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感想「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! 喪183(前編)」

わたモテ更新日です。

前回・前々回と衝撃的な回が続きましたが、今回は果たして……

・前回の感想

感想記事をリンクします。

・喪183 モテないし台風が来る(全編)

以下、最新話のネタバレ注意!

今回のわたモテは、とある要素において極めて異質です。それを踏まえて、一度読んでみましょう。

・台風がやって来る

どうやら悪天候のようです。一コマ目から、既に普段あまり見られない絵柄で不穏な雰囲気が描写されています。あまりに唐突な始まり方ですが……作中では現在夏。台風が来ても不思議ではありませんね。

窓の外を見ながら通話するもこっち。そのお相手は……ネモです。

今回のネモの出番とセリフはこの初めのページの三コマのみ。ですがその三コマで、現状を十分すぎるほどに説明してくれました。

「予定通り」「みんな」などというワードから、どうやら複数人でもこっちの家に集まる予定だったようです。察するに、ネモと体験授業を受けた帰り道に話した「文化祭についてのミーティング」が実現したというところでしょう。そしてその予定は台風によって頓挫してしまったと。

「次会う時は学校」というセリフから、まだ夏休みの最中で、リスケの日取りを決めるまでもないほど最終盤に差し掛かっているという事も分かります。思えば喪165から始まった夏休み……実に18話。隔週更新である事を踏まえると、休載を換算せずとも9か月ほどの長丁場だったわけです。わたモテの夏で、わたし達は一体どれほどの元気と笑いを貰ったでしょうか。一つの時代が終わったような気分です。

と、夏休みの終了に寂寥感を覚えたのはまた別の話ですが……ここでのもこっちとネモとの会話のテンポはちょっとすごいと思いました。少々メタ的な話になりますが、一ページ目から最短で自然に状況を説明しています。これで次のページ以降、何の煩いも無く物語が楽しめるというものです。「読ませる技術」というやつでしょうか。さすがはプロだと敬服したいところです。

あとネモ、なにそのあざとさ。家で一人でいる時だというのにトレードマークのツーサイドアップはもちろん、ハイソックスまできちんと上げておしゃれして、ダメ押しにぬいぐるみまで抱いて通話って。えらく可愛いではありませんか。台風でどこにも出られない時分に、一体どういう了見なのでしょうか。誰かと会う想定をしていなくとも、気合を入れるタイプですかね? いずれにしても可愛いです。

ネモって可愛い系のキャラなんですよね。まだストーリーの本筋に絡む前から、クールでかっこいい系(当時は)の岡田さんとは対照的な「可愛い」タイプの見た目と口調でした。でも決して小柄ではないんですよね。むしろ平均よりだいぶ高い身長で、体格も他のキャラと比べてがっちり気味です。それでいて別にギャップとかミスマッチ感をこちらに与えてこないのが、なんだか不思議なキャラです。わたしは好きです。

というかネモに限らず、身長が判明しているわたモテの主要キャラは、わりとみんな背が高いです。成人女性の平均身長は158センチですが、同級生女子のほとんどがそれよりも上です。例外といえば、150センチにすら届かないもこっちと、155センチの小宮山さんくらいですか。

……なんでしょうね、数いるキャラの中でよりによってこの二人が弾かれるというのは、なんだか酷く恣意的です。いや、こんなの絶対偶然でしょうけれど。身長が判明していない中でも伊藤さんやキバ子なんかは多分こちら側のカテゴライズでしょうし。

最近この二人の絡みがあまりありませんね。ゆうちゃんを介してまた三人で遊んでほしいところなのですが。

だいぶ話が逸れてしまいました。元に戻します。

ともあれ文化祭の話は、次回以降におあずけのようです。台風が来たなら仕方がありませんね。この電話よりも前から中止の予定になっているようですし、今回は箸休め回ですかね……

と思ったら、誰か来ました。もこっちも驚いています。

・ゆり

ですよねえ。中止の連絡が回っていて、台風が来ている最中に敢えて家を訪ねてくるようなちょっとズレたムーブをしてくるのは、間違いなくこの人しかいません。

扉を開けたら無言のゆり。シュールです。

冷や汗を掻きながら無言で扉を閉めるもこっち。シュールです。

なんやねんこいつら。ゆりの無反応さに笑えます。いや、何故か握りこんだ拳を見ていると笑えなくなりますが。

この人、無言で殴ってくるから結構怖いんですよね。まあ大半の場合はもこっちが原因なのであまりにも自業自得なのですが……それを差し引いても尚、すごみというか迫力があるキャラ付けだと思います。

