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見た目だけではその人の苦しみはわからない

SNSが普及したことで、私たちの生活は一変しました。

一番多く変わったのは、「人とのかかわり方」。人間関係が希薄になった、とも言われますが、顔見知り程度の人の生活にこんなに詳しくなるなんて、以前には想像もできなかったように思います。

昔々、ケータイもネットもSNSもなかった頃、相手のことを深く知るには、直接会って話す、特に一緒にお酒でも飲むのが唯一に近い方法でした。

家族と一緒に住んでいれば、家での電話では込み入った話はしづらいし、お酒でも入らなければ、人はそんなに胸の奥底に秘めたものを吐露したりはしないもの。

けれど、昨今ではSNSで繋がった、そんなによく知らない相手の「カミングアウト」を目にする機会が増えました。それこそ、一緒に飲んでじっくり話したりしなければ知る由もなかった、一、二度会っただけの知人の暗部を否応なしに知らされる機会が増えたなぁと思います。


表の顔と裏の顔


一度会っただけのやわらかい雰囲気の女性が、毎日あちこちの名店で食べた美食や自作の美しい料理の写真ばかりSNSに載せていれば、正直「悩みなんて無さそうでいいなぁ」という感想を抱きます。けれどそういう方が、長く自身や家族の闘病で苦しんでいた、などというのはよくあることです。

そういうことが繰り返されるたびに、どんなに恵まれているように見える人にも、悩みや苦しみはあるものなんだなぁ、と感じるようになりました。というか、これって当たり前のことなんですけどね。

なぜ人は、自分以外はみんな悩んでないって思いたがるんでしょうかね。

そんなわけで、SNSを始めてから、どんな人にも「表の顔と裏の顔」がある。そんな当たり前のことに気づく機会が増えました。そこで、私は、他人と対峙するに当たって、「自分の方が大変だと決めつけない」と決めたのです。

だって、恥ずかしいじゃない?
さんざん苦労話したあとに、よくよく話してみたら、相手の方が全然苦労していたってことがわかったら。


これって、不幸マウンティング?

相手の実情を知りもしないのに、勝手に決めつけて、自分がどれだけ大変かを語りたがる人って多いですよね。

「そんなの、私の若いころに比べたら大したことない」
「そんなこと、仕事の大変さに比べれば苦労のうちに入らない」

特に、相手が自分より若かったり、専業主婦だったり、子供がいなかったり、健康そうに見えたり、ただ女だったり、というだけで、勝手に「お気楽」扱いされるのです。(あ、ご飯の写真見ただけで「悩みなさそう」って思う私もか(笑))

そういう方は、大抵通常の「俺の方がスゴイ」マウンティングとセットでして来たりする。どんなことも「自分の方が上」じゃないと気が済まないんでしょうか。

ホントバカらしい。マウンティングって嫌なものだけど、まだ「自分の方がスゴイ」自慢される方が納得がいきます。

この記事は、「マウンティング記事」とは別で書いていたのだけど、そうか、これがいわゆる「苦労マウンティング」「不幸マウンティング」というやつか、と途中で気づいたのでした。


出版した時の周りの反応


アトピー本を出版した時に「全然知らなかった」と周りの多くの人に言われました。私はこの件に関しては、本を出すまで、周りにほとんど話さなかったからです。

この本は闘病記です。私のオットは重症のアトピーで、一番ひどい時には、2か月近くほとんど寝たきりに近い状態になったことがあります。そう聞いても、「アトピーで寝たきり?」とピンと来ない方も多いでしょう。

アトピー患者さんの中には、ウチのオットよりもっとひどい人もたくさんいます。出版後に知り合った方の中には、小学校にほとんど行けなかったほどの「まれに見る重症」という方もいらっしゃいました。

アトピーには幼少時からのアトピーと、15歳以降に発症する「成人型」と呼ばれるアトピーがあります。幼少時からのアトピーは、大人になるにしたがって治ることがほとんどなので、アトピーは子供の病気だという認識が強いのですが、実際にはそうではありません。

