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”自分ごと”のまちに踏み出せば、不安な心は前向きになれるかもしれない。〜まちを動かすオトコたち! イベントレポート〜

必要十分なものは周りに揃っているんだけれども、不安に思うことがあります。自分はこれでいいのか?何がしたいのか?これからどうなっていくのか?

とにかく早い世の中の流れの中で、言葉にできない小さな不安を見て見ぬ振りしながら、毎日必死に生きてしまう。

「これ、この先どうなるの?」

いつの時代もそうだったかもしれません。でも、今ってなんでも調べれば出てくるし、わからないことが怖い気がしませんか。
世の中ではいろんな現象に名前が付けられて、男女共同参画だとか、LGBTとか、男とか女とか、ごっちゃごちゃです。そうやって、いろいろなものに名前をつけるのは、きっとみんなが何かに怯えているからなんじゃないかなって思うのです。

そんななか、攻めたタイトルのイベントに行ってきました。


まちを動かすオトコたち。」
twitterで叩かれそうな名前...。でも、堂々としてていいなと思いました。

実際の中身もさらに堂々としていて清々しいイベントだったので、ちょこっとだけお見せできたらと思っています。けれども、すごい情報量でとてもじゃないけど全部書いたらパンクするので、

 ”漠然とした不安を抱える私にとって、ヒントになったこと”

を中心に、ご紹介したいと思います。

まずはイベントの概要から。

男女共同参画は、”まち”から始まる

「まちを動かすオトコたち!」のイベントを企画・運営していたのは、武蔵野市を中心に市民活動を繰り広げるパワフル集団の作ろう!
みんなのジモト Wa-shoiパートナーシップ
の皆さんです。
Wa-shoiを立ち上げた市川順子さんは、「武蔵野市男女共同参画フォーラム2019」で今回のイベントを企画した理由について、こう話していました。

『男女共同参画』というと、マイノリティの話になってしまって、あまり盛り上がらないんです。それに、まずは土台となる地域社会の中であったかいコミュニティが広がっていかないと、男女共同参画というテーマを話しても進んで行かないと感じています。だから私たちは、もっとコミュニティの中でみんなでワイワイ話しができるイベントにしました。
今回「オトコ」に注目したいのは、そもそも今の市民活動は女性と高齢者が中心で担い手不足と言われているおり、組織に属さない働きざかりの個人の男性がまちを盛り上げている様子をたくさんの人に知ってもらいたいという思いからです。
ただ聞くだけでなく、ぜひ、まちづくりに参加してください!

たしかに、男女共同参画のようにたくさんの人々で話し合いをしなければならない時、そもそも話し合いができる土壌がなければ、重たい課題がのしかかって折れてしまうだけに感じます。

まずは、話し合い、一緒にまちをつくっていこうというスタンスを市民に持って欲しいという想いから始まったのですね。

続いては、注目のゲストトークのセッションへ。
登壇してくれたゲストの方は3名でした。

〜 小平、三鷹、武蔵野 〜3つのまちでおきていること

多摩エリアの3つのまちで、それぞれの視点からまちに関わっている方々が、活動の根源となる想い、これまでの活動事例、そしてこれからの活動について話してくださいました。

出口みちたか さん(小平市):写真右上
「東京に"ふるさと"をつくるひと」
https://www.facebook.com/deguchi.foobar
1980年生まれ 新潟県長岡市出身 小平市在住。IT系企業でシステムエンジニア職に従事。36歳の時、定年退職に向けた30年計画の地域デビューをしようと思い立ち、「東京にふるさとをつくる」をテーマに小平市で地域活性化プロジェクトを開始。公園や商店街を活用したコミュニティマーケットや、まちの交流イベントの開催を通じ、「個人が活躍できるまち」の雰囲気づくりを目指す。
山崎光 さん(三鷹市):写真左
「防災団体やろうよ!こどもぼうさい代表」
三鷹市を中心に、子ども向け・親子向けの防災イベントや講座を企画。楽しく防災に触れることができる「みたか防災マルシェ」の企画を立ち上げ、三鷹市内の有志で結成した実行委員会と一緒に3月10日に初開催。また、全国の災害関連地を取材し、災害を経験して防災に立ち上がっている方たちからの温かいメッセージを伝えるドキュメンタリー映画『いつか君の花明かりには』の監督でもある。
舟木公一郎 さん(武蔵野市):写真右下
「シェアキッチンMIDOLINOオーナー」
http://midolino.tokyo/
石川県金沢市出身。北海道大学経済学部卒業。
一般社団法人フラットデザイン代表理事。シェアキッチンMIDOLINO_(ミドリノ)代表。
想いがあれば実現できことはないという信念のもと、グラフィックから映像、音楽、造形/内装に至るまで、デザインと名のつくものは何でも手がけるナリワイづくり実践者。社会的な課題に挑戦する中小企業を中心にブランディングデザインに長年従事するも、受注仕事は所詮他人事であることを痛感。自分ごととして「新しい選択肢」をつくる決意をし、2017年、個性を活かした仕事づくり/協業をテーマにした食のシェアオフィスMIDOLINO_を開設し、リノベーションまちづくりを実践。