先程少し話題に出しましたが、ゆりもまた160センチとやや大柄な体格の持ち主です。大概のキャラに言える事ではあるのですが、もこっちとは10センチ以上差があるわけです。それで無言の拳握りしめは、さすがにちょっと怖いです。いや、もちろん二人が十分に気心の知れた仲だからこその挙動ではあるのでしょうが。

しかしここのゆり、なんで拳を握りしめてるんでしょうね。

もこっちが挟んだ一ギャグについイラっときた……というわけではないようですけれど。やる前から握りしめてますしね。

もしかして、緊張してます? もこっちの家初めてですものね。前々から、露骨に来たがってましたものね。そう考えると力んじゃうのも可愛いです。

さてもこっち。中止なのに来たゆりに首を傾げるという、至って真っ当な反応をします。それに対して「雨降ってないから来た」と返すゆり。会話しているようでしていないこの感じ、好きです。もこっちのためつきの「……そう」も好きです。呆れたような、そう来ると予想済みのような、微妙な反応。これが二人の空気感ですね。

・扉絵

これは……今回の話の後日談ですね。でも今回は前編で、後編は扉絵無いから……どういう扱いになるんでしょう。幕間って事ですかね。傘が傘の役割を果たさないほどの豪雨に濡れる二人。青春っぽいです。

・部屋

部屋に通されたゆり。物珍しそうに見ています。あまり友人の家に上がるタイプではないですし、他人の部屋に興味津々なのでしょうか。表情筋が少ないから感情が読めませんが。

「なんか部屋片付いてるね」から始まる世間話、ちょっと笑えます。お互い近いようで遠い性格で、お互いがお互いを「しょうがない奴」と認識しているためか、もこっちは偏見を押し付けがちで、ゆりは意地を張りがちです。どっちも微笑ましいレベルですけどね。

「きれいだけど」のフォントが一段濃いのが面白いです。ゆりの「~だけど」という口調はムキになっている時のそれです。こういう分かりやすさも含めて子どもっぽいのが良いですね。

・帰れって言ってるの?

ゆりはそういう事言う。

もこっちに他意が無いのが分かっているのかいないのか、時折棘を出してきます。しかしもこっち、全く動じなくなってますね。ゆりのこういうノリに慣れているのでしょう。あるいはこういうのに関してはゆりよりはるかに上の威圧感持ちの従妹がいるせいで動じなくなったのか。そういえばあの人、本当に夏来ませんでしたね。キャラクター的に一段落ついた感じありますし、もう出ないんでしょうか。そうなるとちょっと寂しいです。

・ゆりはミュージカル好き

勉強をしながら映画を観ると、そういう話なのですが……

もこっち……なんやねんその想像は。ゆりの事を一体なんだと思っているのか。大きく間違っていないような気もするから、余計に悪質で笑えます。でもゆりは音楽好きでしたね。作中のエピソードにはほとんど反映されていませんが、イヤホンをつけているシーンが多く、特徴的な嗜好です。ミュージカルが好きかはともかく、音楽が好きなのは間違いないでしょうね。

見る映画は「ダンサー・イン・ザ・ダーク」というそうです。

わたしはよく知らない映画なのですが……

もこっち曰く「救いようのない話」「めちゃくちゃ嫌な気持ちになる」「地獄」と、えげつない内容らしいです。悲劇モノという事でしょうか。もこっちはそういうの苦手そうですものね。

「もしもこれを皆で見た時」というもこっちの想像が滅茶苦茶笑えます。こんなん顔芸と言っても過言ではないレベルのインパクトですよ。いつもニコニコのネモの目がこんな風に死んでいるのはシュールです。加藤さんに至ってはブチギレじゃないですか。岡田さんもどこか劇画調だし……

っていうかなんでうっちーがいるんだよ! クラス単位の話し合いじゃないのかよ!

インパクト狙いで出したんじゃないでしょうね……? なんか伊藤さんをネガティブにしたみたいな顔になってますけど。

・智子と二人の時しか観ないよ

さすがにゆりにも分別はあったようです。もこっちだけはこの映画が本気で面白いと思ってくれると予想していたのでしょう。酷評を受けて少し悲しそうです。

そういえば以前にも、似たような話がありましたね。もこっちが面白いと言って真子に貸した、乙一の「幸せは子猫のかたち」がモチーフと思しき漫画を読んだゆりが、自分だけその面白さを理解出来ず疎外感を覚えてしまう……と。14巻の喪136「モテないし漫画を薦める」という回ですね。結局もこっちはゆりがその漫画にハマらない事を予期して、「GOTH」を薦めるという、二段構えで理解を示してくれたもこっちにゆりが涙するというオチが綺麗なお話でした。

