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お題クロスロードの鳥2000字以内「掴む1」「掴む俺side」

 お互いの心と体が交差し、その中心にいるクロスロードの鳥を掴まえることが出来るのか?もう見ない振りして通り過ぎたくない。
 あなたとは立ち止まり、見つめあいたい。そしてできることなら寄り添い同じ道を歩きたい。
なのに、決して迷うような道ではないのに。何故……私たちは交われない? 一度掴み損ねた事があなたを臆病にしている。
だから? それが何? 私は、
私であって他の誰でもないのよ。
それでもふたりで掴む事がそんなに怖い? 貴方の戸惑う手が嫌い。その手で触れられると苦しくて私は震えてしまう。
 クロスロードの鳥を手に入れれば、永遠に愛は醒める事は無いのよ。
「判っている」 答えは何時だってそれだけ。
想いを繋ぎ止めるだけなら、そんな鳥いらない。
一層醒めてしまえばいい。
 ああ~噓よ、噓! 乾いて萎れる花のように項垂れている心が騒いで収まりがつかないの! 待ち伏せ為たんじゃない。
逢いたくて、ただ触れたくて。
 あなたの少し驚いた表情と微かな微笑みが、私を誘拐犯に仕立て上げる。

「どうした? 何故……」
聞こえないふりをしているんじゃない。苦しいくらい嬉しくて……
あなたに逢えない私の心は、いつだって迷い、はらはらと泣いているのを知ってる? ううん知るわけない……私は何時だって優しい女だものね。
今夜は敢えて確かめもしないで踏み込もう。唐突に。少し乱暴に。

「帰さない!!」
「……帰らないよ……泣かないで」
「泣いてない……泣く訳ない……」

欲しい、欲しい、貴方が欲しいと耳元で囁く。

あなたは何も言わず私を貪る。

ねえ、聞こえる? この鼓動が!
こうして欲しかったってそう言ってるのよ。

もう見失いたくない。
もう離したくない。
「貴方と歩きたい」

「掴まえに行くよ」 
「えっ?」
視線を絡ませ抱き寄せられ
心と体がお互いを強く求め合った。クロスロードの鳥を

もう愛は醒めない。

永遠に。

俺side◆◆◆

 俺はどうしようもなく臆病になっている。
愛なんて俺にはもう必要ない。
 信じていた。愛していた。
それが、その全てが突然消えた。
取り残された世界を俺は眺めただ笑う。目の前に映る辛辣な痛みを嘲笑うんだ。痛いほど惨めなひと言だった。初めで知ったよ。足元が崩れ堕ちる感覚を。ガラガラと音を立てるってまさにそれだった。もう無理だ、信じるから馬鹿を見るんだ。ただ通り過ぎるだけの相手で良い。決して心は交わらない。
 四方から、それぞれの道を歩いてきて、ほんの一瞬重なりそして離れる刹那の関係……気楽で良いじゃないか。そうやってのらりくらり生きて来たのに……事が起きれば逃げるが勝ちだよ。後で泣いている女がいても……信じる方が悪いんだよってな。なのに出逢ってしまったんだ君に。
その瞬間心が震えた。
でも、絶対認めたくなかったよ。
それが俺の本音だった。
 目の前には細い十字路が頼りなく解りきった明日を指している。その道をひとり歩き出す事に躊躇している俺を、君はじっと見つめていた。優しい君は俺を尊重し、おずおずと近づいては、また距離を取るんだ。
「何も話さなくて良いから。傍にいさせて。抱いて終わりは嫌」
「そんな事しないから」
嘘じゃない。嘘じゃないんだ。
でも、「逢いたい」そう言われる度に体が、心が強張る。
深く結ばれるほど、心は臆病の殻に逃げこむ。

「信じてなんて言わないよ。私は何時だってここにいるし、あなたの手を勇気を出して、ほんの少し伸ばしてくれたら、私は触れられる距離にいる。それを、それを信じられるときまで見つめている」
なんだ? それ……信じたいと思う心に言葉が柔らかく覆い被さる。    
 無性に逢いたい。今すぐ逢いたい。傍にいてほしい。
君が視界に入った。
本当は抱き締めたいのに。
でも出来た言葉は、
「どうした? 何故……」
馬鹿な男だ。何も言わない君は、思いのほかきつく俺の手を握り歩き出す。
振り返らず、真っ直ぐ前を見ながら
「帰さない!!」と言い放つ君。
俺は何を考える? 頰を濡らしている君に応えたい。
「……帰らないよ……泣かないで」
強がる君を今すぐ抱きたい。
背伸びした君は、熱い吐息を拭きかけながら、俺を欲しいと何度も囁く。
何も言わず激しく貪る俺は、強気な君の言葉とはほど遠い、壊れそうな程高鳴る鼓動を聞いた。

その時、俺はあのクロスロードの鳥を掴むと決めた。

可愛いよ……鳩が豆鉄砲喰らったようなその顔が。 
「摑みに行こう」
俺の全てになった君に。
誓う!愛を……俺たちの永遠を。

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