見出し画像

西尾維新『屋根裏の美少年』その5 ステルスリアクション・エクストラ106

(ステルスリアクションとは、見えないリアクションである。表向き別の事を表現しているように見せながら、同時に、特定の何かに対するリアクションとしても意図された、そのような表現方法なのだ)

(ご注意・本稿では西尾維新『屋根裏の美少年』のネタバレを含みます。閲覧の際にはあらかじめご了承ください。表紙画像と本文は一切関係ありません。また、登場人物や組織の実名は伏せられている場合があります。そして、明かしづらい内容は不明瞭な表現となっている場合があります)

前回はこちら(関連リンクは末尾を参照)。

また本稿においては「西尾・忍殺」を重要な関連資料として参考して頂きたい。


・・・

・批判、風刺、メッセージ性

歴史寓話上の特徴各種。こういう直接的な言及によって意図を示す方法もある(一方で、そう見せかけて作者自身実際にはさらさら思っていない、という詐術に利用する手もない訳ではない{もっともその場合、いざという時の作者の態度からそうと分かるだろうし、普段の態度からも内心を隠しおおせるとは限らない。また官憲相手にその内心を明かしたところで通じるという保証もないため、やはり本気でもなく馬鹿でもないならそれなりの「抑制された」表現になるのではないだろうか})。


・・・

・なめた態度への報い
・食という分野を管理している人間を敵に回す恐ろしさ
(供給源)

必需品の生産元って言わばそれによって養われている人間の生命線そのものだから、そこがどうにかなったら頼ってる人間ももタダじゃ済まないはずなのに、それが分からずろくでもない事をしでかして供給ストップされたらどうするんだろう、と思わなくもない。


・・・

・(カワバンガ!)(ゴウランガ?)

参照。忍者タートルズの「カワバンガ」と双方ニンジャという事で、ニンジャネタの引用かと。

これもまた色々と変遷を経た、文化、場所、時代、を移しつつ変形してきた言葉で、そのイメージは歴史寓話やステルスリアクションのコンテクスト、ヴァリエーションのイメージとも重なる。

・・・

・夢想的な推理(デタラメ)

僕のやってる事はそう見えるよね、って反応(反応される時点で「そうじゃない」って分かる奴)。


・・・

・本歌取り
・悪のり
・工夫して、決してよくなっているわけじゃあない

僕のプランとベータロンのプランとどっちが本歌だとしても、どっちも取られて頓挫してるんだよねー。僕は予め別のプランいくつも用意してたから切り替えで済んだし、誰ともどんな約束もしてないから自分ひとりが諦めるだけでよかったんだけど。ま、それでグレード下がっちゃったにしても、最低限の事をやり遂げる条件は消えるもんじゃないしね。


・・・

・『元通りに描いていたら、もっと良かったのに』
・描きやすいように描いた
・『苦手なものは描かない』という感性
・美しくない

こう見るとベータロンの計画の方が「本歌」扱いだったみたいね、どうやら(まさか僕に「お前は奴隷になるべきだったのだ」とは言わんだろう)。きちんと話聞いてくれたり少しずつ信頼関係醸成していける人だったらもっと違ったんだけどなー、いやホントにホントにマジでマジでー。

仕事上でも、ひとりの人間の売り方、育て方って考え押し付けりゃ勝手に上手くやるようになって手柄転がり込んでくるってもんじゃないでしょう。


・・・

・一般人に理解できてしまうという時点で、それは難点
・専門分野
(視力)

解説不要のものっていうのは「抜群に凄い」「圧倒的に優れている」以外ではそこまで高度でもなかったりするみたいで、そういうのはどの業界でもあるらしい。これが行き過ぎると「それマニアや業界人以外誰が気にするの? 普通の人相手の商売でそのクオリティいらなくない?」って思えなくもない(圧倒できないなら中途半端に高度な事はせんでいいとも言えるし、それでもプラスアルファでマニアを唸らせるものを入れるのも腕の内とも言える)。


・・・

・歴史的な名作を鑑賞することは、天才の目を通した世界を見ることかも

僕の鑑賞経験から言うと、天才が何を見て、それをどう表現するのか、その手際と工夫が見える時があって、そういう経験を通じて自らの活動が充実していくようなあり方がひとつの形としてあるのかなーとね。




(続く)

☆ ☆ ☆ ☆

関連リンク

西尾維新を読むことのホラーとサスペンス、ニンジャスレイヤー、そして批評家の立場と姿勢の話

西尾維新篇

第1話「ゼロ年代の終わりに」(約1,600文字)

第2話「西尾維新からの応答」(約3,200文字)

ニンジャスレイヤー篇

第5話「『ニンジャスレイヤー』をオマージュする西尾維新」(約2,600文字)

策謀篇

第6話「過渡期の人」(約1,900文字)

第7話「茶番の始まり」(約1,800文字)

第8話「違和感の塊のような」(約2,100文字)

第9話「地雷と第二次性徴」(約2,200文字)

第10話「アメリカンなジェスチャー」(約3,500文字)

第11話「俺に合わせろ」(約2,900文字)

第12話「物語の終わり」(約1,800文字)

第13話「閉じろ、その地獄の釜の蓋を」(約3,200文字)

昇華篇

第14話「『天狗の国へ連れてゆく』」(約1,700文字)

批評篇

第15話「『どうだ ピンク色の光が見えてきたか?』」(約2,300文字)

第16話「『やめろ!俺の頭から出て行きやがれ!狂気め!』」(約2,800文字)

第17話「『消えろ』‘彼を呼ぶのだ!’『消えてくれ』」(約2,400文字)

第19話「『俺は向こう側に、天狗の国に行かなきゃならねえ』」(約3,400文字)

☆ ☆ ☆ ☆





#批評 #コラム #ステルスリアクション #小説 #西尾維新

この記事がお気に召しましたら(いくらでも構いません)サポートをお願いします。サポートして頂けた分は資料購入などに充てさせて頂きます。増えれば増えるほど、活動内容・記事のグレードがアップするはずです。是非。