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初恋は今も胸を奏でる

 
第四話 自然な形…… 
 
 当時は、竹槍 救護 縫製の指導、監視に交代で近くに駐屯している兵隊が配属されていた。
当然彼等も若き青年達な訳だか、必要最低限の接触以外は出来る状況下ではない。
だが、抑圧されているからこそ想いは募るのだ。それが自然な理なのだ。
昼休み水絵を囲み、笑い合う女学生の姿に、一人、二人と兵士たちも遠巻きに
水絵の歌声を聴きに集まるようなっていた。
そして、淡く切ない恋心が、知らず知らずのうちに芽生えていくことにを、誰が止められるのだろうか。打ち明けることなく散っていった恋心は、どれくらいあったのだろうか。もし……もし……と想いながら、時代を生きて来た心たちは今も厳然といるのだから。

  ある日遠巻きだった兵士たちが徐々にその輪に近づいてきた。
 突然のことに女学生たちは驚きつつも、やはり嬉々とするのは当然の反応であり、彼女たちは何となく小綺麗にしようと、髪飾りなどを手作し飾るようになっていった。
歌う、笑う、言葉を交わす。ほんの少し優しい時間を共有するだけで、
ときめきは溢れ出すものなのだ。
華やぐ乙女心がいつしか熱き想いに変わったとしても……押し殺す感情。
蓋をする想い。そのときめきは放たれる事も無く置いてきぼりにされるのだろう。

若き兵士は……その想いをどう捻じ伏せて行くのだろうか。


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