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『源氏物語』の能:NHK大河ドラマ「光る君へ」

2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の主人公は、女優の吉高由里子さん演じる紫式部です。
NHKホームページには、次のように書かれています。

平安時代に、千年の時を超えるベストセラー『源氏物語』を書き上げた女性。彼女は藤原道長への思い、そして秘めた情熱とたぐいまれな想像力で、光源氏=光る君のストーリーを紡いでゆく。変わりゆく世を、変わらぬ愛を胸に懸命に生きた女性の物語。(詳細は同サイトへ

1月7日からいよいよ放送が始まりました。

能の中には、『源氏物語』を典拠とした作品がたくさんあるので、楽しみにされている方も多いと思います。流儀による違いはありますが、現在上演されるいわゆる「源氏物」は10曲(「葵上」「浮舟」「落葉」「碁」「須磨源氏」「住吉詣」「玉鬘」「野宮」「半蔀」「夕顔」)です。
これと紫式部自身がシテの「源氏供養」をご紹介していきたいと思います。

※流儀により復曲上演した演目もあります。

⚫︎源氏供養(げんじくよう)

では、まず「源氏供養」から。
作り物語の作者という妄語戒を犯した罪で成仏できない紫式部は、『源氏物語』の主人公である光源氏を供養し、自らも成仏しますが、実は彼女は石山寺の観音が仮に姿を現した人物でもあった、というお話です。
(あらすじ・見どころはこちら

「源氏供養」武田尚浩 朋之会 2022.12.10(撮影 前島写真店)

【公演情報「源氏供養」】
1.14 京都府「京都観世会例会」@京都観世会館
1.21 京都府 「金剛定期能」@金剛能楽堂
2.9 大阪府 「七宝会」@枚方市総合文化芸術センター本館
4.7 滋賀県 「紫式部の筆はしる~石山寺と源氏供養~」@大津市伝統芸能会館
5.29 東京都 「青山能」@銕仙会能楽研修所
7.20 京都府 「SHITE シテ。2024」@京都観世会館
11.29 神奈川県 「能を知る会 鎌倉公演」@鎌倉能舞台
12.14 東京都 「緑泉会」@矢来能楽堂

⚫︎葵上(あおいのうえ)・野宮(ののみや)

『源氏物語』の中でも屈指の人物、六条御息所を主人公とするのは、「葵上」と「野宮」。
「葵上」では生霊、「野宮」では死後の御息所の霊が登場します。御息所の高い品格、車争いなどのエピソード、源氏への思い…と様々な面が描写されます。
(「葵上」あらすじ・見どころはこちら
(「野宮」あらすじ・見どころはこちら
[対訳で楽しむ「葵上」はこちら
[対訳で楽しむ「野宮」はこちら

【公演情報「葵上」】
1.13 東京都 「能・狂言  府中の森芸術劇場」@ふるさとホール
1.20 大阪府 「第32回能楽若手研究会大阪公演 大阪若手能」@大槻能楽堂
2.3 大阪府 「大槻同門会能」@大槻能楽堂
2.4 東京都 「定期能二月-金剛流-」@セルリアンタワー能楽堂
2.18 福岡県 「飯塚能の会」@イイヅカコスモスコモン 中ホール
2.23 兵庫県 「上田観正会定式能」@上田観正会能楽堂
3.20 香川県 「玉藻能2024 葵上 Aoi no Ue」 @レクザムホール
6.15 東京都 「観世九皐会」@矢来能楽堂
8.16 京都府 「第二十一回  大文字送り火能」@金剛能楽堂
8.25 京都府 「京都観世会例会」 @京都観世会館
9.14 東京都 「能を知る会 東京公演」@観世能楽堂
11.10 東京都「金春会定期能」@国立能楽堂
11.16 東京都 「宝生会定期公演」@宝生能楽堂

【公演情報「野宮」】
3.9 東京都「第九回 三人の会」@観世能楽堂
9.15 広島県 「大島能楽堂 定期公演」@喜多流大島能楽堂
9.22 京都府 「京都観世会例会 」@京都観世会館
10.20 神奈川県「能を知る会 鎌倉公演」@鎌倉能舞台

⚫︎夕顔(ゆうがお)・半蔀(はじとみ/はしとみ)・玉鬘(たまかずら)

御息所と並んで人気の人物といえる、夕顔をシテとした曲に「夕顔」と「半蔀」。源氏との短い恋と、夕顔の花のはかなさが合わせて描かれます。
この夕顔の忘れ形見である玉鬘が主人公で、恋の妄執に苦しむ姿を描くのが「玉鬘(玉葛)」。
(「夕顔」あらすじ・見どころはこちら
(「半蔀」あらすじ・見どころはこちら
(「玉鬘」あらすじ・見どころはこちら
[対訳で楽しむ「半蔀」はこちら

