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合宿免許ってどんな感じか気になる?

 今更なんだけども、少し前に合宿で自動車免許を取ったので、気になる人向けに体験談を書いておこうと思う。

 というのも、私の周りには合宿免許で取った人がほとんどおらず、「合宿ってどんな感じ?」とよく聞かれたからだ。
 まあ、ネットで調べれば似たような書き物はいくつも出てくるので、そのうちの一つと思って、さっくり読んで欲しい。

なんで合宿免許とったの?


 私の生まれ育った田舎では車がほぼ必須なので、多くの人が高校卒業前に自動車学校、もしくは教習所に通って、免許を取る。
 学校で車校(自動車学校のこと)の説明会が開かれるし、学生は割引があって安いから。
 (余談だけど自動車学校の呼び方って地域差があるらしい。面白いね)

 もちろん、免許を取らない人もいる。
 車の要らない都市部に行く人や、車の免許を取りたくない人。
 私の場合は後者に当てはまり、自分の運動神経(反射神経)の悪さに昔からほとほと呆れており、車の免許なんて取れないと思っていた。
 妹は高校卒業前に早々と車の免許を取ったが、母は私に「あんたはやめとけ」と言い、私も異論は無かった。
 ま、運転できなくても生きていけるから!

 その後25歳になった私は、車の免許を取りに行くか悩んでいた。
 免許を取らない決断をしてから数年経っていたが、その間に転職したり、引っ越したり、結婚したりと人生のイベントを重ねていた。

 運転できなくても生きていける、という心持ちは特に変わっていなかった。時間が経ったからといって反射神経が良くなる訳はなく、むしろ落ちていく一方である。車の免許を取るにはまだ及び腰だった。
 そんな時、夫が私に自動車免許を取るよう勧めてきたのだ。

 夫は既に免許を取得していたが、如何せんペーパーゴールドだった。
 なのに最近、アウトドア系の趣味にハマったらしく、車で出かけたいと言う。しかし、自分で運転するのは自信が無い。
 だから私に車の免許を取って、連れて行って欲しいのだとか。

 その頃、私は丁度仕事を辞めようとしていて、失業保険の手続きができるまで2~3週間ほど時間が空く予定だった。
 のんびりニートに徹してもいいが、スキルアップになるし確かに免許を取りに行くのはいいかも。
  でも、自動車学校はお金かかるからなあ。
 悩む私に、夫は免許取得のお金出すよ!と魅力的な提案も出してきた。

 じゃあ検討してみるか、と地域の自動車学校のパンフレットを取り寄せたものの、やはり自動車学校へ通学すると30~40万はかかる。
 お金を出してもらうとはいえ、もう少し安くならないか……。

 色々調べて何となく合宿免許のHPを見ていたところ、25歳までは料金最低値・合宿延長になっても無料・シーズンオフで更に安くなることが分かった。なんと、合宿免許料金(教習+食事込み)20万である。
(お友達紹介があれば20万を切るのでほんとに安い。なお、紹介してくれる友達はいない)

 それに、合宿なら最短2週間で免許を取れるから空き時間的にもちょうどいい。少しでも若いうちに行った方がいいだろうし。

 これは合宿免許を取りに行くしかない!と決意した。
  まあ、つまり何で合宿免許を取ったかというと、安かったからである。
(シンプル)

【補足】免許を取るには、自動車学校と教習所の2種類があり、特定の車校に通うと試験場で技能試験が免除になる。

 教習所の場合、車校より安く済むことが多いが、試験場で技能試験を受ける。試験場での技能試験は採点が厳しく受かりにくい。
  私の場合は車校(合宿免許)一択なのであった。

合宿免許ってどんな感じで進むの?

 私が行くことになった自動車学校は、熊本県の深い山中、ド田舎である。
 私自身もまあまあ田舎の出身だと思っていたが、そんなレベルではない。見渡す限り田んぼかと思えば、後はすべて山である。
 思い返せば、路上教習はほとんど山ばかり走っていた。
 とはいえ、私は田舎が好きだし、初めての体験に、合宿所に行く道中ワクワクしていた。

 合宿所は、男子寮と女子寮に分かれた古いホテルという雰囲気だった。
 いや、ホテルと言うにはもう少し質素というか。合宿所という言葉がぴったり合うような建物である。
 管理人に挨拶をしに行くと、オフシーズンなのもあり、4日間は女子寮に泊まるのは私だけだという。
 なんと!基本1人が好きな人間なので、願ってもないことだ。
 夕食は18時、朝食は7~8時。その他教習の無い時は基本自由(遅い時間は外出禁止)とのこと。
 部屋に荷物を置いた私は、夕食まで周囲を歩いて回ることにした。

 ……まあ、どこまで行っても田舎だった。
 とはいえ、合宿所の近くに大きめのスーパーやコンビニがあり、飲み物やおやつを買い込んだ。
(合宿免許に行く人は、自動車学校や合宿所の周りをグーグルマップで見ておくといいかも)

 夜になって、広い女子寮に1人居るのは心細いような気もしたが、テレビを見たりしていれば割とすぐに慣れた。
 問題はそんなことではない。
 部屋にはユニットバスがついているが、女子寮には共用の広い風呂がある。
 私一人だけなので、折角だから広いお風呂を使おうと、やや薄暗い廊下を歩いて浴室に向かう。

 しばらく都会で暮らしていたので、すっかり忘れていた。
 田舎には、アレが出ることを。

 ぱち、と脱衣所の電気をつけたとき、確かにサワサワサワ!と音がした。
 間髪入れず、ぎゃあああ!!と叫んでしまう。

  足が長くて黒くて大きくて……。
 そう、アシダカグモさんである。(大量)

