22さい、大学生。先週の、大宮公演を見てきた。
私は決して「達郎に人生変えられました！」とか「達郎がきっかけでギターを始めました！」とか「辛い時はいつも達郎に助けられています。」みたいな部類ではない。いわば「空気」だった。

というか、空気だったということに気づいた。

母が大好きな「山下達郎」というシンガーソングライターの存在と、その楽曲は、我が家に常にあるものだった。SMAP QUEEN The Beatlesに並んで、車や家でよく流れていた。たぶんおそらく、その３組より流れていたんだと思う。Ride On Timeを聞いた時の懐かしさ(?)はなんとも言えない。まだ物心ついていなかった頃のおぼろげな記憶が香ってくる。そのくらい山下達郎が音楽プレイヤーから流れていることが普通のことだった。

山下達郎の存在を意識したのは、いつだかにベストを出した時。タワレコで予約させられて、私が引き取りに行った気がする。その時、バンドもやっていたので、改めて聞いてみて、ようやくその凄さに気づいた。

まてよ、山下達郎、超ええやん。

Queenとかビートルズとかスマップでも通ってきたこの「気づき」。でも10代の私にはまだ早かったようで、結局iPhoneに曲を入れることもなく時は過ぎた。そして私はライブハウスの子になり、舞台の子になった。

そんな2019年、イープラスでふと達郎のライブツアーの告知を目にしたので、母を誘って申し込んでみたら、チケットが当たった。母はものすごく嬉しそうだった。ポールマッカートニーのライブの時みたいだった。あと発券したら席が超良かった。８列目だった。

会場に入ると、目をキラキラさせてお兄様、お姉様方がたくさん。ご夫婦も多くて、やっぱり音楽が鳴っているところってタイムマシンなんだなあ、なんてしみじみしながらライブの開演を待っていた。

いや、超いいじゃん、山下達郎。

喉強すぎ。歌いすぎ。3時間超。66歳。意味がわからない。

あと、音がめちゃめちゃいいことに本当に度肝を抜かれた。
達郎のギターの発音がとっても良くて、ホールの「反響」という存在をもはや忘れた。バランスがめっちゃいいし、ホールなのに信じられない音圧で、だけど耳が痛くない絶妙な音響。これは舞台技術がわかるようになってからわかったよさだった。

それから初めて、達郎の歌を聞いて「恋がしたいな」と思った。
存在が空気だったもんで、歌詞とかちゃんと聞いたことがなかった。
私はあの日からずっと、君とドーナツが食べたくて仕方がない。

達郎がMCでこんなことを言った。
「今、日本だけじゃなくて世界中が殺伐としているというか、不安な空気が漂っている気がします。僕はその原因の一つはSNSだと思います。（略）だから音楽だけは、明るく、包み込むようにありたいと思います。」（意訳）

ここ数ヶ月、世の中のざわざわが余計に聞こえてしまう人、世の中の色が見えてしまう人、世の中の負の空気が不味いと思える人にとってしんどい時期が続いている。たぶん、彼自身もそうなのだと思う。だけど音楽をやるという道を選んだ以上、そういう使命があると思ってやってるんだ、そういう覚悟があった。本当に格好良かった。

私はそういう人が作る音楽をずっと聞いてきた。ひな鳥が初めて見たものを親だと思うように、私はそれがJ-POPだと思っていた。それがどれだけ恵まれていたことだったか、英才教育だったか。22年目にしてようやく気づいた。

音楽は、ずっと、永遠にそうあるべきだ。みんなを守り、叱咤激励する、それぞれの味方であるべきだ。私はこれからもずっと、そういう音楽が鳴っているところにいたいし、鳴らしている人のそばにいたい。関わり方は変わってきたけど、音楽を始めてから一貫して、音楽を離さなかった私を誇りに思うし、これからも絶対にそうありたい、そんなことを思うライブだった。

今、このタイミングで山下達郎のライブに行ったことにとっても意味があったんじゃないかな、と思う。

そして私は母みたいな母になりたいな、と思うのであった。

以下雑記（セトリバレあり）
・嫁まりあのこと好きすぎ。かわいい。竹内まりあの曲歌ってる時が可愛すぎる。宣伝すんな。笑
・おふざけカバー集が非常に良い。
・大瀧詠一のカバー、一生やってくれ。
・季節問わずクリスマスソングはやっていい。
・硝子の少年毎回やってんの？世界で一番いいセルフカバーだと思う。
・演出がめちゃくちゃ昭和でいい。笑っちゃうくらい昭和だった。あと全体のノリとかも昭和だったからみんなライブ行ったほうがいい。人生って結構長いかもって思える。私は思った。もっと音楽と遊べるやんけってなんか安心した。
・実はもしかしてアーティストとしての知名度ってそんなに高くない・・・？一発屋に分類されてんの・・・？ってようやく気づいた。家庭教育は洗脳。

いいから全人類山下達郎履修しろ。