災害への恐怖は、向き合うことから

さて、冒頭にはじめたように、ここからは”漠然とした不安を抱える私にとって、ヒントになったこと”を深めていく形で、お三方のお話を共有していきたいと思います。

まずご紹介したいのが、三鷹市で防災活動をされている山崎さん

山崎さんは、もともと「防災」というワードが苦手で、できるだけ耳にしないようにしてきたのだとか。しかし、山崎さんの娘さんが災害をとても怖がり、その度に「地震は来ないから大丈夫」と言っていたのだと言います。言いながらも心の中では災害に対する不安は広がり、

山崎さん きちんと、災害から命を守る方法を伝えるべきだと、思ったんです。

そこから、被災地の方々の声や備えることの大切さを、脅しやお涙頂戴な形ではなく、あたたかいメッセージとして紡いだ「いつか君の花明りには」という映画を制作します。

できるだけ”楽しく”防災を伝えていきたいと語る、山崎さん。

山崎さん 防災は”楽しく”やるもんじゃない、真面目にやるもんだっていう厳しい声も聞こえてきます。でも私は、まずは防災に興味を持ってもらう入り口の部分を担っていると思っていて、これ以上、防災に苦手意識を持つ市民が増えないようにしたいと思っているんです。

山崎さんの娘さんのお話を聞きながら、私も災害や事故に対する恐怖が強く、もう両親が帰ってこないのではないか、今日何か起こるのではないかと怯えていた時期を思い出しました。

そんなことを不安に思っていたのでは暮らしていけないと、半ば強引に恐怖心を引き剥がして生きていますが、本当にしなければいけないことは、向き合うことなのかもしれません。

家に帰って、何かあったらどこに避難して、どうやって家族と連絡を取り合うのかを確認する。それだけで、1つ小さな不安はなくなる気がします。

苦手なことはまわりに頼れる自分、であること

山崎さんのお話から、もう1つ学んだことがあります。
それは、まちづくりでも、会社でも、どんなことでも、全てを自分ができてしまう必要はないのだということ。

リーダー気質や企画屋さんといった、人を引っ張っていく素質がなくても、違うアプローチで人を巻き込みながらものごとを進められるのだということです。

山崎さんの雰囲気はとても優しく、お茶目さと大きな心を持ったお父さん、といった感じ。ガシガシ企画を立ててディレクションして進めていくようなイメージは持てず、どうして「防災」という難しい活動を三鷹で盛り上げられているのだろう、と少し不思議に思っていました。

そのヒントは、山崎さんの姿勢にありました。

山崎さん 今までイベントをやったことがなかったので、防災のイベントを始めるときはたくさんの人に頼ってやっていかなければならなかったんです。そうしていると自然と、人と一緒にやっているようになりました。巻き込むより、頼ることで人と繋がっていったんですね。

時々、自分のリーダーシップのなさや経験のなさに自信を失うことがありますが、山崎さんはそういう自分の素質をプラスに捉えて、違った関わり方で多くの人と一緒に企画を作っているのです。

山崎さんは、三鷹で「やろうよ!こどもぼうさい」の代表として、防災に気軽に触れることができるフェスやイベントを企画しています。

大学生と一緒に運営をしたり、名古屋まで活動域を広げたりと、山崎さんの防災への想いは確実に広まってきているように感じます。

楽しさドリブンで走れ!!!

