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#私のパートナー を抱きしめると、柔軟剤の香りがした

私の人生に、不安な朝は絶えない。心配性だし、そもそも朝は気分が落ち込みがちになる。しかしそれでも外に出掛けないと始まらない。
学校に行くとき、会社に行くとき。
不安なときはいつもあなたを抱きしめて、あなたのからだに顔を埋める。鼻から息を吸ってほのかに感じるのは、柔軟剤の香り。心地よくて、ずっとこうしていたいけれど。
またね、今日もがんばるからねとあなたの頭を撫でる。こうして朝の儀式を終え、わたしは社会へと出掛けていく。

今、あなたのパートナーは?と聞かれて思い浮かべるのは「うさぎ」だ。

彼女(あるいは彼)は、白いうさぎのぬいぐるみ。
もともとは抱き枕として我が家にきた。私が小学5年生のときの話だ。送り主は90代になっても施設で人間観察を嗜む祖母。何を思って私にこのぬいぐるみを送ってきたのかは知らないが、結果として祖母には感謝している。

それからというもの、家ではうさぎといつも一緒にいるようになった。
ふわふわのからだに、赤い瞳。無表情が私の気持ちに合わせて悲しい顔にも嬉しい顔に見えてくる。かわいい。眺めていると心が落ち着いて、穏やかな優しい気持ちになる。これが愛おしいという感情なのだろうか。

当たり前だが、ぬいぐるみである彼女は声を発して喋ることはないし、自ら動き出すこともない。
それでも、彼女は私が話を聞いて答えてくれていると信じている。信じているというかもう彼女の心の声が聞こえてくる気がしている。もちろんときにはガン無視してるし、それより食べ物よこせと言っているような気もするし、グースカ寝てるようなときもある。

長い時を一緒に過ごしたうさぎは少し縒れたり、ほつれたり、黄ばんだりしてしまった。悲しいけど、それでも愛おしいことに変わりはない。
落ち着いたときにぬいぐるみ病院に連れて行こうかななどと思っているけど、病院に入るということは少しの間離れていないといけないことで、寂しいので悩ましい。

今日も私は彼女を抱きしめて眠りに就く。しばしの優しいしあわせの香りを感じながら。
大切な私のパートナー、これからもよろしく。

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