだのがこれだ。

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小学生のころ、珍しい知らないものを食べるのがその時から好きで、肉屋についていったときに買ってもらい、食べて気に入ったから毎週のように遠い肉屋までいって買ってきてくれと父親にせがんだ。たしか車で片道一時間くらいだったはずだ。

家の庭で七輪に炭火をおこしてくれて、それで腹いっぱい食べていた。片付けを自分でした覚えがないから、父親がしていたんだろう。

多分最初に食に執着したのがこれだった。だから父親も面倒でも与えてくれたのだろう。

焼いてみたら、死体でも焼いたんじゃないかというくらいの悪臭で、あわてて換気扇を最強にした。(死体を焼いた匂いをかいだことはないが、それくらい生理的にキツイ匂いだった。)

だから、外で七輪で焼いていたのだなあと腑に落ちた。

新鮮で、常連のためにわざわざ掃除して売ってくれたマメは、今俺が食べている数々の美食とくらべればなんてことはない味だったが、不味くはなかった。クセがあるが、これは食べ物としてわかる。

もう満足したので頼むことはない。思い出の味だった。

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