男性ブランコSolo Live Swing#2『Denki Ifuku Ye-Ye』脚本

男性ブランコSolo Live Swing#2『Denki Ifuku Ye-Ye』の脚本UPします。こちらは2018年3月30日〜4月1日まで計4回公演、3331アーツ千代田・ギャラリーBで行われたコント公演であります。やってみたい方は是非上演してください。


↓ここから↓

舞台奥の壁には衣装、小道具などが掛けられている。

上手側にはラジカセ。下手壁には照明に繋がるタコ足コードが設置されている。

幕間の照明変化、ミュージックONOFFはすべて自分たちで行う。

着替えは青照明の中で観客に見せる。


[その1 秘密基地をつくろう]

友人A:浦井/友人B:平井


パーテーション両端

ラジカセ OFF


A おいおいおい。すごいなあ。おい。

B そうかなあ。

A これ、全部一人で作ったん?

B まあね。

A 壁とかも?

B うん。床も全部自分でやったよ。

A 床も!?お〜すごいなあ~。電気も通ってるし。

B うん。苦労したけど、電力会社の人にも協力してもらった。ガスも通ってるからお風呂も入れる。

A へえ。お風呂も!?すげえなあ〜。

B そんなすげえすげえ言わないでよ。意味がわからないよ。

A 意味はわかるやろ。いや、それにしても手作りで、こういう本格的な家を作っちゃうなんてなあ。本当すごいわ。

B まあ。時間をかければ誰にでもできるよ。

A いやいや。俺にはできないわ~。大変そうやもん。すぐ心折れそう。あ、こういうの何て言うんやっけ?

B こういうの?

A なんか言うやん。こういう自分で全部作るやつ。なんやったっけ?なんか言うやん。

B 何言ってんだよ。こういうのは、何とも言わないよ。

A そんなはっきり言う?いやいや、言うやん。なんか言うやん。ほら。

B う〜ん。あ、もしかしてあれのことかな。

A おお。思い出した?なんやったっけ?

B うん。思い出した。全部自分でやるっていうことでしょ。これを略して、全自。

A 全自!?

B そう、全自だね。

A 全自じゃないやろ~。そういうのじゃなかった気がするで。

B 何言ってるんだよ。こういうのは、全自って、言うんだ。

A 言うんだ!?はっきり言い切んなや。もうええわ。目下の話題はお前がこんなすごい家を作ったってことやからな。

B 目下だよねえ~。目下〜。

A そんな目下でしみじみせんといてくれ。いやいや、すごいやん。これ!これこそ秘密基地やんか。

B いや、この場所は君にも見せてるし、家族にも言ってる。SNSでも作ったよ~って拡散している。だから秘密ではないよ。

A 細かいな。いいやん。別に。

B だからここは基地。基地さ!

A 基地?基地っていうと軍の感じが否めないけども。まあ〜えらいわ。一人でこんな…基地?作るなんてな。

B うん、ということはさ、僕はナイスガイなのかな?

A え?

B 僕はナイスガイなのかな〜。

A …ナイスガイや。うん。ナイスガイやわ。

B 僕は基地を作ったナイスガイだね!

A おお。そうや。お前は基地を作ったナイスガイや!

B 基地を作ったナイスガイ!略して…

A ちょっとちょっと!あかん!すごい嫌な予感する。それは略したらあかんわ。

B 基地を作ったナイスガイ!略して!

A おい!

B 基地ナイス。

A ふゅー!あぶねえ。基地ナイス?基地ナイスってなんやねん。そうやなくて、俺が聞きたいのはな、どういうわけで、こんなの作ったんやってことや。

B ああ。その理由は驚くことなかれなんだけども。

A なんやその前置きは。

B 僕、昔は友達いなかったんだよ。でも大人になって、君という友達もできた。だからこういう基地を作ろうと思った。つまり僕は秘密基地に憧れていたということなんだよ。

A …いや、理由普通!

B え?

A いや、驚くことなかれって前置きあったから。どんなトンデモ理由かと思ったわ。

B …がっかりさせたようで。

A 怒んなって。いや、ええよええよ。そういうもんやろ。誰だって子供の頃に憧れてたものを大人になって実現させようっていうのは当然のことや。その実現させようという思いが生きる力となるんかもな~。

B …よくしゃべるね。

A 怒んなって。悪かった。すまんすまん。

B うん。いいよ。僕がね、本当に言いたかったのは、君のような基地友ができて嬉しいということなんだ。

A 基地友!?基地の友達ってこと?

B 違うよ。基地友を戻すと、「この基地を作ったことはもちろん嬉しいことだけど、君という友達がいなかったら、この基地は作らなかった。だから友達になってくれてありがとう」の略。

A 長いな!急になんや。やめろや。そういうの。

B 何にせよ、自分から動いてよかったよ。全部自分でやる。ドゥイットユアセルフだね。

A ああ!それ!

B それ?

A そう!ドゥイットユアセルフ!

B うん。それが?

A だから!こういう全部自分で作るのを英語でドゥイットユアセルフって言うやん!

B ああ。

A このドゥイットユアセルフを略して言うねん!

B なんて?

A …ドゥフや!!

B …ドゥフ!?

A え~あれやな。違う感がいかついな。

B うんうん。

A もうええわ。ちょっと部屋見せてや。とりあえずラジカセで音楽聴こうや。

B 音楽?驚くことなかれなんだけど、聞く!

A すっと言え!

ラジカセ ON

タコ足 OFF(通常光から青光)


[その2 気持ちをつくろう]

店長A浦井/新人バイトB平井


パーテーション両端

ラジカセ OFF

タコ足 ON


A 本日はよろしくお願いします。

B よろしくお願いします。

A それでは、まずお仕事内容を教えていきますね。

B はい。

A まず我々のお仕事というのは、お客様に美味しいコーヒーをお出しするというのが基本です。

B はい。

A 今から基本中の基本である接客についてお教えします。

B よろしくお願いします。

A いきなりなんですが、あなたは残心の気持ちというものを知っていますか?

B ザンシン?ザンシンって斬新なデザインみたいな、そういう斬新ですか?

A あ、あ、違うんです。皆さん。お間違いになります。

B あ、違う?

A はい。そういう斬新じゃないくて。はい。みなさんお間違えに。くつくつくつ。

B 変な笑い方だ…。

A ごめんなさい。このザンシンというのは残る心と書いて、残心と読みます。

B ああ、残る心で。ザンシン。

A この残心というのは元々、剣道などの武道にも使われる気持ちのことです。

B へえ。剣道に?

A はい。例えば、剣道の試合で面一本をとった場面があるとします。

B はい。メーンと。

A その面一本を取った直後に嬉しくて、すぐにガッツポーズをしてしまった場合、その一本は無効になったりするんです。

B ええ!?無効になるんですか?

