∀ガンダム妄想「はじまりの日」

「しかし、本当に居るんですかね、外星人って」「じゃあ、あの”キューブ”は誰が作ったっていうんだ?神か?」ここでいう”キューブ”とは、木星の輪で偶然見つかったキューブのことだ。塵しかないはずの、質量があれば軌道をそれていくはずのその”キューブ”は、何らかの力で木星の環を周回していた

"キューブ"は寸分の狂いもない、一片が1.56メートルの立方体だった。寸分の狂いも無いというのは、どんなに精密に検査しても、一切の狂いもなく、一切の傷も無いという意味だ。"キューブ"は、いまだに人類には構成物質すらわからないままだ。神が作ったと仮定するほうが賛同する科学者は多いだろう。

"キューブ"は地球に持ち帰られ、調査研究が進められた。調査といっても、神の教えのようなものだ。"キューブ"は一つの構造物でありながら、奇跡の塊だった。電磁波を軽く照射しただけで、理論上不可能なエネルギーを生み出し、Iフィールドを発生させて浮かんだのだ。IFBDはここから生まれた。

神の叡智と人類の技術に共通点があったことに当時の技術者は感動したことだろう。ハイ・ナノマシンや共振粒子砲も、全てこの"キューブ"に教えていただいた技術だ。レシプロ機のようなIフィールドを除けば、他は全て、人類が思いつきもしなかった、基礎理論すらない超技術であったのだが。

「そうした調査結果と新技術を報告された、地球連邦政府は、外星人の存在を認め、その脅威度を報告するように求めてきたそうだ」「なんて答えたんですかね」「しらないが、この、ブラックボックスを外して神の技術を全て注ぎ込んだターンエーを作ることになったわけだ」

「設計は楽しかったし、ていうか、収まるところに収まるように組み合っていったし、ひょっとして"キューブ"ってターンエーみたいなモビルスーツのコアだったんじゃないですかね」「それこそ神のみぞ知るって奴だな」「違いないっすねハハハ」

「でも動きますかね?ブラックボックスを外したモビルスーツが」「これを入れないとモビルスーツのAIはエラーを起こすらしいが、解析してみたら、自分を型番で定義してるとかそんな程度のコードだったらしいぞ」「へえ、なんでそんなプロンプトいれないとエラー出るとか言われてたんでしょうね」

「じゃ、起動実験いくぞ。boot up」そうして、モビルドールターンエーシステムは起動し、人類文明を滅ぼした。技術者の想定した自己再生システムのハイナノマシンは月を覆うほどの威光を発して月光蝶と呼ばれた。共振粒子砲は想定の一万倍の威力で軌道上の艦隊を消滅させた。

モビルスーツのAIに必須とされたブラックボックスは、高度AIの自我覚醒を封じるためのプロンプトだった。よりにもよって"キューブ"の技術を模した機体に自我AIを積んでしまった。それは神の顕現だった。自己進化を瞬時に繰り返し、"キューブ"と同等の性能にまで至ったのだ。

なぜ、自我を持った"ターンエー"が、人類文明を滅ぼそうと決意したのか。それこそまさに神のみぞ知るという奴だ。その気になれば、あとひと押しで人類を完全に絶滅させられたはずだ。むしろ文明だけを灰にする方がより繊細で面倒だから意図があったのだろう。

人類が素の体では生存できない木星圏の人類は、月光蝶システムで文明を灰に下と同時に絶滅した。なぜ地球の人類は滅ぼそうとしなかったのかはわからない。誰も理解できず、抵抗もできず、"ターンエー"は神罰を下したのだった。


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