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木のぼり

来豪まもない頃
「ここで何がしたいの?」
とホストファミリーから質問された。

家庭料理を学ぶという名目で
派遣会社に斡旋されて滞在していたのだが、
それ以外の理由を尋かれていることはわかった。

返答に困って
「木登りとか?」
などと頓珍漢な返事をしたことを覚えている。

なぜそのような質問を受けたのか、
当時は理解できなかった。

彼らは
「私が海外で生活をすると決めたこと、
 それ自体が冒険であり
 挑戦してみたかったこと」
だという認識がなかったのだと思う。

そして私も、それが当然の理由すぎて
説明できなかった。

(結婚もしているような)大人は、
専門の勉強をして、
将来に役立てるために行動をするものだ、
と思われていたのかもしれない。

また
「日本を離れたのは、何か困ったことが
 起きたからなのか?」
とも聞かれたように思う。

日本での人間関係は良好、
何も困っていなかったので、そう返答すると、
少し不思議そうな表情をされた。

もしかしたら、私の英語が驚くほどつたなく、
なのになぜ海外に出ようと思ったのか、
という純粋な疑問が湧いたのかも。

結婚しているのに、わざわざ別で暮らすなんて、
と思われただけだったのかも。

お互いに甘えないように(特に私)、
バラバラの生活を選んだのだけれど。

別の場所、別のタイミングで、若い女の子から
「なぜ地元を離れたの? 私には考えられない」
と言われたこともある。

中高生の時から、
私は、一度は実家を離れるべきだ
という意識があったので、
進学で日本海側から太平洋側へ引っ越しをした。

地元は好きだが、
ずっと地元に残るってどんな感じだろう、と
なんとなく思う。

新しい土地に引っ越すと、
1からのスタートだ。

嫌でも自分と向き合ったり、
謙虚になったり、
マイノリティな気分にもなる。

普通に問題なく生活していたら
どうしても横柄な気持ちというのは
発生してしまうので、

戒め、
という意味でも
自分には必要なことなのかもしれない。

将来日本に戻ったとしても、
どんな未来が待っているのか
全くわからないので、

そのための準備をしている
とも言える。

自分が人生を終えるころ、
高いところから見下ろすように
自分の一生を振り返るのだろうか。

そうであれば、
少しでも
人のことを考えようと努力した
と思えるといいな。

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