A そうなんです。面一本取って、勝ったとしても、すぐにガッツポーズなどせず、心を残し、余韻を持って、ゆっくりと竹刀を収める。それが対戦相手への礼儀になるんですね。

B へえ。知りませんでした。

A これが残心の気持ちなのです。

B へえ。それを接客で使うんですね。

A そうです。それでは、この残心の気持ちを接客にどのように使うのかやっていきます。

B はい。

A それでは私が見本を見せますので、お客様役でそこに立っていてください。

B はい。わかりました。

A コーヒーの入ったカップをおぼんに乗せて、残心の気持ちを持ってお客様にお出しします。「お待たせしました。ブレンドコーヒーでございます」

残心コーヒー出し

B え?え?え?…そんなに心残します?

A すいません。今のは残心が足りてませんでした。

B 足りてないんですか?

A はい。もう一度させてもらいますね。

B え?もう一度?

A それでは「お待たせしました。ブレンドコーヒーでございます」

残心コーヒー出し

A はい。これぐらい残しましょう。

B お客さん怒らないですか?出すの遅すぎじゃないですか?

A 大丈夫ですよ。それでは、あなたも残心の気持ちをもって、コーヒーをお出しする練習をしてみましょう。

B ええ?わかりました。

A 私がお客様役でここにいますから、どうぞコーヒーをお出しになってください。

B はい。えっと。「お待たせしました。ブレンドコーヒーでございます」

残心コーヒー出し

A はい〜。もっと~。残して~。心残して~。もっと気持ちをつくってください~。

B まだですかあ?

A まだですよ~。余韻を〜。余韻を楽しんでくださーい。もっと~。

B う~。はい。こんな感じですか?

A うん。100点。

B 100点!?100点なんですか?

A これはこれは経験者でしたか。

B 違います。初めてやりましたよ。

A 初めてですか?え?ちょっともう一度お願いしていいですか?

B もう一回やるんですか?

A 是非ともお願いします。

B わかりましたよ。「お待たせしました。ブレンドコーヒーでございます」

残心コーヒー出し

A ああ、すごいですね〜。はい〜。気持ちをつくって〜。お客様への感謝の気持ちをつくって〜。余韻を楽しんで〜。

B こんな感じですかあ~(残心続けつつ)

A まだまだ〜。ああ、もうたまらない!私も!

B お客さんですよね!

残心コーヒー受け取り

B お客さん残心しないでしょ。

A あなたもやめないで~。もっともっともっと~。心残して〜。

B こんな場面見たことないですよ。店員とお客さんがこんなん!

A は~い。ありがとうございます。あのね、私あなたのこと勘違いしてました。あなたはこの残心の世界の虎だと思っていました。でも違いました。あなたは龍です。

B 龍!?どういうこと?

A あなた、残心の才能がある。

B いらない…。全然いらない。

A 龍が目覚めたところで、もうすぐ開店の時間なので、よろしくお願いしますね。

B ええ!?ちょっと待ってください。レジのやり方とかコーヒーの作り方とか教えてもらってないですよ!

A あなたは残心担当です。

B どんな担当なんですか!僕大丈夫ですか?

A さあ、まずはお店のBGMをつけましょう。

B ええ?

A そこです。あのテープを変えてくださいね。

B はい。えっと、これですかね?

A 心残して〜。

B テープに心残さなくていいでしょ。

A それでは、私がえぐいほどのお金持ちだから、ただ趣味でやってる喫茶店オープンです!

B ああ、なんかもう納得です。

ラジカセ ON

タコ足 OFF(青照明)


[その3 ガム沼をつくろう]

きこり:平井/神:浦井


パーテーション下手2枚

ラジカセ OFF

タコ足 ON


きこ あ~、やってしまったよう。僕はなんてドジなんだ。大切な斧を、木を切る大切な斧を、ガムの沼に落としてしまった!ガムの沼だから一度落としてしまったら最後、取り出すことはできないんだよ。どうしよう~。

神 ご心配には及びませんよ!

きこ え?誰ですか?

神 私はガム沼の神。

きこ ガム沼の神!?

神 今からあなたに質問をします。見事答えられたのならあなたが落とした斧をお返ししましょう!

きこ え?返してくれるんですか?ありがとうございます!

神 それでは直接そちらまで質問しにいきます!

きこ はい!お願いします!

ガム沼に引っ張られながら神出てくる。

神 あなたが落としたのはこの金の斧、それとも…

ガム沼に引っ張られてはける

きこ ああ!ええ!?ええ!?

ガム沼に引っ張られながら神出てくる。

神 あなたが落としたのはこの金の斧。それとも…

ガム沼に引っ張られてはける

きこ ああ!すごいガムにまみれている!ガムに引っ張られている!

ガム沼に引っ張られながら神出てくる。

神 あなたが落としたのはこの金の斧…

ガム沼に引っ張られてはける

きこ なんて言った?今なんて言ったんですか?

神 さあ!質問にお答えください!

きこ いや、質問がよく聞こえませんでした!

神 そうですか。仕方ありませんね。それではもう一度チャンスを!

ガム沼に引っ張られながら神出てくる。

神 あなたが落とし…

ガム沼に引っ張られてはける

きこ 早い早い!ガム強い!ガムが強いです!

神 …さあ質問にお答えください!

きこ いや、「あなたが落とし」しか言ってませんでしたよ!

神 あれれ。そうでしたか。困りましたな。どうやったら私の質問があなたに届くのだろうか。

きこり いや、もう今、俄然会話できてるので、今、そこから質問してもらっていいですか?

神 いや、これは実際に目で見てもらったほうがいいやつですので、そういうケースですので、もう一回行きますね。

きこ ええ?もう、わかりましたよ。じゃあ、ガムに負けないでくださいね。

神 よしゃー!

きこ すごい気合い入った!

ガム沼に引っ張られながら神出てくる。

神 あなたが落としたのは、この金の斧ですか、それともこの銀の斧ですか、あ、これ普通の斧でした!ごめんなさーい!

ガム沼に引っ張られてはける

きこ すごいごちゃごちゃしてましたよ!

神 …さあ質問にお答えください!

きこ ちょっと!でもまあ、なんとく質問はわかりましたよ!僕が金の斧か銀の斧どちらを落としたかですよね?

神 その通りです!…でも今さっき持ってたのは普通の斧だったから、ちゃんと銀の斧の実物見たいよね?

きこ いや、いいです!もう、いいです!

神 いきます!

きこ いいですって!

ガム沼に引っ張られながら神出てくる。

神 銀の斧!これが銀の斧!

ガム沼に引っ張られてはける

きこ わかりやすい!僕が落としたのは普通の斧です!金の斧も銀の斧も落としてないです。

神 ふぱ~。正直者だあ~。ふぱ~。

きこ 何?ふぱ〜?

ガム沼に引っ張られながら神出てくる。低い姿勢で。

きこ わあ!安定する姿勢を見つけた!

