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短文バトル「一番古い記憶/赤子の頃」

吊橋下の川は底が深く、まだ20代前半の父親が友達と飛び込んで遊んでいた。その傍で赤子の私は浮き輪に入れられ浮遊している。足がつかない深緑の渦は底なしに思えて怖く、鯨のような大きな魚に食われるんじゃないかとひどく不安だった。父親たちがいるむき出しの岩肌は湧き水に濡れ、それを飲みにきた黒揚羽が何匹もとまって、羽根をゆっくり閉じたり開いたりしている。誰かが飛び込んだ白い飛沫が顔にかかるのも嫌だった。私の最初の記憶は川に飲まれる恐怖が渦巻いている。

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