★SS企画《俺のグルメFESTIVAL》アンソロジー参加

：卑怯な食卓

「ほんまにあんたは、これで何回目やと思ってんねん」

「……うっさいな、いちいち覚えとらんわ」

「今年だけで十六回目、通算では七十八回目や、あんたのプチ家出は」

　プチって言うな。

「……うっさいな」

「ええからはよ食べ、どうせ腹減ってひもじぃて帰ってきてんやろ」

「……」

　言い返せず、無言で箸を掴む。

　白メシに味噌汁、だし巻き玉子と漬け物、野菜の炊いたん。

　真夜中に帰ってくる阿呆な息子に、文句言いながらもちゃんと一汁三菜揃えてくれる。

　正直、顔の痣も破れた服も見られたくないねんけど、それでもしゃーない、この誘惑には勝てん。

　かーちゃんの作る飯は、卑怯やっちゅーくらいに美味いねんから。

「……いただきます」

＞姫神　雛稀　作