神 あなたは正直者だあ~。ふぱ~。ふううぱ~!

ガム沼に引っ張られてはける

きこ ああ!まただ!もう!ふぱ~って力抜ける言葉言うから!ちょっと!神様!

ガム沼に引っ張られつつも、すごい余裕で現れる。

きこ ああ!ガムに慣れた!

神 シュー。シュー。(凛とした立ち姿)

きこ 凛としている!出で立ちが強そう!

神 あなたは正直者ですね。金の斧、銀の斧まとめて差し上げます!

きこ 筋肉見せなくていいんですよ。でもありがとうございます!

神 さあ、これをどうぞ。(金の斧と銀の斧を渡す)

きこ はい。(受け取るが、ずど~ん)重い!!なんですか、この斧!すごい重いです!

神 はっはっはっは。

きこ (持ち上げようとするが一向に持ち上がらない)

神 はっはっはっは。

きこ 重たい!

神 はっはっはっは。さあ持ち帰りなさい。

きこ これ人間が持てない重さですよ!

神 あーはっはっはっは!

きこ ああ!人間の非力さを楽しんでる!!

神 はっはっはっは。あのよかったらその非力の理由を教えて?

きこ なんて嫌な神だ!ちょっともうこの金の斧も銀の斧もいらないです!僕が落とした普通の斧を返してください。それだけでいいんで。

神 そうかい?わかった。なんと無欲な人間さんだ。わかりましたよ。普通の斧を返しましょう。一回キュッと少し前に出て。(するするするーとはける)

きこ 掃除機のコードみたいに。

ガム沼の神はける。そして普通の斧持って現れる

きこ ああ、それです。僕の斧です。

神 どうぞ。(普通の斧を渡す)

きこ ありがとうございます。(受け取るが、ずど~ん)ええ!?重い!

神 はっはっはっは。

きこ ちょっと何で普通の斧がこんなに重いんですか!

神 重くしといた!

きこ なんでだよ!なんていじわるな神様なんだ!

神 いじわるだって!そのセリフそっくりそのまま、熨斗をつけてお返しするよ!着払いでね!

きこ なんでなんですか!

神 お前たち人間は私という神に何をしたと思う?

きこ え?いや、別に何もしてないですよ。

神 いいかい?ここはガム沼です。

きこ そうですけど。

神 でもね、昔はそれはそれは美しく澄み切った湖だったんですよ。

きこ え?そうだったんですか?

神 そうです。その時はね、美しい湖で機嫌がずっとよかったから、何を落とされても、全部金と銀に変えて、無条件にあげてた。

きこ ええ!?無条件で。なんというボーナスチャンス。

神 もうね、みんなね、色んなもの投げてきた。

きこ そうでしょうね。金と銀になって戻ってくるんだったら。

神 後半の方になったら、ある男が来て、もう普通のもの投げるの飽きてきたんかな、逆に金を投げてきたよ。

きこ 金!?

神 金投げられたと思って!いやいやいやと思って。おい〜ってやったんです。あ、ちなみに湖だった時、澄み切ってたから、もうね、湖の底と地上で目合ってたよ。

きこ 目合ってたんですか!そんなに!?

神 (お前やるなあ~みたいなジェスチャー)

きこ 信じがたい光景ですけど。それは。

神 それで、そいつに、お前面白いやつだなって思ったから、めちゃくちゃたくさん金をあげたんだ。

きこ へえ。

神 すると、その人間は何したと思う?その金を元手に湖の上流にガム工場を建設したんだ。

きこ ええ!?ガム工場?

神 そうだ。毎日毎日その工場から工業廃水が垂れ流されてるんだ。

きこ それはひどいですね。

神 工業廃水ではないな!工業廃ガムだ!工業廃ガムが流されるもんだから、湖ではなく、ガムの沼になってしまったというわけだ。

きこ そうだったんですか。

神 そうだ!お前たち人間が、この汚いガム沼をつくったんだー!

きこ なるほど。それで、こうして人間たちにいじわるをしているわけですね?

神 そうだよ。悪い?湖だった頃はね、もっとスッと出てこれたよ!こんなガムがまとわりつくことはなかったよ!もっと話早かったよ!図らずもすごいパワー身についちゃったよ。何か悪いことしてる?何か文句でも?

きこ いやいや。これは完全に、全面的に人間が悪いです。

神 え?!

きこ わかりました。上のガム工場。すぐに撤退します。

神 ええ!?撤退?

きこ はい。実はあそこの工場、うちの父の工場です。

神 ええ!?君は、あいつの息子か!

きこ はい。僕は父に世話になるのが嫌で、木を切る仕事をしてました。でももう潮時ですね。

神 ほうほう。

きこ 父は僕にあの工場を継がせたがっています。だからあの工場を継ぎます。そしてここから撤退させます。

神 え!?いいのか?

きこ でも、一応従業員達の生活もあるので、工場を移転して、別の場所で営業をしたいと思います。

神 ああ、従業員もいるもんね。

きこ そして、このガム沼の浄化計画も立てていきたいと思います。

神 ええ!?そんなことまで。

きこ これは僕が背負うべき責任というものです。

神 ああ、そう。なんかありがとう。

きこ いや、ごめんなさい。

神 いやいやいや。

きこ それでは、早速父に話をつけに行ってきます。

神 ああ。もう行くのか?

きこ はい。それでは。

神 あ!ちょっと。

きこ はい?

神 あの、それ。(床に置いてある金の斧と銀の斧と普通の斧を指差す)

きこ はい?

神 持ってって。

きこ え?だって、これは…(持ち上がる)え?軽い!

神 あのさ、工場を移転する時は金がいるでしょう。それも足しにしてくれよ。

きこ あ、ありがとうございます。

神 まあ、足らなかったら、全然相談して。

きこ はい!

神 ふう。(タコ足の方へ)

きこ ふう。(ラジカセの方へ)

神 優しい人間もいるもんだな。

きこ 優しい神様もいるもんだな。(同時に)

ラジカセ ON

タコ足 OFF(青照明)


[その4 流行をつくろう]

ナカモト:浦井/ハヤリガワ:平井


パーテーション真ん中1枚(ハヤリガワはパーテーション裏でセクシー着替え)

ラジカセ ON

タコ足 OFF


ナカ ハヤリガワ様!

ハヤ ん?ナカモトではないか。

ナカ お寛ぎのところ申し訳ありません。

ハヤ よい。どうした?

ナカ 私め、ナカモトは世間とハヤリガワ様をつなぐ役目を担っております。

ハヤ ああ。ナカモトがいなければ世間の事情を知ることはできないからな。

ナカ もうまもなく年が明けます。

ハヤ 光陰矢の如しとはよく言ったものだ。

ナカ ハヤリガワ様は世の中の女性達の流行をつくる流行師という職業であります。

ハヤ とても、やりがいのある仕事である。

ナカ しかしながら来年の流行がまだ決まっておりません。

ハヤ ああ、そうだったか。

ナカ つきましては流行師ハヤリガワ様に来年の流行をお聞きしたいのであります!