【公演情報「夕顔」】
5.6 京都府 大江定期能 12時開場 13時開演 大江能楽堂
6.15 東京都 観世九皐会 矢来能楽堂
6.23 京都府 京都観世会例会 11時 京都観世会館
7.28 東京都 喜多流7月自主公演 観世能楽堂
11.29  神奈川県 能を知る会 鎌倉公演 鎌倉能舞台

【公演情報「半蔀」】
2.23 兵庫県 上田観正会定式能 上田観正会能楽堂
5.4 東京都 喜多流5月自主公演 観世能楽堂
5.5 石川県 金沢能楽会定例能 石川県立能楽堂
5.25 京都府 京都観世会例会  京都観世会館
5.26 京都府 京都観世会例会 京都観世会館
6.8 東京都 円満井会定例能 矢来能楽堂
6.8 東京都 朋之会 観世能楽堂
6.16 東京都 能を知る会 東京公演  国立能楽堂
6.22 東京都 荒磯GINZA能 観世能楽堂
10.19 東京都 宝生会定期公演 午前の部 宝生能楽堂
12.7 大阪府 上野松颯会定期能楽会 大槻能楽堂

【公演情報「玉鬘」】
5.3 神奈川県 能を知る会 鎌倉公演 鎌倉能舞台
5.18 東京都 代々木果迢会 昼公演 13時 代々木能舞台

⚫︎碁(ご)

若い頃の源氏が出会う、二人の女性(空蝉、軒端荻)が現れる「碁」は、二人の霊が実際に碁を打つシーンがあります。

【公演情報「碁」】
3.2 東京都 「大槻文蔵裕一の会東京公演」@観世能楽堂
3.24 京都府「京都観世会例会」@京都観世会館

⚫︎須磨源氏(すまげんじ)・住吉詣(すみよしもうで)

光源氏自身が登場するのは「須磨源氏」と「住吉詣」。
「須磨源氏」は光源氏の霊がシテで、在りし日の雅な姿を見せます。明石の君がシテ、光源氏がツレとして現れるのが「住吉詣」。二人が住吉神社参詣の折に再会する場面を描きます。
(「須磨源氏」あらすじ・見どころはこちら

【公演情報「須磨源氏」】
1.27 石川県「冬の観能の夕べ」@石川県立能楽堂
4.28 京都府「京都観世会例会」@京都観世会館
5.3 神奈川県「能を知る会」@鎌倉公演 鎌倉能舞台

【公演情報「住吉詣」】
1.13 神奈川県「新春よこすか能 蝋燭能『住吉詣』」@よこすか芸術劇場
12.8 京都府 「金剛定期能」@金剛能楽堂
12.15 京都府「京都観世会例会」@京都観世会館

⚫︎落葉(おちば)

「落葉」の主人公、落葉の宮は、源氏が晩年、正妻として迎えた女三の宮の異母姉で、柏木の妻。夫の死後、交流があった夕霧(源氏の子)への慕情を述べます。
(「落葉」あらすじ・見どころはこちら

⚫︎浮舟(うきふね)

宇治十帖の世界を描く「浮舟」。源氏の子(実は柏木の子)の薫大将と、匂宮との間で揺れ動く、浮舟の苦悩が描かれます。
(「浮舟」あらすじ・見どころはこちら

【公演情報「浮舟」】
2.25 京都府「京都観世会例会」@京都観世会館
5.18 東京都「代々木果迢会 夜公演」@代々木能舞台
10.20 神奈川県「能を知る会 鎌倉公演」@鎌倉能舞台

源氏物は半数の曲で「序ノ舞」が舞われ、平安時代の雅で美しい世界観が感じられます。
また各曲に独自の工夫もみえ(「半蔀」の作り物や、置かれた小袖を病床の葵上に見立てる演出〈出し小袖〉など)、魅力的な作品群です。

なお、今年の京都観世会例会では、『源氏物語』が題材の演目が毎月上演されます。
こちらでは能楽鑑賞多言語字幕サービス「能サポ」も導入されていますので、ぜひご利用ください!

『源氏物語』は原作のほか、与謝野晶子、谷崎潤一郎、円地文子、田辺聖子、橋本治、瀬戸内寂聴、大塚ひかり、林望、林真理子、角田光代ら、数々の作家による現代語訳が出されています。

また大和和紀のマンガ「あさきゆめみし」もあり、大河ドラマを見ながら、これらの作品を読んでみたり、能の源氏物をご覧になってみるのはいかがでしょうか。


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