紅茶のある風景ーー初冬の学校で

校舎から出た途端に震えがきた。スカートから伸びた素足に北風が容赦なく吹きつけてくる。食堂につながる外廊下には赤や黄色の落ち葉が散りばめられていた。
小走りで食堂の前にある自動販売機に向かい、硬貨を入れて迷うことなくボタンを押した。無遠慮な音を立てて出てきたペットボトルを取り出す。オレンジキャップのボトルは冷えた手にとても熱く感じられた。ブレザーのポケットからハンカチを取り出しボトルに巻くが、完全に温かさを打ち消してしまうのが惜しい。ハンカチを広げて包みなおし、それを両手で包み込むように持って暖をとった。

週のはじめに各教室に配られる灯油の量が十分でないのはわかっていた。それなのに一日中ストーブをつけっぱなしにしてしまい、週半ばで灯油がなくなってしまった。午後は教室に陽がさして頭がぼーっとするくらい暖かかったのに、誰も消そうとしなかったのだ。寒々とした教室で生徒から灯油がなくなったことを聞いた担任は呆れてみせただけで、何もしてくれなかったのが今朝のこと。おかげですっかり身体が冷えてしまっている。

手が温まったところでようやくキャップを開け、口をつけた。鼻にぬける紅茶とミルクの香り。温かさを確かめるようにふたくち飲んだあと、なんとなくほっとして息を吐き、もと来た廊下を戻ろうとした。すると校舎のドアが開いて男子生徒が姿を現した。クラスメイトだった。一瞬目が合ったものの何もリアクションなくすれ違う。そんなものよねと思いながら校舎入口のドアノブに手をかけると、後ろから声をかけられた。すばやく振り向くと、クラスメイトが数メートル先でこちらを向いていた。

「この前の模試どうだった?」
「はじめてA判定とれた」
「すげえな。俺はBだった」
「でもまだわからないよ」
「そうだな、がんばろうな……お互いに」
クラスメイトは背を向け歩いていった。

静かにドアを開け校舎に入ると、階段を駆け上がって教室に戻った。すこしだけ息を乱しながら席につく。ミルクティーのボトルを開けて、ひとくち口に含んで飲み込み、またひとくちと飲んだ。甘くやさしい味がして、なかなかやめることができなかった。

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