成人型アトピーのやっかいなところは、死ぬような病気ではないけれど、完治が困難という点がまず挙げられます。それと同時に、重症患者の実態が社会にほとんど知られていない点が問題なのです。

私はそれを広く知って欲しくて、この本を書きました。

動機と言えば「知って欲しい」それだけに尽きます。

オットにしても、これからカメラマンとして世に売り出そうとしているときに、この本を出すことは、マイナスにしかならないかもしれませんでした。それでも出そうと決めたのです。


不幸だと知られても同情されるとは限らない


この本を出したことが、私のカミングアウトになりました。

本を読んで「そんなに大変だったとは。聞いてみないとわからないものね」と言ってくれた人がたくさんいてくれて、本当に本を出してよかったと思いました。

ただ、読んでくださった方は、おおむね好意的に捉えていただけたのですが、読まないで、いろいろ言う人って多いんですね。


本を全く読みもせずに、こんな事を言う男性もいました。
「俺もアレルギー持ちなんだけど。そんなの旦那さんだけじゃないよ」

ええっと、これは「何マウンティング」?(笑)
これも一種の「不幸マウンティング」なのかしら?

あれでしょうか。

闘病記を出す場合、数万人に一人の奇病とか、「亡くなる前提」なんかでないと書いちゃいけないってことなんでしょうか。

しかし、死なないけど大変な病気って、本当にたくさんあるわけで。
一見ありきたりに見えて、実情が知られていないことって、本当に本当にたくさんあるわけで。


相手の背後や心の奥に思いを馳せることの難しさ


しかし、その後、考えを改めるようなことがありました。

その男性は、当時ある事業に取り組んでいて、それはそれまでの彼の仕事の内容とはあまりにかけ離れたものでした。

その彼自身が若干「チャラい」キャラの持ち主だったので、その事業に取り組んだ動機すら「ええかっこしいだけなんじゃないか」というようなうがった目で私自身、見ていました。ダメなパターンですね、これ。

その後、彼が事業を立ち上げるまでの経緯や、それまでに取り組んで来た真摯なボランティア的な活動を知って、自分自身が恥ずかしくなりました。私の眼も曇っていたんだなぁと。

その彼の想いや活動を知ったのが、彼本人からではなく、まったく別のある方がnoteに載せていたある記事からでした。

彼も私もなにかしらの動機から、世の中をよくしたいと思って行動しているのに、相手のことを色眼鏡で見ているために、していることを正当に評価できなくなっていたんですねぇ。

noteのあの記事を読まなければ、私は彼のことを永遠に理解することはなかったかもしれない。なんか、すごいな、noteって。

ネットって悪いことばかりに取り上げられがちだけど、発信することで、お互い理解し合えたらいいなぁって思います。揚げ足取りや正義を振りかざすんじゃなくて、「みんないろいろあるなぁ」って思えたらいいのに。


見た目だけでは、その人の真の姿はわからない。


さて、話をアトピーの夫のことに戻しますと、彼も見た目だけでは、そんな辛い病を背負っているようには見えません。だからこそ、「私のカミングアウト」が周りに衝撃を与えたのです。

ありがたいことに、オットは、ここ数年は小康状態を保っていて、お仕事もバリバリさせていただいています。それでも無理や油断は禁物

そんな中でも「お仕事をいただけること」に感謝して、明るく生きている、そんな彼は本当にすごい。真の意味の「タフな人」だと思うのです。

見た目だけでは、その人の真の姿はわからない。

そんな彼の能天気なnoteはこちら。


おまけ

先月書いた「マウンティング一考」という記事は、おかげ様で多くの方にお読みいただいております。ちなみに1と2とあるけど、私は2の方がお薦めなので、ぜひ通しでお読みいただけたら幸いです。


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