ハヤ いいだろう。私にできることなら何でも協力しよう。

ナカ ありがたき幸せ!それでは、まずお伺いします!来年の流行色をお教えください!

ハヤ 流行色か…よかろう。それでは来年の流行色を発表しよう!

ナカ はは!(携帯を準備、生唾ごくん)

ハヤ モスグリーン!!

ナカ (携帯に)モスグリーンだ!来年の流行色はモスグリーンだ!モスグリーンが流行るぞ!モスグリーンだ!モスグリーンだ!(携帯を切り)ありがとうございます。

ハヤ よいよい。

ナカ ハヤリガワ様、大変恐縮なのですが、もう1つお伺いしたいことがございます。

ハヤ 何でも聞くが良い。

ナカ はい。実は来年の流行する写真に写る時のポーズもお教えいただきたいのです!!

ハヤ ふむ、よかろう。それでは来年の流行する写真に写る時のポーズを私が実践してみせよう!

ナカ はは!(携帯を準備、生唾ごくん)

ハヤ 片手ダブルピース!!

ナカ 片手ダブルピースだ!片手ダブルピースだ!ハヤリガワ様お写真を撮ってもよいでしょうか?

ハヤ よいぞ。

ナカ (写真を連写)ハヤリガワ様!パノラマ写真もいただいてよいでしょうか!(パノラマ写真を撮る)

ハヤ よいぞ。パノラマ!パノラマ!パノラマをもらいに行く!自らパノラマをもらいに行く!

ナカ もしもし!今写真を送った!片手ダブルピースだ!来年流行するポーズは片手ダブルピースだ!ありがとうございます。

ハヤ よいよい。気をつかうな。

ナカ はは!あのハヤリガワ様、最後に一つお頼みしたいことが。

ハヤ どうした?

ナカ 実は、来年の女性達が使用する流行語を教えていただきたいのです!

ハヤ なるほど。流行語は、なかなか骨が折れる作業だ。

ナカ ご無理なら、おっしゃってくださいませ。

ハヤ 私は由緒正しいハヤリガワの一族。こんなところで投げ出したらハヤリガワの名が汚れる。

ナカ ハヤリガワ様!ご立派になられて。ぐすん。

ハヤ こら、ナカモト。お前が泣いてどうする。

ナカ 申し訳ありません。つい。たくましくなられましたね。

ハヤ それで、その流行語とはどんなものがいいのだ?

ナカ はい。少し前にハヤリガワ様が提案した流行語、「ンゴ」がありましたよね。

ハヤ ああ、語尾に「ンゴ」をつけるやつだな。確かにあれは私が考えた!

ナカ はい。見事SNSなどで多用されておりました。「お疲れー」には「お疲れンゴ」。「パンケーキ美味しかった」には「パンケーキ美味しかったンゴ」などなど。さすがでございます。

ハヤ ふん。私はまだまだ未熟者である。

ナカ 年が変わるということで、ハヤリガワ様には、この「ンゴ」に代わる次の流行する語尾をお教えいただきたいのです!!

ハヤ 流行する語尾か…よかろう!

ナカ ありがたき幸せ!

ハヤ それでは「このパンケーキ美味しかった」を例文にし、来年の流行する語尾を発表しようじゃないか!

ナカ はは!(携帯を準備、生唾ごくん)

ハヤ このパンケーキ、美味しかったんねんまんねん!!

ナカ (携帯で)もしもし!来年の流行語尾は美味しかったんねんまん…ん?ちょっと待ってくれるか。(電話切る)すいません。あの、ハヤリガワ様。

ハヤ ん?どうした?

ナカ …このパンケーキ美味しかったんねんまんねんは…その…大丈夫でしょうか?

ハヤ 気に召さぬのか?

ナカ いえ、そういうわけではないのですが。

ハヤ …うむむむむむむ。(刀の柄に手をかける)

ナカ ハッ!ハヤリガワ様!まさか、その刀をお抜きになるのでは!?

ハヤ うむむ。抜かざるを得ぬ!

ナカ ひい!ハヤリガワ様早まらないでください!

ハヤ 我がハヤリガワ家に伝わる伝家の宝刀だ、轟け!(刀を抜きながら)撤回丸!今の撤回!

ナカ 撤回だー!美味しかったんねんまんねんは撤回だー!たんねんまんねんは撤回ということでよろしいでしょうか?

ハヤ うむ。

ナカ ハヤリガワ様、見事な撤回でございました。

ハヤ それでは改めて、来年に流行する語尾を発表しよう!

ナカ はは!

ハヤ このパンケーキ、美味しかったニシ!ジャンボタニシ!撤回!

ナカ 早い!撤回が早い!なんて早さだ。

ハヤ フシュー。

ナカ お見事でございました。撤回したことに気づかないほどの早さでございました。

ハヤ なかなか骨が折れるな。流行語尾は。まだまだいくぞ!

ナカ はは!

ハヤ このパンケーキ、美味しかったーボエンジン!ブオン!撤回!

ナカ またもや!

ハヤ このパンケーキ美味しかったーるタルソース!撤回!

ナカ 早い!早すぎる!もうすでに刀を抜いて待機している!

ハヤ このパンケーキ美味しかったんぼ!もうすぐ田植えの季節です!撤回!…うぐっ(膝がくん)

ナカ ハヤリガワ様!?

ハヤ 来るな!

ナカ え?!ハヤリガワ様!このまま撤回し続けるとお体が持ちません!もう、おやめください!(近寄ろうとする)

ハヤ 来るなと言っている!

ナカ …ハヤリガワ様…?どうしました?

ハヤ 来てくれるな。ここでナカモトの肩を借りたのなら、私はそこまでの女。

ナカ 何をおっしゃってるのですか!早くお休みになられてください!

ハヤ 私は、流れ行く川に身を委ねし人類に、一筋の光を、聖なる祝福を与えるためにこの世に遣わされたのだ!…私の名はハヤリガワ、マチコである!!!

ナカ ぶわっ!(泣き)マチコ様…。いつの間にここまで大きくなられたのか…。

ハヤ はあはあ。私は負けん。これが流行師の宿命である!!

ナカ マチコ様。あなた様は間違いなくハヤリガワ家始まって以来の、史上最高の流行師であります!!

ハヤ 振り落とされるなよ。ナカモト!

ナカ はい!(涙を拭いつつも携帯を準備)

ハヤ このパンケーキ美味しかったんツボ!カーペッ!撤回!ぐふっ!

ナカ マチコ様!くっ。(駆け寄ろうとするが必死に耐える)

ハヤ それでいい…。それでいいのだ、ナカモト。このパンケーキ美味しかっ炭酸水!グビッシュワッ!撤回!ぐふっ!