その意趣返しとも言える今回、それが失敗したのはゆりとしては痛いでしょうね。

っていうか「GOTH」薦めたもこっちも悪いですよ。「GOTH」行けるならこれも……って思っちゃうじゃないですか。あれはあれで滅茶苦茶暗い話ですからね。面白い小説ではありますけれど。

「GOTH」も乙一先生の著作です。サイコパス染みた思考の主人公が、同じく危うい思考の持ち主であるヒロインと様々な殺人事件に行き遭う……というお話です。大抵の場合、殺人犯より主人公の方がやべー奴なので、普通じゃない展開が目白押しで面白いです。わたモテ感想の途中ですが、オススメします。

そんなゆりの心情を慮ってか、もこっちは外出の提案をします。

・コンビニへ

強風吹きすさぶ中、傘を持って出かける二人。地面に傘をズるもこっち、ゆりとは別ベクトルの子どもっぽさを見せます。ゆりは言動が子どもっぽいのに対し、もこっちは癖やとっさの行動が子どもっぽいという印象です。ゆりが傘をズっていないのが、キャラクターとしての二人の存在感を際立たせます。

さて二人、なんという事もない雑談を繰り広げますが、やっぱりここでもよくよく二人のキャラクター性が現れています。

・終末感というセリフ回し

「終末」という単語は、終末論や仏教、創作や歴史にある程度詳しくないと出てこない単語です。もこっちの漫画や小説の創作趣味をゆりが詳しく知らないという事、ひいては二人の違いが見て取れます。

・世界滅亡の願い

元ぼっちで世の中を恨んでいた背景からか、あるいは持ち前のノリからか、気軽に世界の滅亡を願うもこっち。これに同意するゆりは、おそらくその根底の理由までもこっちと類似しているのでしょう。二人のある種自棄的な要素がかみ合った会話です。

・世界で二人

霧に包まれ、世界が閉ざされたような描写が綺麗です。そしてここでも、二人の意識の違いが見えます。

ゆりはもこっち以外要らないという極端な偏愛志向。対するもこっちは周りを見て安心したいだけのセリフです。

現実的なのはもちろんもこっちの方の主張ですが、ゆりの思想が間違いだとは言えません。こういう「重さ」は田村ゆりというキャラクターの最大の魅力の一つです。他のキャラにはないストレートな重さは、アンニュイで退廃的で、心地よさを覚えます。

そしてその種の重さに鈍感なもこっち。いいコンビではないでしょうか。

さて、コンビニについた二人ですが……

・豪雨

本降りになってしまったようです。もう帰れないのではとゆりに言うもこっち。もこっちはゆりの家の場所を大まかに把握しているのでしょうか。少なくとも公共交通機関を使わないといけない距離なのでしょう。

さらっとゆりを泊める約束をするもこっち。誰かを家に上げる事はあれど泊まらせるのは初めてです。家への訪問は出遅れたものの、わたモテ始まって以来の快挙を成し遂げたゆり、さすがです。

そしてそれを予定調和としてしっかり準備してきたゆり、さすがすぎます。

思えばDVDの件も、二枚あるような節のセリフでした。もこっちと観た映画は他の人とは観ないと言っていたので、ゆりは「もこっちと観る用の映画」と「みんなで観る用の映画」を両方持ってきたというわけです。万が一中止になった話し合いに、誰かが来ていたの時の保険なのでしょう。であればお泊りの準備も万が一のためなのでしょう。キャラに似合わず用意周到です。

・次回に続く……

あまりに唐突なカーテンコール。まあ前後編だからそうですよね。しかし次回、どういう展開に話が転がるのか……想像だに出来ません。気になって仕方が無いです。良いヒキでした。

総評

……

…………

……………………

気が付かれました?

今回、

下ネタが無いのです!!!!!

このわたモテという漫画にしては、非常にレアな事です。

直近だと喪180の神社回とすぐ手前の回にありますが、それ以前となると喪165まで遡ります。ここ最近のわたモテにおいて下ネタ無しの回というのは、それほど珍しいのです。

……もしかしてニコ先生、「海浜秀学院のシロイハル」で発散してます? あっち、ものっそいハードな下ネタですもんね。最新話、えげつなかったものね。まあそれならそれで、今江先輩の回にもうちょっと手心を加えて欲しかったものですが。

ともあれ、清純な回でした。

喪183の満足度:89/100

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