作られていく「可愛い」を見ていた

銭湯はみんな素っ裸。身体が、肉付きがよく分かる。おそらく、この銭湯にいる人の中で私は一番ガリガリでペラッペラの身体だ。身長は154cm。ヘルスメーターに乗ると41kgと表示される。体脂肪計は持っていないので長らく測っていないけど、最後に測ったときは19%だった。そのときはとても健康的で、体重が45kgあったので、今は体脂肪ももっと少ないはずだ。それでも、残りの脂肪を削ぎ落とすかのよう、サウナで汗を流す。痩せている身体でないと自分が許せない。愛されない。だって昔、クラスメイトに「デブ」と言われたことがあるから。痩せれば誰も悪くは言わない。そんな思いが根底にある。

脱衣所に戻ると、だいぶぽっちゃりしている二十歳前後の子が大きな鏡の前で衣類を着始めていた。バストやヒップ、腰回りもボリュームがある。身長は推定156cm、体重は推定60kg。顔のつくりは元々可愛い。セミロングの黒髪はもう乾かしたようだ。ブラジャーをつけ、その上からゆったりとしたベージュのトレーナーをかぶった。丈はお尻をすっぽり包む。そして、下には黒のスキニーを履いた。なるほど、これが着痩せか。服を着ただけで−5kgに見えた。

さらに、彼女は風呂に入った後なのに軽く化粧を始めた。もう夜だけど、これから予定があるのだろうか。パウダーをはたき、眉毛を描き足し、エチュードハウスのティントリップを塗り始めた。(私も同じティントリップを持ってる)そして、黒い髪も後ろで一つにまとめ、前髪を一生懸命セットし始めた。前髪はあれだ、AKBグループの子たちみたく、片側を少しあけてちょびっとおでこを見せるやつ。何度も何度も前髪を気にしてセットする。

彼女は着々と「可愛い」を作り上げていった。決して派手な格好でも流行の服でも個性的なファッションでもない。「男ウケ」を作り上げていった。

「可愛いは作れる」

そんなフレーズが高校の頃、シャンプーのCMで流れていた。

私は「可愛い」を作ってもいい存在なのか、可愛いは元々可愛い人じゃないと作ってはいけないのではないか。

可愛いを作り上げていく彼女を見ていた私は、ガリガリの痩せっぽちで、ちっとも可愛くない。「可愛い」「男ウケ」を作ってもいいと思える自分にいつになったらなれるのだろうか。

#エッセイ #摂食障害  

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