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NovelJam2019販促キャンペーン雨月怪談

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これはNovelJam2019参加作品「笑い狼は笑わない」の販促キャンペーンマガジンです。雨が降ると怖い話が増えていきます。
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記事一覧

雨月怪談・十三夜月「合わせ鏡」

雨月怪談・十三夜月「合わせ鏡」

そのバーでは、雨の日に話が途切れたら怖い話をするというルールがある。
十三夜月の夜、マスターがお客から聞いたのはこんな話だ。

バーに入ってきたのは黒いロングコートを来た背の高い男。ニット帽をするりと脱ぐと、綺麗にそりあげられている。

この男、僧侶だ。年のころはマスターと同じ30前後といったところか。僧侶の方の肩幅が広いのは若い頃にスポーツをしていたせいだろう。

「そう、嫌そうな顔をするなよ、

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雨月怪談・十日夜の月「人形の家」

雨月怪談・十日夜の月「人形の家」

そのバーでは、雨の日に話が途切れたら怖い話をするというルールがある。
十日夜の月の夜、マスターがお客から聞いたのはこんな話だ。

そうです。母親の家を売ろうとしたんです。

それで、何回も希望者を案内してるんですが、どうしても契約までいたらなくて……。

ここでは、そういう悩みも聞いてくれると噂で知りまして、訪ねた次第です。

人形ですか?

ええ、あります。母親が趣味だったので、ひとつの棚は全部

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雨月怪談・上弦の月「辻占」

雨月怪談・上弦の月「辻占」

そのバーでは、雨の日に話が途切れたら怖い話をするというルールがある。
上弦の月の夜、マスターがお客から聞いたのはこんな話だ。

マスター、噂通りにイケメンですね。目の保養になるわー。

ああ、怖い話でしたよね。

東大阪にある瓢箪山稲荷社の辻占いって知ってます?

少し手がこんでいるんですよ。

占い場があって、そこを通った人の様子をメモして、宮司さんに伝えて、それで占ってもらうんです。

大変で

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雨月怪談・三日月「心霊写真」

そのバーでは、雨の日に話が途切れたら怖い話をするというルールがある。
三日月の夜、マスターがお客から聞いたのはこんな話だ。

いとこ同士だという吉村すみれと篠田野子はひと月前――。

「ないね。セピア色の写真だったよね」
実家の和室に陣取り、アルバムをめくるすみれは不安げな言葉を野子に投げる。
「絶対、それは間違いないと思う。とても古い写真だった。だって、あれが駅前だって言われてびっくりしたもん」

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雨月怪談・繊月「ピヨピヨサンダル」

雨月怪談・繊月「ピヨピヨサンダル」

そのバーでは、雨の日に話が途切れたら怖い話をするというルールがある。

繊月の夜、マスターがお客から聞いたのはこんな話だ。

みっちゃんの足にはいつもヒヨコの柄がついたサンダル。
歩くたびに、ぴよぴよ鳴るからかわいいね。

小学生になったみっちゃんは、もうピヨピヨサンダルははかないよ。
サンダルはもう小さくなって、みっちゃんの足には入らない。
今はヒモのほどけやすい運動靴をはいてるよ。

夕暮れど

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雨月怪談・新月「蛇の神様」

雨月怪談・新月「蛇の神様」

そのバーでは、雨の日に話が途切れたら怖い話をするというルールがある。

新月の夜、マスターがお客から聞いたのはこんな話だ。

おばあちゃんの家は天井近くに神棚がある。
そこにおばあちゃんは朝夕と生卵をそなえていた。
すると神棚の開いた扉からヘビが顔を出して、卵を丸のみして帰っていく。
もちろん生きている本物のヘビだ。
「おばあちゃん、あれは何?」
「あれはおうちの守り神よ。
こうして朝夕拝んんでい

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