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メンターは88歳・❸

主人公、29歳のわかめさんは会社以外に居場所がなく、日々の生活に悶々としていました。会社の人間関係に依存し、週末はひとりぼっちにならないように必死です。自己分析をしても何の特技もないことに打ちのめされます。SNSを見ながら他人の充実した生活に心揺れ動かされてばかり。自己啓発にチャレンジしようと思っても行動に移せず時間だけが過ぎていく。自称言い訳名人。孤独と将来への不安に心がザワザワする日々を送っていました。そんなわかめさんが88歳のなおえさんとバス友になり、「パラレルキャリア」という新しい生き方を教わります。この変化がわかめさんの人生に新たな色を加えるのです。

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第3章 わかめさんでもすぐにできる5つのアクション


・自分に合った手帳

  ある日、なおえさんは長年愛用しているという小さな革の手帳を取り出し、そのページをやさしくなぞって見せてくれた。手帳は日記やスケジュール帳だけでなく、なおえさんの人生を豊かにした道具だそう。

「予定」を書くことでリア充ぶっていた少し前の自分を思い出して苦笑いする。

 日々の出来事、感じたこと、学んだことを記録してきた。人に見せたくない心の内側を書いたところには「マスキングテープ」が貼ってあるそうだ。

 たしかにところどころにマスキングテープが見えた。なおえさんの見せたくない心の内を書くことで解消していたのだ。

「手帳を使うことで、自分の時間を可視化できるの。自分の人生をよりよくコントロールできるようになるのよね」と微笑みながら語る。

 なおえさんの人生の物語が詰まった手帳。ページごとに多くの経験と知恵が凝縮されているのだろう。

 予定がないことに怯えて予定を埋めてばかりいたわたしの手帳はかわいそうだったな。 

・感情コントロール

 雨の日にバス停には少しイライラをまとった男性が並んでいた。バスに乗り込むときに前にいる男性を手の甲で押して早く進めよといったようで「押さないでください」と前の人が振り向いてイライラ男性にきつい口調。イライラ男性は前の人を無視した。

 わたしはなおえさんとその場を緊張感で見守る。イライラ男性と離れたところへ並んで座り、なおえさんの一言めを待つ。

 感情に振り回されないようにするといいのよと話す。

 自己肯定感が低く、自分を信じられないわたしは、常に暗い感情を抱えがちだった。さっきのイライラおじさんなんて、マジで無理な存在。

「感情はコントロールできるのよ」となおえさんは言う。なおえさんはまたアンガーマネジメントについて教えてくれた。

 その教えに従って、わたしは自分の感情を理解し、それにどう対応すればよいかを学び始める。

 怒りをかんじたとき、まずは「そうきたかー」と6秒やり過ごす。6秒は反射をしないため。そのつぎに怒りの原因になった「こと」を自分の力で「変えられるか・変えられないか」その出来事が「重要か、重要でないか」を4つの箱に分類してみる。

1の箱)重要/変えられる・コントロール可能
2の箱)重要ではない/変えられる・コントロール可能
3の箱)重要/変えられないコントロール不可能
4の箱)重要ではない/変えられない・コントロール不可能

 たとえば、銀行のキャッシュコーナー。たくさんの人が並んでいる。ひとりが1台を占拠し、作業をくりかえして、待っている人が増えている。
1)2)3)4)どの箱に入れますか?

箱にはいったときの対応法はこんな感じ
1の箱)いますぐ取り組む
2の箱)余力があるときに取り組む
3の箱)状況を受け入れ、現実的な選択肢を探す
4の箱)放っておく

 自分の考えや行動によって起こる結果が「長期的に健康であるかどうか」を判断基準にして、どの箱にはいるのか考えると……もし、わたしが、キャッシュコーナーで怒りを感じたら、4)重要ではない/変えられない・コントロール不可能 の箱にいれます。 

 そうです、放っておく。どの箱にいれるかは自分次第です。
「ひとがたくさん並んでいるから早く終わるべき」
「操作はひとつであるべき」と自分の怒りのもとになっているのは自分の[
べき」なのだそうです。

 アンガーマネジメントの学びで感情にふりまわされないでいられるようになりました。

 なおえさんのアドバイスを実践するうちに、わたしは少しずつ変わり始めた。以前のわたしなら膨らむ一つのネガティブな感情にとらわれていたけれど、いまはその感情を認識し、それをコントロールする方法を見つけている。

 なおえさんの教えは、単なるテクニックを超え、わたしの心の在り方を根底から変えてくれた。わたしの毎日をポジティブなものに変えてくれたのだ。

・オンライン講座

 なおえさんとわたしはゆったりとした会話を交わしていた。88歳のなおえさんの質問はいつもわたしを深く考えさせるものだった。

「わかめさん、あなたの強みはなに?」となおえさんはわたしに尋ねた。

 わたしの強み? 

