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漫才の優等生が「パッション」を手に入れて最強の漫才師になっていく話~episode.0~

 11月5日(金)の20:45から、丸亀じゃんごの単独ライブがありました。いつもの通り新ネタ6本の漫才ライブです。

 丸亀じゃんごの良さと言えば、「漫才が上手」「安場さんの演技力が高い」「寄席に強い」などが挙げられ、いわば「漫才の優等生」と言っていいのではないかと思います。丸亀じゃんごといえばの「そんなことある?」シリーズや初めてシリーズは、今回もますます磨きがかかっていました。このあたりのことは、前回の単独ライブの感想noteに書きなぐっているので割愛します。

 今回の単独ライブは、6本中4本がしゃべくりを取り入れた漫才でした。漫才コントを得意とするコンビとしては、挑戦的な構成です。それに加えて、今回は私が今まで観た単独の中で一番「パッション」を感じました。
 例えば、2本目の「宇宙人」。もし宇宙人がやってきたらという設定で、安場さんが宇宙人役をやるのですが、北村さんが「そんなのは宇宙人じゃない」と言って何回もやり直しさせます。初めは安場さんの宇宙人の演技がボケとして面白いのですが、だんだん北村さんの異常なまでの宇宙人へのこだわりが面白くなってきます。安場さんも宇宙人を見たことがないのに北村さんにダメ出しをされ続けるので、だんだん苛立ちを隠せなくなります。そして最終的には、「宇宙人役をちゃんとやれ」という北村さんと「宇宙人を見たことがないから分からない」という安場さんで怒鳴り合いが始まるのです。
 丸亀じゃんごのネタで、2人が怒鳴るほど感情をぶつけ合うものは観たことがなかったのでとても新鮮でしたし、感情を剥き出しにした2人がこんなに面白いとは思っていませんでした。

 そもそも、漫才で一番強いのは「感情をストレートに相方とお客さんにぶつける」ことだと思っています。ボケなら「この人は本当にこんな変なこと思ってるんだな」、ツッコミなら「この人はボケに対して本当に困惑している/苛立ってるんだな」と思わせたら勝ち。世の中には作りの細かい漫才や、動きで魅せる漫才など、色々な種類の漫才がありますが、結局人間と人間の感情のぶつかり合い、いうなれば「パッション漫才」が客席にバチっとハマったときには、そういう漫才は手も足も出ないと思います(有名なので言えば2005年のM1のブラマヨみたいな。ただパッション漫才が綺麗にハマることも奇跡に近いので、他の漫才に勝ち目がないわけではないと思います)。

 丸亀じゃんごに関しては、もともと寄り添うようなツッコミが多かったり、感情が出るとしてもあくまで役の中でのことだったりして、2人の素に近い感情が表に出ることはこれまで少なかったです。ただ、たまに「イケメンは得してる、ブスは損してる」とか「イケイケ集団のバーベキューの何が面白いのか分からない」といった題材で、主に安場さんがボヤく漫才はありました。また、2人がお酒を飲みながらトークしているYouTubeでも、最近あった出来事で2人が文句を言っているシーンがありました。私は行儀の良い丸亀じゃんごはもちろん、悪態をついている丸亀じゃんごもかなり面白いと思っていて、2人のそんなところを漫才にしたのも観てみたいなと思っていました。そんな願望が、今回の単独ライブで叶ったのです。

 宇宙人のネタ以外にも、2人の感情が乗りに乗ったネタをたくさん観られました。恐らく2人にとってはかなり挑戦的な漫才だった分、こういうの慣れてないんだろうなと思う部分もありましたが、そこは漫才の上手い2人のことですから、続けていくうちにちょうど良い所を見つけていくだろうと思います。もしかしたら「やっぱり素の感情を出すのは自分達には合わないからやめよう」となるかもしれませんが、一旦この単独で出せたのはとても意義があることだと思っています。

 もともとの武器である漫才の上手さ、老若男女にウケるネタに加えて、パッションを身につけたら丸亀じゃんごは最強の漫才師になるんじゃないか、その扉が開く瞬間を見たかもしれないと思った単独ライブでした。


※この文章は丸亀じゃんごの漫才が大好きな私が、パッションのみで書きました。