続いてご紹介するのは、小平市で旋風のごとく皆をあっと言われるイベントを次々と企画している、出口さん

出口さんは、IT企業に勤め家と会社の往復だけで過ぎていく時間に、疑問を持ったのだとか。働き方改革や教育改革、デジタル業界の猛烈な発展を前に、このままではまちは消えてしまうと焦りもあったと話します。

出口さん 人口減少と、デジタル社会に備えた、まちの生存戦略をやらなければ、と思いました。そのためには、とにかく”自分たちで、自分たちのまちをDIYすること”だと思ったのです。

出口さんは「ふるさと30年ビジョン」を掲げ、まちのあらゆる場面でやりたいことを50個リストアップ。(50個!!!!)日本中でやりたいことを50個あげるにも苦労するところを、1つのまちでと考えるとなると、深くそのまちのことを考え、いろいろなフェーズでやりたことを考えいくことになります。

その50個のうち、どんなことをやってこられたのかというと、

・イベント「グリーンリビング」
・ブルーベリー摘みツアー
・マチカン!気軽に飲みに行けるコミュニティイベント
・イベント「学園坂ストリート」
・タコス好きと、まちにタコス屋さん
・ネオふるさと村

などなど…。

会社もあって忙しい中で、どうしてここまでいろいろなことができるのでしょうか。

出口さん 何をやろうかと考えるときに、もちろん土地の文脈から外れ過ぎないことを考えるのも大切にしていますが、自分が楽しいと思うことをやっています。とにかく、おもしろドリブンですね。そうしないと続かないですから!

どれだけ意味があると論理的に説明できても、自分がやっていて楽しくなかったら続かない。

何もかもが楽しいこと、という訳にはいかないかもしれませんが、”自分のおもしろドリブン”は何かを考えてみるだけでも、アクションへのモチベーションが変わるかもしれません。

厳しい意見は、むしろ追い風にする

お三方みなさんに言えることではありますが、まちで何かをするとき、ちょっと怖いのが「風当たり」。まちに限らず、会社組織やコミュニティの中でも、新しいことを始めると多少の風当たりがあるはずです。

そういうとき私は、「ああ…何か思われてる…。どうしよう」と縮こまってしまうのですが、出口さんはどうされているのでしょうか。

出口さん とにかく、追い風しか見ないようにしてるんですよね笑。あと、厳しい意見を言ってくれる人は意外とちゃんと考えてくれている人なので、むしろ追い風だと思うようにしています。とにかく、3年続けてみたら、変わると思っています。

う〜む。おっしゃる通りですね。
今まで長年何かしらのルールや空気感が保たれながら動いてきた場所で、全く違う新しい風が吹き始めたら、構えてしまう人がいたり、反発する人がいたりするのは当たり前のこと。

そういう風に当たったとき初めて、「自分は何がしたいのか」を明確に説明したり、自分なりに見つめ直したりできるのだと思います。

むしろ追い風だと思えば、向かい風に当たったときの不安も薄くなるのではないでしょうか。

レンタルから、シェアへ

いよいよ、3人目のご紹介です。
最後は、武蔵野でシェアキッチンMIDOLINOオーナーをしている舟木さん

舟木さんの言葉の節々からは、「自分ごとにして」暮らすことの楽しさと可能性と、だからこそのライブ感を感じるのです。舟木さんは最初に、レンタルとシェアの違いについて説明してくださいました。

今、UberやAirbnbに始まり、様々な「シェアリングエコノミー」が生まれています。しかし舟木さんは、それらは「ネオ」レンタルエコノミーであり、本当の意味のシェアではないと言います。

舟木さん シェアというのは、誰かを信用する気持ちがあって初めて成立するものなのではないかと思います。そう考えると、上のサービスで信頼関係があるのは、シェアリングをする人々同士ではなく、消費者とプラットフォームです。それは、本当の意味での信頼関係を育む関係とは言えませんよね。

たしかに、私たちはUberの運転手を信頼しているというより、Uberのシステムを信頼してお金を支払っています。それはシェアというより、レンタルの感覚です。

舟木さん MIDOLINOは、レンタルキッチンではありません。シェアキッチンです。だからそこでキッチンを使う人たちは、僕やMIDOLINOから場所を借りているのではなく、他のユーザーさんと一緒に場所をシェアしている、自分ごととして共有しているのです。