ナカ マチコ様。くっ!私は無力。あまりにも無力でございます!

ハヤ 無力ではない!そなたの支えがあってこそのハヤリガワ家なのだ!

ナカ …もったいなきお言葉です。

ハヤ この身が滅びようとも、必ず、流行する語尾を決めてみせる!

ナカ マチコ様…。

ハヤ このパンケーキー、美味しかったーノサウルス!!ぐっ!

ナカ は!!マチコ様!これは!

ハヤ はあ、はあ。

ナカ マチコ様!今の語尾を様々な言葉でお試しを!

ハヤ あ、ああ。…お疲れーノサウルス!

ナカ おお!いけてます!

ハヤ 明日学校嫌だなーノサウルス!

ナカ おお!学生でもいけます!

ハヤ うちのセクハラ上司ハゲてるーノサウルス!

ナカ OLもいけます!

ハヤ 博物館で見た一番好きな恐竜は、ティラノサウルスーノサウルス!!

ナカ 万能だ!ティラノサウルスにも当てはまった!!んーノサウルス万能だ!今年の流行語尾は、んーノサウルスに決まりだ!ありがとうございます!

ハヤ ふう。ふう。ふう。

ナカ このナカモト。万感の思いであります!

ハヤ 私は…やったのか。(膝がくん)

ナカ マチコ様!大丈夫ですか!こちらへ。(体を受け止め、壁にもたれさせる)おい!誰かいないか!医者を呼んでくれ!おい!ん?

ハヤ くう~、くう~。

ナカ これは。

ハヤ くう。くう。

ナカ お眠りになられている。こんなになるまで。まるで赤子のようです。大変よく頑張りましたね。それではお休みのミュージックを。

ラジカセ ON

ナカ それではマチコ様、おやすみなさいーノサウルス。

タコ足 OFF(青照明)


[その5 コントをつくろう]

学生A:平井/学生B:浦井


パーテーション両端

ラジカセ OFF

タコ足 ON


A せえの!弱音吐いて慰めてジャンケンポン!(勝つ)

B (負ける)女子にモテないよう~。

A 大丈夫だよう~。弱音吐いて慰めてジャンケンポン!(負ける)。クラスの日陰者だよ~。

B (勝つ)大丈夫だよう~。

A 弱音吐いて慰めてジャンケンポン!(勝つ)

B (負ける)学生生活楽しくないよう~。

A 大丈夫大丈夫~!

B 何これ!何これ!これ何なん?

A だから、叩いてかぶってジャンケンポンならぬ、弱音吐いて慰めてジャンケンポン。

B 何やそのならぬ!変なならぬすんな!ほんまに何の遊びやねん。

A だから文化祭のクラスの出し物だよ

B どう出すねん!どう出し物にすんねん。

A ブースで。

B ブース!?ブースでやんの?できるわけないやろ!あかんあかん。ちゃんと考えよ。

A う~ん、でもさ、何で二人でクラスの出し物考えるんだよ。普通クラス全員で考えるものでしょ?

B しゃあないやろ。俺らはクラスカーストの一番下におるんやぞ。ピラミッドでいう砂に接しているところや。

A まあ、そうだけど。

B そんなやつらが、ピラミッドでいう一番鋭角なシュンってなってるところのメインのところに考えといてって言われたんやからな。

A いやさあ、そんなん悔しいよ。メインのところ見返したい。

B 大丈夫や!俺らには、勉強がある!

A 勉強!?

B そうや!勉強楽しいやろ?

A うん!勉強楽しい!勉強最高!

B 勉強を楽しいと思えることこそ財産!何よりのギフト!

A ギフト?

B もうええから、出し物考えよ。模擬店とかでもええけどな。たこ焼きとか。みんな好きやろ?

A あのさ、クラスの出し物、僕たち二人でコントをやってみるってのはどう?

B コント?いや、コントなんてやったことないしなあ。

A みんな最初はやったことないよ!チャップリンも最初はやったことなかったんよ!

B えらいビッグネーム出して。

A やってみようよ。裏でうじうじしてるより、表に出て笑われる方が僕はかっこいいと思う。

B …うん。そうやな。やるか。

A うん!コントをつくろう!

B でも何から手をつけていいかさっぱりや。

A 僕に考えがある!

B 何?

A 僕らのさっきからの、クラスの出し物考えるやりとりあるでしょ?

B うん。

A それをそのままコントとしてやってみるのはどう?

B ええ?

A 僕ら完璧に賢いから、さっきから今ままでのやりとり完全に覚えてるでしょ?

B まあ俺ら勉強だけが取り柄やからな。

A ちょっとやってみよう。あの弱音吐いて慰めてジャンケンポン辺りから。

B そこからね。

A あ、コントなんだから、動きを大きくしてやろう!

B わかった!動きを大きくしてやるんやな!

A よーいスタート!

コント中コント(動きを大きく)

A せえの!弱音吐いて慰めてジャンケンポン!(勝つ)

B (負ける)女子にモテないよう~。

A 大丈夫だよう~。弱音吐いて慰めてジャンケンポン!(負ける)。クラスの日陰者だよ~。

B (勝つ)大丈夫だよう~。

A 弱音吐いて慰めてジャンケンポン!(勝つ)

B (負ける)学生生活楽しくないよう~。

A 大丈夫大丈夫~!

B 何これ!何これ!これ何なん?

A だから、叩いてかぶってジャンケンポンならぬ、弱音吐いて慰めてジャンケンポン。

B 何やそのならぬ!変なならぬすんな!ほんまに何の遊びやねん。

A だから文化祭のクラスの出し物だよ

B どう出すねん!どう出し物にすんねん。

A ブースで。

B ブース!?ブースでやんの?できるわけないやろ!あかんあかん。ちゃんと考えよ。

A う~ん、でもさ、何で二人でクラスの出し物考えるんだよ。普通クラス全員で考えるものでしょ?

B しゃあないやろ。俺らはクラスカーストの一番下におるんやぞ。ピラミッドでいう砂に接しているところや。

A まあ、そうだけど。

B そんなやつらが、ピラミッドでいう一番鋭角なシュンってなってるところのメインに考えといてって言われたんやからな。

A いやさあ、そんなん悔しいよ。メインを見返したい。

B 大丈夫や!俺らには、勉強がある!

A 勉強!?

B そうや!勉強楽しいやろ?

A うん!勉強楽しい!勉強最高!

B 勉強を楽しいと思えることこそ財産!何よりのギフト!

A ギフト?

B もうええから、出し物考えよ。模擬店とかでもええけどな。たこ焼きとか。みんな好きやろ?

A あのさ、クラスの出し物、僕たち二人でコントをやってみるってのはどう?

B コント?いや、コントなんてやったことないしなあ。

A みんな最初はやったことないよ!チャップリンも最初はやったことなかったんよ!

