石田note2

石田徹也展はじまるよ〜

4月12日から、スペイン・マドリードのソフィア王妃芸術センターで、石田徹也画伯の個展が開催されます。

noteでフォローしていただいている方には、少し説明をさせていただきます。私は石田徹也画伯とは武蔵野美術大学時代の同級生で親友でした。暇さえあれば、石田くんの家でグズグズと「アートとは何か?」みたいな話をして過ごしました。

石田くんは2005年に亡くなりましたが、亡くなったあとに「発見」され、NHKの日曜美術館で取り上げられてから、一気に日本国内で知られる画家になりました。私は石田くんの本が出るたびに、取材されたり寄稿したり、番組があるたびに出演したりしました。

石田くんは学生時代から欧米のアートシーンにものすごく興味を持っていて、早く欧米で作品を発表したいと言っていました。作品本位で勝負したいと言ってました。日本では、ギャラリーの人に気に入られたり、懇意にならないと作品が評価されないと言っていましたが、今思えば、欧米だって日本と同じで、キュレーターに気に入られないと成功はしないんだと思います。

石田くんと私が学生時代に語っていた「アートの楽園」はこの世には無い、ということは、歳をとった今になればわかります。そんな事を石田くんに言ったら「魂を売ったな」と言われそうですが。

それでも、日本より欧米の方が、人と違った作品を作る人間をリスペクトしてくれる素地があると思います。人と「違う」ということを、素晴らしいこと、驚異的なことだと思ってくれる気がします。

私は何度か海外の映画祭に行きましたが、監督を本当にリスペクトしてくれます。初対面の人が「コングラチュレーション!」と言って握手を求めて来たりします。最初は「え?なんか受賞したのかな?」と思ったのですが、作品を作ったことと、それが映画祭に選ばれたことを祝福してくれてました。

日本では「どうせ好きなことやってるんだろ。いいご身分だ。こっちは汗水たらして働いてんだ。」という目で見られます。美術にしろ音楽にしろ芝居にしろ、芸術的な事をやっている人間は尊敬されない傾向にあると思います。国語算数理科社会の国だからまあ仕方がないです。

あ、でもテレビに出ていると間違いなく尊敬されますね。テレビに出てれば一流と認識されますね。

話がそれましたが、ヨーロッパを目指していた石田画伯の絵が、遂にヨーロッパでメジャーデビューします。個人的に自費でギャラリーを借りて発表するのではなく、ピカソのゲルニカが置いてある美術館からの依頼で、個展が開催されるんです。遂にここまで来たかと思います。

私は今回のレイナ・ソフィアの個展のカタログに、石田くんの当時の私生活について寄稿しました。何が好きだったのか、何が嫌いだったのか。事前にレイナソフィアのキュレーターの方と、石田くんのお兄さんを交えて、skypeで話して内容が決まりました。

すごく印象的だったのは「何の影響で、誰に影響されて、石田はこういう絵を描くに至ったか?」をとことん知りたがっていた事でした。やっぱりキュレーターなどのアートを理解し咀嚼し伝える人たちは、過去から脈々とつながっているコンテクストで作家を分析し分類して、新しい作家をこの世に出していくんだなと思いました。

これはそのまま私にも当てはまる話だと思いました。「ポッと出」の作家が有名になるのが難しい原因は、コンテクストがハッキリしないからなんだと思います。作品がそこそこ良くても、キュレーターからしたら、どういう「まえがき」を書いて世の中に出せばいいのか分からないし、本当に本物なのか不安なんだと思います。

だから映画で言うと、巨匠の助監督をやっていたとか、ある権威の元で学んだ人たちとか、同じ大学の出身だとか、そういうコンテクストがはっきりする人たちの方が世の中に出やすいんだと思います。

でも誰かが「英断」するから、新しい作家が世の中に知られていきます。今回の石田くんの個展も、レイナソフィアのキュレーターの方の英断があったから実現したんだと思います。

とはいえ、石田くんはすでに、世界最強と言われているガゴシアン・ギャラリーで扱われている作家でもあります。ガゴシアン・ギャラリーで扱っている日本人作家は、村上隆さんと草間彌生さんと石田くんの3人だそうです。だから、すでに確固たる評価が定まっている「本物」とも言えるのですが。

以前、ガゴシアン・ギャラリーから出している石田くんの作品のカタログを見せてもらったことがありました。大きくて分厚いカタログで、画集だとしたら3万円ぐらいしそうなほど立派なものでした。ほぼ「鈍器」でした。欲しかったですが、欲しいとは言えませんでしたけど。さすがに。

私は4月10日にレイナ・ソフィアで行われるオープニングセレモニーに行ってきます。またその様子もnoteで書きたいと思います。

サポートして頂けたら、更新頻度が上がる気がしておりますが、読んで頂けるだけで嬉しいです!