味の地図を見つけること

カレーばかり食べていたときに「どこがおすすめ?」と聞かれると困る、と思っていた。カレーにもいろいろあるからだ。
しかし、そこで何系?と聞き返すのは悪手なのだ、どう考えても。既に相手が「カレーにはこういう分類がある」と概略を知っていて、それをもとに自分の好みという正解にたどりつきたいならば「何系ならどこがおすすめ?」と聞いてくるに決まっている。そうでない以上、何系?と聞き返しても相手には意味不明でしかない。何となく世間話として振ってきただけだとしても、会話が手詰まりになる。まずは何店かよく行くところをあげてもらって、それに準じるならこれ、と絞り込むしかない。

自分が好みを見つけてきたときも、わりと飲食店で聞かれて答えるうちに好みが分かってきたものが多い。

日本酒は隣り合わせたひとから「いまメニューに載っているものならどれが好きですか?」と尋ねられるままに答えていたら「東北のお酒が好きなんですね」と言われて驚いた。何で銘柄を答えただけで即わかるんだと思ったら、店に酒を卸してる酒屋だった。(今は地方で言うなら滋賀県の酒が好き)

レストランに囲まれた、飲み物だけ出すバルで「どんなところに行くんですか?」という問いに答えていたら「トラディショナルなところが好きなんですね」と返ってきて、はっとした。確かに、ガストロノミー、フュージョン、イノベーティブ…と称されるようなところには飽きてきたところだったからだ。

カレーは「よく行くんですか?」と言われて何店かあげたら「いわゆる、現地系ですね」と言われたことで好みを振り返った。もちろん「現地の人が作っているから」美味しいとは限らない。作っているのが日本人でも、エッセンスをそのまま伝えようとするスタンスのところが好きなのだと思う。

ではこれらを串刺しにできるような、統一された「好み」を表すような言葉はあるだろうか?今のところ見当たらないから、個別に地図を携えている。

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