B えらいビッグネーム出して。

A やってみようよ。裏でうじうじしてるより、表に出て笑われる方が僕はかっこいいと思う。

B …うん。そうやな。やるか。

A うん!コントをつくろう!

B でも何から手をつけていいかさっぱりや。

A 僕に考えがある!

B 何?

A 僕らのさっきからの、クラスの出し物考えるやりとりあるでしょ?

B うん。

A それをそのままコントとしてやってみるのはどう?

B ええ?

A 僕ら完璧に賢いから、さっきから今ままでのやりとり完全に覚えてるでしょ?

B まあ俺ら勉強だけが取り柄やからな。

A ちょっとやってみよう。あの弱音吐いて慰めてジャンケンポン辺りから。

B そこからね。

A あ、コントなんだから、ちゃんとお客さんを意識してやろう!

B わかった!ちゃんとお客さんを意識してやるんやな!

A よーいスタート!

コント中コント中コント(お客さんを意識する)

A せえの!弱音吐いて慰めてジャンケンポン!(勝つ)

B (負ける)女子にモテないよう~。

A 大丈夫ですよね。弱音吐いて慰めてジャンケンポン!(負ける)。クラスの日陰者だよ~。

B (勝つ)大丈夫ですよね。

A 弱音吐いて慰めてジャンケンポン!(勝つ)

B (負ける)学生生活楽しくないよう~。

A 大丈夫ですよね!大丈夫ですよね!

B 何これ!何これ!これ何なんですかね?

A だから、叩いてかぶってジャンケンポンならぬ、弱音吐いて慰めてジャンケンポンじゃないですか。

B 何やそのならぬ!変なならぬしてますよ!ほんまに何の遊びなんですかね!

A だから文化祭のクラスの出し物ですよね?

B どう出すねん!どう出し物にするんですかね?

A ブースですよね?

B ブース!?ブースでやんの?できるわけないやろ!あかんあかん。ちゃんと考えましょ!

A う~ん、でもさ、何で二人でクラスの出し物考えるんですか。普通クラス全員で考えるものじゃないんですか!

B 仕方ないですよね!僕らはクラスカーストの一番下におるんですよ。ピラミッドでいう砂に接しているところです。

A まあ、そうですけど。

B そんなやつらが、ピラミッドでいう一番鋭角なシュンってなってるところのメインのところに考えといてって言われたんですから!

A いやさあ、そんなん悔しいですよ!メインのところ見返したいですよ!

B 大丈夫です!僕らには、勉強があります!

A 勉強っていいましたよ!?

B そうや!勉強楽しいでしょ?

A うん!勉強楽しいです!勉強最高ですよね!

B 勉強を楽しいと思えることこそ財産!何よりのギフトなんです!!

A ギフト?確かに英語で才能のことを神様からの贈り物っていう意味でギフトって言いますけども。

B もうええから、出し物考えましょ。模擬店とかでもええですよね。たこ焼きとか。みなさん好きですよね?どうですか?

A あのさ、クラスの出し物、僕たち二人でコントをやってみるってのはどうでしょうか?

B コント?コントって言ってますよ。僕らはコントなんてやったことないんですよ!

A みんな最初はやったことないですよね!チャップリンも最初はやったことなかったんですよね!

B えらいビッグネーム出してますよ。

A やってみましょうよ。裏でうじうじしてるより、表に出て笑われる方が僕はかっこいいと思います。

B …皆さん、彼の言葉どう受け取りましたか?僕の心には染み渡りました。コントやってみようと思います。

A うん!コントをつくりましょう!

B でも何から手をつけていいかさっぱりですよ。

A 僕に提案があります。

B 提案ですって。

A 僕らのさっきからの、クラスの出し物考えるやりとりあるでしょ?

B うん。

A それをそのままコントとしてやってみるのはどうですかねという相談です。

B ええ?

A 僕ら完璧に賢いから、さっきから今ままでのやりとり完全に覚えてるでしょ?

B まあ僕らはね、勉強だけが取り柄ですからね。

A ちょっとやってみましょう。あの弱音吐いて慰めてジャンケンポン辺りから。

B そこからね。

A あ、コントなんだから、しっかり間を気にしてやりましょう!

B わかった!しっかり間を気にしてやるんですね!

A よーいスタート!

コント中コント中コント中コント(間を気にする)

A せえの!弱音吐いて慰めてジャンケンポン!(勝つ)

B (負ける)女子にモテないよう~。

A 大丈夫だよう~。弱音吐いて慰めてジャンケンポン!(負ける)。クラスの日陰者だよ~。

B (勝つ)大丈夫だよう~。

A 弱音吐いて慰めてジャンケンポン!(勝つ)

B (負ける)学生生活楽しくないよう~。

A 大丈夫大丈夫~!

B …ちょっとごめんな!間を気にしてる最中にごめん!今これはどっち?

A 何々?どっちとは?

B いや、ちょっとよくわからんようになって。この今やってるのってコントやんな?

A コント?何言ってんの?これはクラスの出し物候補、叩いてかぶってジャンケンポンならぬ、弱音吐いて慰めてジャンケンポン。

B 何やそのならぬ!変なならぬすんな!ほんまに何の遊びやねん。ちょっと待って!

A 何?

B ちょっとよくわからんことになってきた。

A 一応今のやつをブースでだそうと思ってるんだけど。

B ブース!?ブースでやんの?できるわけないやろ!おい!ちゃんと軌道修正すな!そうやなくて、教えて?今リアル?コント?

A え?コント?

B そうや。コントかリアルか、どっちやって聞いてんねん。

A なるほどね。コントか。いいかもしれないね。二人でコントをしよう。

B いや、そうじゃなくて。

A みんな最初はやったことないよ!チャップリンも最初はやったことなかったんよ!

B えらいビッグネーム出してって。…いや後半の流れに組み込まれてる!

A やってみようよ。裏でうじうじしてるより、表に出て笑われる方が僕はかっこいいと思う。

A うん!コントをつくろう!

A 僕に考えがある!

A 僕らのさっきからの、クラスの出し物考えるやりとりあるでしょ?

A それをそのままコントとしてやってみるのはどう?

A 僕ら完璧に賢いから、さっきから今ままでのやりとり完全に覚えてるでしょ?

B ああ!コントに飲み込まれている!!

A ちょっとやってみよう。あの弱音吐いて慰めてジャンケンポン辺りから。

A あ、コントなんだから、二度と現実に戻ってこないつもりでやろう!

B おい!現実に戻ってこないってどういうことやねん!おいって!

A よーい!

B やめろ!

A スタート!…っていうコントを出し物でしようか?

B いや!これはちょっと怖いかな!!

A 怖いかあ〜。

ラジカセ ON

タコ足 OFF(青照明)


[その6 その場をとりつくろう]

怪人:平井/男性:浦井


パーテーション両端

ラジカセ OFF

タコ足 ON

怪人 レディース&ジェントルメン&ボーイズ&ガールズ&オールヒューマン!オールヒューマン!お集まりいただき感謝いたします。今から行いますはオーブントースターチャレンジでございます。さて、ここにいる男性は今から何が起こるか全く聞かされておりません。そうですね?

