「音楽のイメージに基づき、上演台本を作る」

 公演、また、劇団自体のPRのために、近年の公演で模索している作劇方法について、書いてみました。2019年3月に予定している、次回公演「マクベス」の上演にも活かそうと考えている方法です。一言で言うと「音楽のイメージに基づき、上演台本を作る」という方法なのですが、以下に詳しく述べていこうと思います。

 音楽的な魅力を持っている公演に対しては、演劇を始めて間もなく、興味を持っていったのですが、その言語化の難しい魅力を引き出すために、「音楽のイメージに基づき、上演台本を作る」という方法を試したのはひねもすほろすけ第3回公演「すがたのみえないふうけい」からでした。具体的に言うと「すがたのみえないふうけい」では、≪交響曲第9番(ベートーベン)≫(いわゆる「第9」)をベースに、その音楽のイメージから連想した詩やモノローグを当てはめて、脚本を完成させました。このことで、セリフが持つテーマに、全体的な音楽としての魅力が加わるのではないかと考えたからです。音楽のイメージに基づき作品を作るメリットの一つとして、公演を重ねるうちに発見したことは、章ごとに雰囲気の変化がつけやすいということです。特にクラシック音楽は、楽章が3~4つに分かれているのですが、その一つずつにテンポとメロディ等の変化が明確に付けられており、かつ、それが一つの曲として成立しているため、一つの作品の中で変化を付ける方法が大量に発掘されます。クラシック音楽は長い歴史の中で積み上げられた「変化の教科書」のように思っています。

 上記の様に、次回上演予定の「マクベス」では、≪ピアノ協奏曲第二番(ラフマニノフ)≫のイメージに合わせて潤色した脚本を元に、上演することを考えております。≪ピアノ協奏曲第二番(ラフマニノフ)≫は、特徴的な鐘の音のようなピアノの和音から始まります。ロシア正教の鐘の音を模しているそうで、これが「マクベス」の持つ、善悪・倫理のテーマと合致するのではないかと考えました。また、情感あふれるメロディが、マクベス夫妻の関係の微妙に揺れ動く様子を示すように感じました。協奏曲は原則的に、3つの楽章によって構成されるのですが、それを「マクベス」にも当てはめ、「マクベス」という一つの作品の中で、3つの違った魅力を引き出せるのではないかと考えております。
 課題としては、リズムや音の響きばかり意識して会話をする人間はいないので、どうやって、会話や身振りの現実性と音楽的な魅力を両立させるのか、というところにあると考えております。戯曲に音楽的な魅力を持たせようとすると、会話が現実的ではなくなる可能性があります。しかし、音楽的な魅力への意識は、作品の「全体としての魅力」への意識にもつながるかと思うので、視野を広げた作品作りができるのではないかと思っております。

 もし、ご興味ございましたら、オーディションも開催予定ですので、そちらの情報もチェックしてみてください。どうぞよろしくお願いいたします。

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