シェアすることって手軽で、なんなら節約できて、便利だというイメージが浸透してきた最近。しかし、本当の意味でシェアをしようと思ったら、シェアする相手と向き合い、自分ごととして関わっていかなければならないはずです。

シェアとレンタルがごっちゃになってしまっていたことに気がつき、ハッとしました。

同時に、自分が不安を覚えるのは、「レンタルな関係」の時だと思ったのです。信頼関係は薄く、表面上のメリットや金銭面のやりとりだけで物事が進んでいく状態に、雲をつかむような不安を覚えるのだと。

”自分ごと”から仲間ができ、地域で仕事をつくる

舟木さん ”自分ごと”として関わるようになると、一気にその場所は盛り上がるんです。その場にいる人同士のシナジーも起きやすくなり、コラボ商品をつくったり、一緒に売り先を開拓したり、さまざまな活動が勝手に起こり出します。

MIDOLINOでは、複数の食品製造許可を取ったキッチンが並び、パン屋さん、お菓子屋さん、おかず屋さん、ビン詰めなどなど、普段は関わらないような作り手たちが交わり、お互いの製品に意見交換をしたりしているのだと言います。

場所を借りているのではなく、その場に集まる人々と一緒に使っているという意識を持つことで、他人ではなく仲間だと感じられるようになるのではないでしょうか。

自分で全部責任を背負って仕事づくりに挑戦することには、リスクがあるし不安をつきもの。そういう場所で仲間が得られ、一緒に高め合っていけると感じることができたら、心折れそうな時も前向きに進んでいけると思います。

舟木さん 特に、地域のお母さんたちがやっている居酒屋がすごいんですよ!

その居酒屋さんの日には、お母さんたちが元気にもてなし、学区を超えた保護者や親父の会、こども達の交流の場になっていると言います。

地域のお母さんがたちが、自分のなかにある何かが人に喜んでもらえると感じ、一緒にやっていく仲間との関係性を深めながら、自分自身の自立と地域での暮らしをつくっていく。そんな循環が、MIDOLINOからはじまっているのかもしれません。

私もフリーランスになって数ヶ月経った時、会社の同期という存在がとても恋しくなりました。周りはクライアントだらけ、一緒に仕事をする人も、気がつけば仲間というより仕事をくれる人という認識に。
一定のラインで関係性に線引きをしたくなり、どんどん不安になっていたことを思い出します。

全ての物事に「自分ごと」として関わるのは、最初のうちは難しいかもしれません。けれど、自分ごととして関わらないと始まらないこと、生まれない関係性もあるはず。

最後に、舟木さんが目指している武蔵野のまちの姿を教えてもらいました。

舟木さん 武蔵野ならではの、それぞれの「個」が輝く場所。決意を持ってナリワイをつくり、パートナーとの関係性が深まり、人間味が溢れて信頼関係ある暮らしを自分たちでつくっていく。そんなまちにしていきたいですね。

繋がっても繋がっても不安な心は、自分のまちで”シェア”をすることで前を向けるかもしれない

さてここまで、イベントの様子を私なりの問いとともにお送りしてきました。

ここまで読んでくださった方は、ふ〜っもうお腹いっぱい。というところでしょうか笑。
約6500字、読んでくださりありがとうございました。

正直、イベント自体のインプットはかなり多く、どうやってまとめたものか...と思っていました。

イベントの後、打ち上げをしてからの帰り道。モヤモヤ〜っとしていた心を感じ、なぜモヤモヤしているのか?と自分に問うたところ、

なんか、最近ずっと不安だったんだよね。それが、今日色々聞いたことをやってみたりしたら、いいんじゃないかなって思って。でも、、、まだ頭が整理できてないから、書きながら整理して欲しい!

と答えが返ってきました。

と、いうことで、このレポートは全くもって誰かにイベントの様子を事細かにお伝えしようとか、熱量を届けよう、というものではなく。

私の不安な心を、このイベントを通して学んだことを整理することでちょっと前向きにしてやろうと、そういう訳でした。

こんな機会をくれた、Wa-shoiの市川さん、宮坂さん、山田さん。そして登壇者の出口さん、山崎さん、舟木さん。ありがとうございました。

さあ今日も、自分のまちで、自分たちらしく暮らしましょう。




言葉で、日々に小さな実りを。そんな気持ちで文章を綴っています。