男性 はい。聞いてないです。

怪人 只今より、このオーブントースターがチンッと鳴るまで、私とやりとりをしていただきます。チンッと鳴りましたら終わりの合図です。終わりーっと私が言います。何分間かはわかりません。怖いですね~とても恐ろしいことであります。それでは早速始めましょう。ヒューマンタイマー!タイマーヒューマン!(タイマーを回す)始まり始まり~。

何かしら(ここは自由に即興で)

オーブントースターチンッ

怪人 おわりー!おわりおわりおわりー!!お見事でございました。皆様彼に盛大な拍手をお送りください!それではまたお会いする機会を願っております。レディース&ジェントルメン&ボーイズ&ガールズ&オールヒューマン!オールヒューマン!バイバイ!

ラジカセ ON

タコ足 OFF(青照明)


[その8 人間をつくろう]

男:浦井/でっかいカブトムシ:平井


壁にかけてあった衣装、小道具すべてを組み合わせ、平井が真ん中に立つことで、でっかいカブトムシになる。平井はずっと腕を組んでいる。

パーテーションちょい両端

ラジカセ OFF

タコ足 ON

でっかいカブトムシが立っている。


男 (前にいるであろうヤンキーに向かって)え?え?え?お金?お金、持ってない。お金持ってないって!なんだよ、いきなりお金出せって。言っとくけどな、俺のバックには、でっかいカブトムシついてっから!マジで!だから!俺のバックにはでっかいカブトムシついてっから!ほら!見てよ。ほら、でっかいカブトムシ!…(お金を渡す)はい。すいませんでした。次からはさっさと出します。はい。はい。すいませんでしたー。(ヤンキーを見送る)なんだよ~。ついてない。もう!(カブトムシに向かって)なあ!なあ!

カブ ん?

男 ん?じゃないよ。何をぼーっと見てんだよ。こっちはカツアゲされてたんだぞ。

カブ カブトムシというのはね、カツアゲが何か知らない。

男 何で知らないんだよ。カツアゲは人からお金を巻き上げることだよ。

カブ なるほど。カブトムシはこのご立派なツノで相手を突き上げるカチアゲしか知らない。

男 カチアゲを知らないよ。こっちは。

カブ それでは、お互い勉強になったな。よかったな。握手だ。(4本手握手)

男 ん〜多いよ。どの手で握手するんだよ。

カブ 一通り頼む。

男 はあ。もういいよ。めんどくさい。

カブ なんでもめんどくさがるな。お前は、あれか、めんどくさがり屋さんか?

男 溜めて言うことでもないだろ。めんどくさがり屋さんだよ。

カブ そうか。これもまた勉強になった。感謝するぞ。小さき人間よ。

男 別に小さくないし。でっかいカブトムシなんだったらさ、あんなへなちょこヤンキー追い払ってくれてもよかっただろ?

カブ まったくムシのいい話をするじゃないか?そんな話は無視だ。言うまでもなくカブトムシだけにのやつだ!

男 いちいち言うなよ。おい。でっかいカブトムシ?おい。なあって。おい!でっかいカブトムシ!

カブ …。

男 無視だよ。…はあ。(パソコンの前に座り独白)そうです。僕のバックにはでっかいカブトムシがついてるのです。はい。意味わかりませんよ。僕も意味わかりません。何かの小説で朝起きたら虫になっているというものがありました。僕の場合は朝起きたらバックにでっかいカブトムシがいました。どうゆうことー??どゆことー??本当にどゆことな現象です。

カブ 誰と話している?

男 わあ!びっくりした。なんだよ。もう無視はやめたのかよ。

カブ ああ。無視するのも疲れるものだ。そんなことより誰と話していると聞いているんだー!

男 どこにスイッチあるんだよ。こわいな。これは音声日記だよ。

カブ 音声日記?

男 ああ。パソコンに音声で日記を残しておこうと思って。

カブ ほう。書けよ。

男 いいだろ別に。書くのめんどくさいんだよ。

カブ おい。おいおい。まさか、お前、あれなのか?…めんどk…

男 めんどくさがり屋だよ。溜めて言うほどのことじゃないんだよ。

カブ どうしてそんな音声日記なるものをつけているのだ?

男 お前だよ!こうやって、でっかいカブトムシが出てきてからだよ!こんな珍しい出来事ないだろ?だから日記として残しておくんだよ。もしも夢だったらさ、明日の朝になったらこの日記は残ってないはずだろ。

カブ なるほど。結果はどうだ?

男 ふう。それがずっと残ってんだよ。最初から。

カブ そうか。最初というと、私と君の出会いからあるのか?

男 そうだよ。最初の出会いの日の音声日記なんて、発狂もんだぞ。

カブ ほう。そんなものがあるなんて知らなかった。よし聞かせろ。ほれ聞かせろ。やれ聞かせろ。それ聞かせろ。

男 わかったわかった!わかったよ。これだよ。(パソコンのスイッチオン)

パソコンから 意味わからん!意味わからん!助けて!夢だよな!夢なら覚めて!覚めてー!助けてー!誰かー!夢覚めてー!頭おかしなったー!でっかいカブトムシってなに!?頭おかしなったー!誰か助けてー!

男 こんな感じ。

カブ みっともないな。

男 うるさいな!こうなるだろ。いきなりでっかいカブトムシが出てきたら。

カブ 夢なら覚めてー!

男 おい!バカにすんな!

カブ 誰か助けてー!

男 やめろって!

カブ 誰かヘラクレース!

男 言ってないよ。それは。

カブ 全く、今日のカツアゲといい、君はどれだけ人に頼れば気がすむんだ。

男 仕方ないだろ。こんな状況ないんだから!

カブ ない状況に対してどのような態度で対処するかで人間の器が決まるものだ。

男 言われなくてもわかってるよ。そんなこと。

カブ 君はどのような人間になりたいのだ?

男 どのような人間?別に考えたこともないけど、強いて言うならお金持ちとか。

カブ お金とか!そんなサイドメニューな!そんなサイドメニューなことを聞いてるんじゃないんだ。

男 なんだよ、サイドメニューって。

カブ お前の、お前自身の根源的な心の部分で、どうなりたいと思っているのだ?

男 わからないよ。そんなの。

カブ まったくお前には未来への指針というものがないのか?

男 ないよ。悪いかよ。

カブ …悪くない。

男 悪くないのかよ。

カブ ないならないで、今作ればいいのだ。さあ作れ!未来への指針を!そして自分の理想の人間をつくるのだ!

男 急に言われても、わからないって。

カブ 古の神々が人間を作ったという。しかし、神も触れることができない聖域がる。それは人間の中の自分というものだ。その自分をつくるのは自分自身なのである!!…どーん!!

