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おばあちゃん と べっぴんさん

今日は隣のお家のおばあちゃんの出棺に立ち会いました。
満 94 歳。眠るように息を引き取ったそうです。

回数的にはあまり話もしたことがないし、普段どんな生活を送っているのかも知りません。それでも、私には特別なおばあちゃんでした。

物心ついた時から、そのおばあちゃんに「べっぴんさん」と呼ばれていました。私の顔を見ると本当に嬉しそうに「本当にあんたはべっぴんさんやなぁ」と声をかけてくれました。

思春期の始まり、小学 5 年生の頃、友だちの前でもそう呼ばれ、何だか恥ずかしくなった私は母に聞いたことがあります。
「おばあちゃんはどうして、私だけをそんな風に呼ぶのか」
母は可笑しそうな顔をしながら話してくれました。

それは私が 3 歳の頃。おばあちゃんは公園のベンチで足の痛みに耐えていて、そこを通りかかった私がおばあちゃんに駆け寄って「痛いの?大丈夫?」と声をかけたらしい。

「それが、とっても嬉しかったんだって。」

と。
私は全く覚えていないので、

(それが、そんなに嬉しかったのかぁ。)

と、その時は思っていました。

理由を知ってからは何故だか余計恥ずかしくなり、声をかけられても上手く返事ができず頷いていただけでした。そんな態度でも変わらず、「べっぴんさん」「べっぴんさん」と声をかけてくれました。

中学、高校の頃は会う機会も減り、上京してからはほとんどお会いしていないのですが、母に会うと『末っ子さんは元気か?』と気にしてくださっていたそうです。

8 月に鳥取へ戻ってきてから、一度だけ家の前でお会いして、すごく嬉しそうに話をしてくれました。身長は随分小さく感じ、歳をとられたなぁ、と思いましたが、嬉しそうな顔はそのままでした。相変わらず上手く返事もできないまま、なぜか「ありがとうございます」と答えて話を聞いていました。

今日気づいたけど、私が 3 歳のとき、おばあちゃんは  70 歳だったんだなぁ。 

家族の他にあんなに無条件に可愛がってくれたのは、おばあちゃんだけだったのではないかなぁ。と思います。
どこにいても、何をしてても、どんな髪色でも、いつも変わらず「べっぴんさん」と、笑顔で声をかけてくれました。

とっても大事なものをおばあちゃんに貰っていたんだなぁ、

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hiragi ayako
twitter : @____hrg


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