ノミというむしをしっていますか?

“ノミというむしをしっていますか?”

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この導入で、誰が「宇宙」というタイトルの絵本だと分かるだろうか。

絵本という表現が正しいのかはわからないほど分厚くて、情報がぎゅっと詰まっている、宇宙を題材にした絵本。

小さい頃も、今もずっとわくわくしながら、知らないことを知る喜びを噛み締めながら読んでいた本だ。


宇宙が出てくるのは28ページ目。全部で61ページあるだけでも図鑑に近いのに、約半分進んだとこでやっと宇宙が出てくる。

それまでひたすらに、丁寧に、宇宙までの道筋を作ってくれている。

ノミのジャンプ力の話から始まって、なぜ人間は羽を使って飛ぶことが出来ないのか、その代わりに何が出来るのか、そこから、乗り物の話、重力の話、そして恒星、宇宙、小宇宙。

ミクロからマクロにひろげていくのがこんなにも上手い作家さんを、私は他に知らない。

小さい時、そして今でも、『宇宙』はどこか、現実味がなくてきっと手が届かないような存在のままだ。

だけれど、この絵本は常にわたしに寄り添いながら、「ほら、あそこだよ」と宇宙を指さしてくれる。ひとつひとつ目の前の不思議を読みといて、一緒に着いてきてくれる。そんな絵本だ。


そんな細かいところまで色が溢れているこの絵本のなかで、一部分だけ白黒の場所がある。

ぽっかりと白と黒で染められた恐竜たちだ。研究が長く進んでいる恐竜だけれど、彼らが何色であったかはまだ分かっていないそう。

世の中で溢れている恐竜図鑑のように、恐竜に色をつけることだってできるなかで、かこさんはおそらくあえて決まった色を塗らなかったのだと思う。

正確性を優先した、色のない恐竜からもしかしたら未知の魅力を感じて興味を持つ子どもがいるかもしれない。

どこまでも事実に忠実で、子どもに容赦がないかこさんが私は本当に愛おしくてたまらなくなる。


小さい頃、子ども扱いされるのが嫌いだった。
大人の親戚ばかりの幼少期、みんなと同じものが食べたくて、同じことをしたくて、背伸びばかりをしていた。

かこさんの絵本はどこまでも容赦がなくて、常に寄り添ってくれるかこさんの絵本が大好きだ。

冗談でなく出来ることなら私のこれからの人生の数年を渡してでも、本を読みたかった。

でも、絵本はずっと残るからこそ、私はずっとかこさんの絵本を読み続ける事が出来る。

かこさんの新しい作品は読めることはきっとないけれど、これから生まれる子どもたちはかこさんの絵本を手に取ることができる。

それがとっても嬉しくて、
私が言わずともきっとかこさんの作品は読まれ続けるけれど、ぜひかこさんの絵本を手に取ってみて欲しい。

大人でもきっと、楽しめる絵本のはずだ。


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