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感想「シメジシミュレーション 2巻」

先月27日、「シメジシミュレーション」の2巻が発売されました。面白かったので語ります。

・漫画紹介

紹介記事をリンクします。

以下、最新刊のネタバレ注意!

・いろいろな人

風紀……乱れてますね。

しめじちゃんもまじめちゃんも頭部に食べ物が乗っているという点で異常だと思いましたが……校内には二人のような人物がたくさんいるようです。それでいてそういうキャラ付けというか装飾がありふれたものだという認識はされていない辺り、世界観そのものが狂ってるわけじゃないんですよね。

変な人ばかり。

でもそれは、しめじちゃんだけが変ではないという事で、それはある種の救いなのでしょう。彼女の過去に何があったかは未だ詳しく描写されていませんが……不特定多数の相手に同族意識を感じられるなら、それに越した事は無いのでしょう。

また、この回は主要キャラとして、穴掘り部の先輩が登場しました。しめじちゃんやまじめちゃんに比べてまともそうな人物……かと思いきや、さらっと「スケッチブックが体から離せない」という強烈な個性の持ち主である事が発覚しました。比喩表現かもしれませんが、この回の流れからして……

やっぱ変な人なのでしょう。

・いろいろな言葉

まじめちゃん回……ですかね。

前回で穴掘り部最大のコミュニケーション能力の持ち主と評された彼女ですが、彼女自身認めている通り、コミュニケーションが得意なのではなく話しかけるのが得意というだけのこと。「話が出来る」ではないのがミソですね。

彼女もまた、コミュニケーション能力に難ありです。俗に言う「アッパー系コミュ障」というわけですね。自覚があるだけ良識的ですが。

「話が出来る」のと「会話が出来る」のとでは、まだ全然別のお話ですよね。まじめちゃんは会話が出来ない現象を「言葉が通じない」と表現し、精神的な孤独を噛みしめます。

友人関係、部活内の人間関係、家族との関係。同じコミュニティーに属していながら抱える疎外感は、ありふれた感情です。

そんなありふれた悩みに涙するまじめちゃん、真っ当で可愛いと思いました。

この回、先生とすみだ先輩の関係が少し気になりました。言葉が不得手で意味不明な表現方法を用いるすみだ先輩と、当然のようにそれを理解する先生。先生の方はかなり天然ですし、適当にやって偶然波長が合っているだけでしょうか。どちらにしてもしめじちゃんとまじめちゃん以外の登場人物間で意味深に人間関係が描写されたのはこの二人が初(当然ながらユーリ・チトの二人は例外)なので気になるところです。

・お隣さん

完全にゲストキャラのユーリとチトをメインに据えた回とは驚きました。「お隣さん」というポジションから、これからもちょくちょく登場してきそうですね。

しかしこの二人、前作よりも等身が高いですね。元々「少女」だった二人が大人として登場したからでしょうか。でも「少女終末旅行」のアンソロジーだと、原作の等身で大学生でしたね。しめじちゃん達が高校生だから、相対的に等身が上がってるのでしょうか。

前作のラストがラストだっただけに、登場するだけでスペシャル感溢れるこの二人、好きです。

・まじめちゃんの家

まじめちゃんのお母さん初登場です。

……

目玉焼き、乗せてますね。風紀の乱れを感じます。遺伝かつ生まれつきで頭に目玉焼きが乗ってる人間が普通にいるとは……世界観の歪みが現れています。

対するしめじちゃんの方は、遺伝ではないですよね。しめじちゃんのお姉ちゃんにはしめじが生えていませんし。だったらしめじちゃんのしめじは一体……とか考えたら負けなのでしょう。考えません。

っていうかそんな事より、思ったより普通にお母さん登場しましたね。前々回の描写から、まじめちゃんの家庭は何かしらの闇が潜んでいるのかと思いましたが……あんまりあっさりお母さんが登場するものだから失念しそうになりました。

よく家を空けるみたいな描写は一体何だったのでしょう。その辺りがフィーチャーされていくのでしょうか。とりあえず普通のお母さんっぽい風でした。

・図書室の人

ちょっと思ったのですが、この漫画って特にピックアップされていないモブキャラに結構尺使いますよね。

今回、しめじちゃんの席を占領していた三人組は、1巻でも美術の授業でやたら目立つ登場の仕方をしていました。

もしかしてわたしが知らないだけで、この三人はチト・ユーリと同様に前作登場キャラなんですかね。そういうのは一通り調べたので違うとは思うのですが……

まあそれはそれとして。

メインキャラっぽい図書室の人の登場です。正統派な文学少女っぽいキャラクター性に、頭に本が乗っているというイロモノっぷり。でもこの漫画じゃある意味正統派かもしれませんね。

図書室の人の枝理論、どこかで聞いた事があります。思い出せませんが……抽象的ですごく好きです。っていうか曖昧な事言ってばっかなこの人のキャラクター性が全部好きです。

・ショッピングモール

まじめちゃんはどんな格好をしても、目玉焼きが目立ちますね。

さらっと帽子の上に乗ってたり、不思議な引力を持っていたりと、目玉焼きの謎は奥深いです。

もしかしてこの漫画の主題って目玉焼きですか?

……いや、違うでしょうけれど。

・先生のかたち

先生は昔陶芸家だったようです。

すみだ先輩曰く「夢中になりやすい」という先生は、きっとそれだけ陶芸家としての活動に熱中していたのでしょう。少なくとも、すみだ先輩がその姿に心酔するほどに。

ですが今はもう活動を行っていないらしく、昔からの作品の扱いもぞんざいです。

現在の先生はお世辞にも情熱的な性格とは言えません。何か嫌な事があったのかもしれません。

そして代わりに、穴掘りに夢中です。図書室の先輩ことよみかわ先輩の言葉を借りるなら、「穴掘りのスペシャリスト」ですね。

輪っかが好きな先生が穴を掘り進める姿は、狂気的で好きです。

・穴ほり機

満を持してお姉ちゃん参戦です。

圧倒的な科学力をもって世界の原理を追い求めるお姉ちゃんは一体どこに向かうのでしょうか。

前回現れた謎の概念「なま魚」を使った永久機関を使って穴を掘るという、非常に抽象的な試みにより、穴掘り部の活動が終了しました。

いや、穴掘り部の活動も目的が無いという意味では抽象的といえば抽象的なのですが。でも先生にとっては、きっとそうではないのでしょう。

・地球ドーナツ

すみだ先輩が喋りましたね。満を持しての一言が「先生!」なのが実に彼女らしいです。

さて、ドーナツと化した地球の穴に落っこちた三人。衝動的な先生の行動とすみだ先輩の告白から、謎空間への突入。いよいよもって混沌とした状況に肝心のお姉ちゃんがいないのは、何やら因縁めいたものを感じます。

町に穴を空けた先生は、白いおまわりさんとやらに注意を受けます。先程のすみだ先輩の告白もあってか、「ほどほどにしないと」と反省したようです。

結局先生の心が救われたのかは分かりませんが……穴掘り部の活動は終わりのようです。これからは土器を焼く部にでもなるのでしょうか。

総評

……

この漫画、感想書くの難しいですね。

風呂敷の広がり方が多方位に渡る上、抽象的な概念が多数登場するので、どうも取っ散らかった感想になってしまいました。

でも今回は特に先生を筆頭に心情描写がとても綺麗で、読んでいてとても面白かったです。全編に渡って不安定な世界の中で、各々が無気力かつ絶望を抱えながら生きているダウナーな群像劇、素敵でした。

2巻の満足度:88/100

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