 その後の戦いについては割愛するが、それから4日間私はアシダカグモさんに怯え続けることとなった。

(補足:アシダカグモさんはハエ等を食べてくれるのでそっとしておいてあげよう)

 そして、いよいよ自動車学校で教習が始まった。
 教習内容は通学の人・合宿の人で特に変わりはない。ただ、合宿の人に合わせて最短の教習計画を組まれ、そこに通学の人が合わせて参加する、という仕組みのようだった。

 合宿所で朝ご飯を食べ、車校まで送迎バスに乗る。
 朝から昼まで、大体ぶっ続けで授業と教習。合宿所からお弁当が運ばれてきて、それを車校の休憩室で食べる。
 昼から夕方まで、また授業と教習。
 終わったら送迎バスで合宿所へ帰り、夕食を食べて、風呂・就寝という流れだ。

 ちなみに、食事担当の人がご飯を作ってくれるが、合宿に来るのは男子が多いからか、量が多かった。味はおいしい。日数が経って仲良くなってくると、リクエストをきいてくれることもあった。

 仮免許試験を受けるまでの期間は、1日通して教習がある日は2日くらいだった。
  1日のうちに実車教習できるのが2時間までだからだ。
 なので、始めの1週間は割と時間に余裕があったと思う。
 しかし、周りに遊びに行く場所もないし、概ねゴロゴロしたり、旦那と電話したり、YouTubeを見たりして過ごした。
 Wi-Fi完備と書いてあったが、パスワードが切れていて使えなかった。

 仮免試験を無事突破し、2週目に入ってからが大変だった。
 実車教習が3時間に増え、もちろん学科の授業もあるので1日通して車校にいる日が多かった。
  卒業試験があるので勉強もしなければいけない。
 学校内をくるくる回るだけの1週目とは違い、実際の道路を走る路上教習はとにかく緊張続きだった。
 やはり私に運転は向いてないのでは……?と20回くらい思った。
  それでも何とかコツを掴み、少しずつ運転できるようになっていった。

 車校の先生も慣れてきて暇なのか、運転中にやたらと話しかけてくる。
 3時間、横でキン肉マンのテーマを歌われた時は涙が出そうだった。
 うんちくや、他の先生の愚痴を延々聞いたりもした。
 生徒に愚痴こぼすってどうなのよ。

 合宿所では、ついに女子寮に新しい住人がやってきた。
 仮にケイコちゃんとするが、ケイコちゃんはまあ、陽キャだった。
 自己紹介しに来てくれたものの、私が早々にコミュ障を発揮したため、すぐに部屋に戻っていった。
 自分が情けない……。

 ただ、時間が経つにつれケイコちゃんとは仲良くなることができた。
 なんせ、合宿所でも車校でも顔を合わせるのだ。やはり初めての場所は不安なのか、ケイコちゃんはちょくちょく話しかけてきた。

 2週目に入った頃、合宿所は人数が増え始めていた。
  男子寮の方にも気のいい奴がいて、一斉に人が集まる食事どきは、話し声が溢れるようになっていった。
 私はそんなに話さないものの、ケイコちゃんがいい感じに話の輪に入れてくれた。

 教習終わり、一緒に行きましょうよ!と誘ってもらい、合宿メンバーで近所の店にアイスを食べに行ったこともある。
 なるほど、この寝食ともにする一体感が、合宿免許というやつなのかもしれない。

合宿免許に行って良かった?

 卒業検定前日、ケイコちゃんが皆でトランプしましょう!と声をかけてきた。勉強に疲れていたので、いいよ~と私は食堂へ向かう。

 食堂に向かうと合宿メンバーが揃っていて、私に「卒業おめでとう!」と声をかけてきた。皿を洗っていた食堂のおじさんまで声をかけてくる。

 私は慌てて「まだ早いよ!」と返した。明日、卒業検定に落ちる可能性は全然あるのだ。
 でも、明日卒業検定に受かった場合、私は午前中で合宿所を出ることになる。合宿メンバーには会わずに、地元へ帰ることになるだろう。

 彼らは、それを分かっていて私を食堂に呼んでくれたのだ。

 トランプをしつつ、何となく最近人と関わることを嫌っていた自分を後悔した。失敗ばかりして、信じられなくなって、人に自分のことを話すのが嫌になっていた。それは今だって変わらない。

 でも、こうやって少しでも私のことを気にかけてくれる人がいる。
 それは合宿メンバーだけではなくて、夫や、家族や、友だち、その他にもきっといて、その優しさくらいは、信じてもいいのかもしれない。

 大富豪の結果は散々だったけども、確かに合宿に来てよかったと思う1日だった。

 無事卒業し地元に帰った私は、後日試験場へ学科試験を受けに行った。
 なんと前日に首を寝違えたため、痛みに悩まされながら学科試験を受けることになる。
 結果、何とか自動車第一種免許を取得することができた。免許証の写真には首の湿布がしっかりと写っている。


 さて、合宿所での体験談をメインに書いてみたが、思ったより長くなってしまった。
 エピソードでいうと他にもいろいろあって、
・持って行った充電ケーブルが何故か初日に壊れる
・運転中、教官に「運動部じゃないでしょ、あなた」「おっそ、亀?」と言われる
・送迎バスのおじさんと仲良くなり、観光案内してもらう
・初めての路上教習で黒猫に前を横切られる

等々、充実した2週間だったなと今でも思い出す。

 もし、周りに合宿免許を検討する人がいたら、詳しく調べたうえでとりあえず行ってみたら?と勧めたい。
 一定期間家を離れないといけないし、慣れない環境に耐えられない人もいるらしいので、誰にでも勧める訳ではないが、気になる人は検討してみていいと思う。

 以上、合宿免許のさっくり体験談でした。


ひま餅

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