男 口で言うなよ。もう。えっと未来への指針でしょ?えっと。あれかな、誰とでも仲良くなれて、友達とか多くて、人と人とを繋げられるような人間になりたいかな。

カブ …悪くない。

男 悪くないのかよ。

カブ しかし、甘い!

男 甘い?

カブ 樹液だ。

男 樹液?

カブ クヌギの木の樹液ぐらい甘い。

男 ピンとこないよ。

カブ いいか?誰とでも仲良くなりたい、結構だ。友達たくさんほしい、大いに結構。人と人とを繋げられるような人間になりたいか、素晴らしいじゃないか。

男 うん。

カブ しかし、そのすべてをねじ伏せる個!!

男 個??

カブ 個の力!己!己のみの力!衝撃的な個!最強の個!人に頼るな!己で行け!もう個!!もう個!!もう個!

男 個はわかったよ!

カブ その個の力を支えるは強靭な意志!揺らぐことのない意志!ガチガチの意志!

男 わかったわかった!

カブ つまりカブトムシのような意志だ!カブト意志だー!

男 何何何?カブト意志って。

カブ カブトムシだけにのやつだ。

男 それもういいよ!結局何が言いたいの?

カブ いいか。お前に決定的に足りないものは自信だ。強固な強靱なる自信だ。

男 …自信。

カブ 他と仲良くするのもいい。しかしそれを自信の無さからの逃避に使ってはいけない。他にも失礼である!

男 …うん。でも自信なんてどうやって持つんだよ。

カブ 簡単なことだ。持とうとするのだ。

男 持とうとする?

カブ 自信を持っているかどうかというのは単なる過去の話である。それは未来への指針ではない。自信を持とうとする、それこそ、未来への指針ではないか?

男 …うん。まあ何となくわかった気がする。

カブ わかってくれたか。

男 自信を持ってるかどうかじゃなく、これから自信を持とうとする。未来の話なんだね。

カブ うむ!これでお前もカブトムシの自信を持ったな!カブトムシの自信!カブトムシン…ジシンムシ…カブトジシンムシ…である!

男 うまいことはまらんかった。でも自信は確かに持ってなかったけど、自信を持とうとするというのは、出来そうな気がするよ。

カブ どうだ?人間がカブトムシ風情にアドバイスされた気持ちは?

男 嫌な言い方するなよ。

カブ おおっと失敬。失敬。失敬カブトムシ。失敬ムシ。

男 ああ、もう何でもいいんだ。でも、でっかいカブトムシってすごいんだな。人間より人間のことをわかってる気がするよ。

カブ 人間じゃないから、わかることもあるのだよ。

男 すごいな。さすがカブトムシはカブトムシでも、でっかいカブトムシだよな。

カブ ふふふ。私はまだ終わりではないぞ。

男 え?

カブ 私の成長過程を知ってるか?

男 え?カブトムシの?幼虫で、蛹になって、成虫、カブトムシになるんじゃないの?

カブ 正解だ。でも私はまだまだ未来を見据えている。今のこのでっかいカブトムシから、次は何に変身するのかとな。

男 まだあるの?

カブ そりゃああるさ。自分に自信を持ち、未来を向いてる限りはな。

男 そうか。そうだね。

カブ おっと。もうそろそろ。変身の時間だ。

男 え?変身するの?

カブ ああ。何か変身できそうな気がするんだ。

男 そう。

カブ 眠たくなってきた。

男 眠たくなった?

カブ ああ。新たな姿でまた会おうじゃないか。

男 うん。待ってるよ。

カブ では。おやすみカブ~。

男 急にカブトムシの語尾!

でっかいカブトムシは眠る。

男 カブトムシ?カブトムシ?うん。そっか。眠ったんだな。

でっかいカブトムシの前にパーテーションを一つ持って行き、閉じられる。

男 おやすみ。でっかいカブトムシ。

タコ足 OFF(暗転)、パソコンの明かりのみ

男は一息つく。パソコンを開く。

音声日記をつける。

男 あーあー。ごほん。本日の天候は…わからない。もう何週間も外に出ていないからだ。久しく太陽も月も見ていない。しかし、そんな生活も今日で終わりである。実験は成功したのである。被験体D−1Yがついにやってくれた。神は人間を作り、人間は自分自身を作る。その考えはもはや時代遅れである。

科学が人間を作れる時代になったのである。私は人間をつくることに成功した。正確には人格をつくったの方が正しいか。とある死刑囚を使い、人格を一から作り直したのだ。

恐ろしい死刑囚の人格からノーマルな人格に作り直すことは、変化の判断が難しいため、少々突拍子もないが、でっかいカブトムシという人格を当てはめてみた。

するとものの見事にでっかいカブトムシとして生きているではないか。元々恐ろしい殺人鬼であるこの死刑囚がこの研究で人格を変えたのだ。この研究があれば、この世から罪人はいなくなる。この国にも新しい未来がようやく訪れると言うわけだ。科学の名がつく賞はすべて私のものである。おっと。いけない。ここまで音声に残すとよろしくないね。消しておこう。

ふう。私はやったのだ。くくく。ようし。最後のデータを取ってこの研究を終えようか。

タコ足 ON(緑)

男はパーテーションを開く。

そこにコポコポとなってる被験体D1-Y。液体の中で浮遊してる感じ。緑っぽく光っている。

男 おっほっほっほ。生命維持装置、緑色の液体の中でしっかりコポコポとなっているな。大人しくコポコポとなっているなあ。

男は計器などを調べてる感じ。

男 うむうむ。いい子だ。

もう一度パーテーションを閉じる。

男 ふんふんふん。(夢見るシャンソン人形の鼻歌)

ラジカセ ON

夢見るシャンソン人形を流す。それに合わせて、機嫌よく指揮する感じ。そしてパソコンの前で研究成果をタイピング。

男 いいですねえ~!

パーテーションの裏から、ぬるっと出てきた元でっかいカブトムシの人間がじっと男を見る。手には斧を持っている。男が気づく。

男 え?おい!どこから外に出たんだ?手も拘束していたはずだろ。…おい、なんだ、その斧は。

カブ ああ。生まれ変わった気分です。ありがとうございます。

その元でっかいカブトムシはゆっくり男へと近づいていく。

男 待て。待つんだ!まさか、人格が完全に書き換えられなかったのか。殺人鬼としての記憶がまだ残っているというのか。

カブ 死こそ未来だとは思いませんか?

男 おい、おい!ちょっと待ちなさい!

カブ おやすみなさい。

男 待ってくれ!

カブ おーりゃ!おーりゃ!おーりゃ!(斧使ってカブトムシ風に攻撃)

男 ああ!!カブトムシの名残り!!

タコ足OFF


おわり


おもしろいこと、楽しいこと、皆さんの心を動かすことだけに集中させてください。どうか皆様からのご支援をよろしくお願いいたします。