イラストレーターが「便利屋さん」にならないためのたった一つの方法

30年来の友人たちに1年半ぶりくらいに会ったときのこと。

そのうちの一人は、昨年3月の私の個展に足を運んでくれたんだけど、彼女は、私のカラフルな絵は好きだけど、その個展のテーマであり、このnoteに挙げているような、赤と黒の絵は好きではないと言い出した。

自分は私のことを誰よりもよく分かっている一人だという自負が、彼女にはあるのだろう。赤と黒の絵はやめろと言わんばかりの勢いなのには、やや苦笑しつつ、彼女の気持ちがうれしい部分もあり。

絵の好みは人それぞれ

ホント絵の好みなんて人それぞれなんで、赤黒の絵がいいと言う人も当然いる。いや実は、結構あの絵は玄人受けがよく、周りのデザイナーや編集者から評判がいいのも事実なのだ。

また、彼女が来てくれた個展はそもそも、あの店の店主が、私がインスタに挙げている猫と女の子の赤黒の絵を気に入ってくれて、あの感じで是非、という話が来て決まったことだ。ここにも一人、赤黒の絵がすごくいいと言う人がいるのだ。それに個展では絵が一枚売れた!(喜)のでもうひとり。

私にしても、この画風を確立するまでにはそれなりに紆余曲折あり、自分なりに苦心してやってきた結果なので、たったひとりに「好きじゃない」と言われたからと言って、はいそうですか、と、愛着ある絵をやめるなんてことはない。

「便利屋さん」にならないためのたった一つの方法

画風はできればひとつに絞った方が好ましいと言われる。なぜかと言えば、イラストレーターは、個性が確立しているほど単価の高い仕事が来やすいからだ。仕事によって器用に画風を使い分けると、「便利屋さん」として安く都合よく使われて、消耗してしまいがちなのだ。

「便利屋さん」にならないためには、パッと見て自分の絵だとわかるような、個性を持つこと。

ただ、画風は無理して「一つ」に絞る必要はない。何でも描きます!と言うわけでない限り、2~3なら複数の画風を持っても構わないと思う。だから、私にしても、二つの画風のうち、絶対にどちらかに決めなければならないというわけではない。

「これしか描けない」ではなく「これしか描かない」

イラストスクールに通っていた時、ある先生が、とても印象的なことをおっしゃっていた。その方は誰もがCMなどでよく目にする大物イラストレーターで、とてもポップで軽快でシンプルなイラストを描かれる。

その先生が、ホワイトボードに若干写実的に顔を描きながら、茶目っ気たっぷりに「私だって、あれだけじゃなくて、こういう顔も描けるのよ」と笑いながらおっしゃったのだった。そう、「描けない」のではなく、「描かない」のだ。

たくさん描くと見えてくるもの

私はずっと画風が定まらず、自分では統一感のあるポートフォリオを作っているつもりでも「画風がいくつかあるね」といつも言われていた。

それでもたくさんの絵を描き続けるうちに、否応なしに自分らしさと言うものは出てくるものなのだ。結局画風なんて考えるまでもなく、数描いていくうちに自然にできてくるものなのかもしれない。

ある程度定まってきたら、「描かないもの」を決めるのは大切なのだろう。イラストスクールの先生が、リアルな絵を手放したように。

(とはいえ、カラフルな絵が自分で嫌いなわけではないです)


この話はもう少し続きます

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陽菜ひよ子 / イラストレーター&漫画家&文筆家

著書『アトピーの夫と暮らしています』(PHP研究所)。イラストのお仕事は、NHK・Eテレ『すイエんサー』、書籍『おいし なつかし なごやのおはなし』(戸田恵子著、ぴあ)など多数。現在2冊目の本の執筆中。ひよことプリンとネコが好き。 http://www.hiyoko.tv/

アート×デザイン=クリエイティブ

アートとは「自己表現を通じて鑑賞者の感情を励起する装置」であり、デザインとは「機能や目的に向けてユーザーの行動をアフォードする装置」である。故に両者の総和たるクリエイティブとは「暗黙知を通じて人々に新しい知見や体験を与えるプロダクトを生む活動」に他ならない。
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