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短文バトル「泣いた日/車を売った日」

精神科に夫を措置入院させている間に逃げるため、私達は急いで身辺整理をしていた。離婚成立まで唯一泣けたのが車を売ったときだ。夫が今度こそ長く勤めるといい、そのために必要だといった車だったけれど、すぐ辞められた。最初のローンの支払いから私。私が働いた汗の結晶だ。それをこんなにも急に手放すことになるとは。車はよく働いてくれ、夫と違って私達に危害は加えることはなかった。レッカーで運ばれていく車の後ろ姿を見ながら、十分に感謝できない別れに涙が滲んだ。


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