老舗文房具屋と勝手な客

定期的に通っている病院に診察を受けに行った。いつもなら夫が一緒なのだが、今回はひとりだったので病院周辺をぶらぶらした。
診察までまだ時間があったので、時々利用している古い文房具屋をのぞいてみることにした。そのお店は個人経営ではあるものの、そこそこの広さがあり、一般的な文具から和文具、輸入文具、画材なども取り扱っている。ほんものの古さを見事に活かしたヨーロッパ風のシャビーシックなお店の外観は雰囲気があり好きだった。それに他ではあまり見かけないような品物があるので、ひとりで病院に来たときによく立ち寄っていた。祝儀袋、お年玉袋、メッセージカード、ノート、レターセットなどを買った覚えがある。

そのお店を目指して駅から2,3分ほど歩く。一筆箋が切れてしまったので、いいものがあれば買おうかな。見慣れた商店街の景色を通り過ぎて顔を上げると、猛烈な違和感に襲われた。

あれ?お店ここじゃなかったっけ?

長年通っているところだ。間違えるはずがない。
文房具屋があるはずの場所には、鮮やかな色の看板のドラッグストアがあった。頭の中が軽いパニックになる。え、ドラッグストア?メインストリートであんなに堂々としていた老舗が閉店?そんなことってある?嘘でしょ?結構気に入ってたお店だったのに!いつ閉店したのか、いつまでお店をやっていたのだろうかと記憶を手繰り寄せてもわからない。工事をしていた記憶もない。

スマホで調べると、なんと今年のはじめに閉店して、夏にドラッグストアが開店したとのこと。そこでまたパニックになる。たしかに今年は家族が倒れていろいろ手につかない1年だったけど、いくらなんでも何か月も閉店に気づいてなかったってやばくないか自分?月1で通ってるのに?もうそんなに耄碌しちゃってる?とひとしきり煩悶した。そして冷静になったあと気づいてしまった。長い間、文房具屋のある通りを利用していないことに。

ここしばらく、夫と一緒に車で病院に通っている。その時は文房具屋の前を通らないルートを使う。わたしひとりの時は電車なのでお店を通るルート。今年に入ってから今月まで一度も電車で通院しなかったから、閉店に気づくもなにも、そもそもお店自体を見ていなかった。
何か月も見ていないことに気づかないようなお店が閉店して「結構気に入ってたお店だったのに!」とはあまりに自分本位というか身勝手というか、何様だよ!と自分に言ってやりたい。なんにせよ耄碌している。わたしは苦笑いした。

ちなみに文房具屋は完全閉店ではなく別の場所に移転したとのことなので、次の通院の時にぜひ立ち寄ることにしよう。

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