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百物語85話目「クリームペンギン」(実話怪談)

娘のむっちゃんの話だ。

むっちゃんが、3歳くらいのときに、昼、赤ちゃんがお客さんできていた。仮にじゅんちゃんにしておこう。

そして、その夜のこと。

むっちゃんは寝付けずに、ぐずぐずぐずっている。

「ねえ、どうしてじゅんちゃんがおうちにいるの?」

と、台所を指すのだ。

もちろん、私にもおばあちゃんにも何も見えない。

「あっちにやって!」

と、ますます泣くむっちゃんは、とうとう手足をつっぱって硬直するようになってしまった。

ありゃー、これは見えないものがきてるなあ。

その日はお盆だった。

「むっちゃん、なにもいないよ」

「いるよ! クリームペンギンがいる」

そして、ついには火がついたように、むっちゃんがギャン泣き始める。

それで、おばあちゃんが箒で、ベランダの鉄柵をガンガンと叩き出した。

ひとしきり叩いた後に、むっちゃんに「もう追い払ったよ」と言う。

すると、むっちゃんはようやく安心したように寝てくれたのだ。

もう少し大きくなってから、あのとき見たクリームペンギンがどんなものか聞いてみた。

ペンギンくらいの大きさで全身が真っ黒らしい。で、そのクリームペンギンが傍まできて、歯で腕を噛んだから大泣きしたという。

クリームペンギンの正体はわからないままだ。

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