新日本プロレス歴2年

2年ぐらい前から新日本プロレスを見ています。

それまでプロレスとは全く縁の無い人生でした。小学生の頃、駄菓子屋に行くとプロレス選手をキャラクターにしたお菓子なんかもたくさん売ってましたし、プロレス好きの友達もいましたが、私は全く興味がありませんでした。総合格闘技が流行り、大晦日にテレビで放送されるようになっても、私は全く興味がありませんでした。そもそも、格闘技自体を全然見ないのです。人が戦ってるのが好きじゃないんだと思います。

そんな私を新日本プロレスに誘ってくれたのは天竺桂さんでした。両国国技館で試合があるというので、「付き合い」で行くことにしました。聞くと、だいたい4時間ぐらい見るとのこと。そんなの絶対に無理だと思ったのですが「付き合い」だからそんな事言ってられません。経験として一度見ておこうを思って両国に行きました。ビールが飲めるしとも思い。

行ってみると1つのマス席に4人が座ります。なかなかの狭さで、ビールを置く場所もままなりません。それでも両国国技館で売っている「国技館やきとり」が見た目より美味しかったり、持ち込みのつまみなどを食べながらプロレスを見ていたら、あっという間に4時間が経ってしまったのです。

そして、初めて見たプロレスがメチャクチャ面白かったのです。選手の名前もよく知らずに行ったのですが、石井智宏選手が強烈に印象に残りました。「岩」みたいな選手だなと思いました。その日は、オカダカズチカ選手と柴田勝頼選手の試合がメインでした。その試合が壮絶でした。あの日を最後に柴田選手はリングに上っていません。

試合の後、みんなで居酒屋に行っていろんな事を話しました。誰と誰が同じチームで、誰と誰に因縁があるとか、ヒール(悪玉)やベビーフェイス(善玉)というのがあることも知りました。

それからWikipediaで選手一人一人を調べました。選手一人一人を調べていくと、それぞれに面白いストーリーがありました。ものすごいヒールの選手の過去を調べると、すごく正統派の選手だったとか、あの選手とあの選手は元々仲間だったのに、裏切って仲間割れしたとか、面白いストーリーがたくさん流れていました。

調べれば調べるほど試合を見たくなり、新日本プロレスワールドという配信サービスに入って試合を見る様になりました。大きな試合がある時は、試合を見に行くようにもなりました。

試合を見てはいるのですが、興味としては、ストーリーの続きを見ている感じです。あのストーリーとあのストーリーがここでぶつかるのかという、そっちの興味なんです。

プロレスは技や強さの対決が全面に出ていますが、人々を惹きつけるのはストーリーの対決なんだと思います。私がここで「発見」したかのように書いてますが、プロレスファンからは、「何十年も前から知ってるよ!」と言われてしまいそうですが。

新日本プロレスを見ていると、自分の気持と重なってくる部分もたくさんあります。

選手によってプロレスに対する考え方が違うんだなと思うことがあります。選手によってはショーよりも戦いを優先して、勝ちを優先してしまう選手もいます。もちろん「勝つ」は絶対的価値だと思うのですが、それだけで人気が出るとは限りません。

私たちが作っている映画でいうと、「商業」と「アート」みたいな感じでしょうか。もちろんアートの価値は絶対的価値としてあるし、出来ればアートな作品を作りたいけれども、それではお客さんが見に来てくれない。だから、心の許せる限り、いや心では許せなくても、商業的価値を高めるためにエンタメ的な要素をたくさん入れなきゃならない。そんな監督もたくさんいることと思います。

そして、映画でもプロレスでも一歩抜け出るのは、「商業とアート」「ショーと強さ」の両方を兼ね備えている人だったりもします。今の新日本プロレスだと内藤哲也選手がそのポジションにいる気がします。

プロレスの面白さは、圧倒的な強さで相手を倒すのが面白いんじゃなくて、相手の技を受けて受けて受けまくって、それでも最後に勝つところなんだと思います。総合格闘技が下火になった要因として、試合が始まって数秒で決着が着いてしまうことだと聞いたこともあります。プロレスは「勝つ」競技ではなく「負けない」競技って感じでしょうか。

あと、「プロ」としての学びもあります。プロレスラーはほぼ全員ビッグマウスです。対戦相手のことをボロクソに言います。しかもニヤつきながら、ものすごい余裕をかまして言います。「お前はオレに倒される事に感謝しろ」ぐらいの事を平気で言います。

なのに負けるんです。

そして、負けたのにまた言うんです。あれだけ上から目線で相手を罵倒しておきながら負けて、なのにまたビッグマウスなんです。そのメンタリティというか「姿勢」には本当に学ぶものがあります。私たちがいかに謙虚か。こんなに謙虚じゃダメなんじゃないかと思わされます。プロレスラーみたく、有言不実行みたいな事をした方が、人生が切り開かれていくんじゃないかとすら思います。

あと、クセの強い選手ばかりいるなかで、自分のポジションをどこに置くか?というのも、すごく考えさせられます。自分のポジションについては選手のひとりひとりが試行錯誤して考えていて、上手く行ってる人もいれば、いまいちしっくり来てない選手もいます。本当はベビーフェイスになりたかったのに、ヒールになることで自分の居場所を確保している選手もいる気がします。自分の人生に覚悟を決めて、ヒールになっているんだと思います。変な言い方ですが、真面目なヒールの人は、徹底的にヒールになってる気がします。自分のポジションと役割をキッチリ分かっているんだと思います。そういう目で見ると、ヒールがヒールに見えず、「人間」として見えてくるんです。だから応援したくなるんです。

そして、「自分は自分のポジションをどう認知しているのか?」「ベビーフェイスなのか?ヒールなのか?」などと、自分が社会の中で、あるいは、その業界の中で、どこにいるのかを考えさせられます。いろんな選手の成功パターン、失敗パターンから多くを学びます。そういう意味では、程よい選手の数で、「新日本プロレスで言うと自分はどの選手みたいな立場にいるんだろう?」というのが、想像しやすいのかもしれません。

私は実は、仕事に関係の無い趣味を持ったことがありませんでした。趣味で短編映画を作ったりしてきましたが、仕事との境目はハッキリしませんでした。プロレスを見ることが、初めて仕事に全く関係の無い趣味になった気がします。新日本プロレスワールドで試合を見ながら、ご飯食べて、酒を飲む。これは本当に幸せな事なんです。

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平林勇

映画監督・演出家。短編映画が、カンヌ、ベルリン、ベネチア、ロカルノ、サンダンスなどで上映。2019年、初の長編映画『Shell and Joint』がモスクワ国際映画祭にて上映。http://www.hirabayashiisamu.com

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