「5年以上やっていることってなにかある? 」

 自分の仕事について話し始めた。5年以上続けている総務担当としての役割、データの整備や整理整頓、会議室のセッティング、社員の働く環境を整えること。地味だけど必要な仕事だとは思っている。でも誰でもできるのだけど。

 なおえさんは微笑みながら言った「その仕事であなたは講座ができるのよ」

 わたしが? 講座? 嘘でしょ。

「わかめさんはお仕事で得た情報なんかはどこにストックしてるのかしら?」なおえさんに聞かれる。「いろいろなツールを使ってきたんですけど、いまはNotionというアプリです」

「そう。聞いたことがあるアプリよね。流行ってるんでしょ? わたしは昔っからずっとDropboxだけどね。」

「Notionは、事例共有のメモに使ってるんですよね。従業員からの質問に部署の同僚が同じ回答ができるように、標準化のために共有してるんです。」

「それはいい使い方よね! 」

「だれかとおしゃべりしているよりも、こういうアプリをいじってるのが好きなんですよね。いじったらいじっただけ詳しくなりますし。」

「わかめさん、「Notinのはじめての使い方」って30分講座を作ってみたらどうかしら。その講座を録画して、動画販売もできるようにするの。二次利用ね。」

「売れるし、わかめさんが話すだけだから、スマホで録画すれば、なにもお金かからないんだから。いいでしょう? 」
  確かに、いまNotionにはまってる。Notionの魅力もたくさん知っている。
 得意なことや好きなことを「30分コツを話す」それを動画にして売るなんて、考えもしたことない。

Notionのこと、知らないひとに知ってもらいたいってワクワクしてきた!

 なおえさんのヒアリングによって、わたしはオンライン講座の講師になる準備をはじめた。わたしが教えたのは、情報整理のためのツール、Notionのはじめての使い方だ。

 知らなかった。いまNotionが注目されていたなんて。

 はじめての講座は何度もリハーサルをする。緊張したけれど、わたしの経験が受講生に役立つことを実感し、次第に自信を持って教えられるようになっていった。失敗もしたけど、次につなげようと自分に言い聞かせる。

 なおえさんの言葉は、わたしが自分自身の強みを認識し、新しい道を歩む勇気をくれた。

 これからも自分のスキルと経験を活かして、他の人々に知識を伝える役割を果たしていけるといいなと思う。なおえさんのアドバイスはわたしの人生に新たな目的を与えてくれたのだった。

・コーチング

 「コミットメントはね、ただの約束ではないのよ。それは、目標に対して心を捧げることなの」となおえさんはやさしく話す。今日はコーチングのセッションを行っている。「コミットする」という言葉の意味がわたしにはまだはっきりと理解できていない。

 「成果を上げるためには、壁打ちの相手が必要なの。そのためには、自分の目標に真剣に取り組むことが大切よ」

 なおえさんの言葉は、わたしに新たな視点をもたらした。

 コミットメントは、ただの行動計画以上のものであり、自分自身との約束であり、自己実現への道。

 「たとえばね、コーチと目標をすり合わせするの。毎朝、日の出とともに起きて、自分のためだけの時間を作ってみるって。この時間を使って、その日の自分のスケジュール確認や、前日の反省と次への改善点をメモすることにするの。この静かな時間を使って、瞑想や読書、身体を動かすこともいいわよね。一日の活力を高めてくれるのよ」

「毎朝、日の出とともに起きる」というコミットメントは、時間を管理することではなく、自分自身の心と身体の健康をキープするし、一日の質を高めることを目指す誓いとなるって。この誓いで朝活をはじめようと決意した。

 なおえさんのコーチングを受けながら、わたしは自分の内面を深く掘り下げ、自分の目標と向き合う勇気を見つけた。

 心の奥にあんなにおどろおどろしい漆黒の闇を持っていたのに。

 朝のバスの時間でなおえさんはわたしの成長を支え、わたしを理解し、励まし、導いてくれた。なおえさんのおかげで、わたしは自分自身にコミットし、自分の可能性を最大限に引き出す道を歩み始めていた。

 これからも壁打ち相手を探していこう。壁打ち相手にわたしを選んでもらえる発信もしてみようと決めた。

・タイムマネジメント

 「タイムマネジメントとはね、ただ時間を管理することではないのよ」となおえさんは静かに語り始めた。

 「それは自分の時間をどのように使うか、そしてその時間を通してどのように自分自身と周りの人々を幸せにできるかなの。」

 なおえさんは続けて言った。「自分が幸せになるためのタイムマネジメントは、自分自身のニーズと価値観を理解し、それに基づいて時間を過ごすことよ。そして、自分に関わる人たちが幸せになるためには、彼らのニーズに敏感であること、共感することが重要なのよ。難しいし、面倒だけどね。」

 なおえさんがバスに乗る日があと少しになった朝の話。

 時間の使い方を見直すきっかけとなり、わたしは自分自身の時間をさらに意識的に使うようにした。また、周囲の人々に対しても、より配慮深く接するよう心がけるようになった。

 例えば、クライアント相手に、仕事で質問をテキストで送るときには、箇条書きにして見やすく、クライアントにはなるべく「YES」か「NO」で簡単に回答してもらえるような工夫をするようになりました。

 ケースバイケースだけど、「電話」も相手の時間を奪うから、事前に、電話で話したいことをメールやチャットで送っておくようにしてみたり。

 こちらが「時間」を意識した取り組みをすることによって、クライアントとはいいパートナー関係が築けている。

 単に効率的に時間を使うこと以上のものを含んでいて、それはわたし自身と周りの人々の幸せを最大化する方法として心に深く刻まれる。

 すぐにスマホをムダにスクロールしていたわたしはもういない。そして周りの人たちにも笑顔になってもらいたいと思うようになれた。


【第3章まとめ】
すぐにできる5つのアクションは、①自分に合った手帳をつかうこと、②感情コントロールができるようになること、③オンライン講座で学ぶこと、④自分にコーチをつけること、⑤時間管理を極めることです。
スマホに時間を奪われていませんか?

第4章はこちら


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