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おもしろ募金箱(その1)

募金をもっと楽しんでもらえるための仕掛け募金箱をつくり、地域のために活動している団体さんたちにプレゼントすべく、制作を始めました。


■ 楽しい募金箱をつくりたい
「おもしろ募金箱」「遊べる募金箱」を作りたいという動機は、10年以上も前にNPOのお手伝いをしていたときにわき上がりました。せっかく募金してくれる人をもっと楽しませたいと考えたわけです。当時も板を買い、それなりに挑みましたが、自分の工作能力では高品質に仕上げることがどうしてもできず、計画は完全にとん挫したのです。
でも、レーザーカッターなどデジタル・ファブリケーション機器に出会い、「データさえ作れれば手の器用さは関係なく、超精密な工作ができる!」と知ったことでチャレンジ精神がよみがりました。


■募金箱の形を改めて考える
どんな仕掛けの「おもしろ募金箱」にするか。ずっと念頭にあったのはタカラトミーが販売していた「コインコロン」という貯金箱。ピタゴラスイッチ的な感覚でコインが転がり、しかも、その転がるコースを自由に組めるのがとても魅力的でした。

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ラフを描いて自分なりのイメージを組み立てながら、それをベクトルデータにしていきます。

ところが、なれない人が、立体物の設計図を構成するのはかなり難しい。すぐ手が止まってしまうので、自分にイメージできそうなものとして、板を張り合わせて重ねる構造に切り替えました。

【転換】3次元の立体物ではなく、厚みのある2次元平面を重ねるという考え方の設計にすると、形を考えるのがすごく楽になった!


■ユニットの試作と調整
コインが転がるユニットをデザインするにあたって、何を気にする必要があるのか、紙の上であーだこーだしながら、ゆっくり考えてみました。
・すべての硬化が使えるなら、経路には500円玉が通れる幅が必要
・経路の曲がり場所は、500円玉の直径が連続的に通れるか要確認
・転がるコインを経路上に抑え込む「ふた」となる面が必要
・MDF板は厚み2.5mmからなのでユニットは底面、経路、ふたの3枚構成

こうした検討の中で、細かい形をデザインをするには、その前にコインの大きさや板の摩擦をふくめた、必要な傾斜角などを知る必要があると気づき、いくつかの試作板を作成しました。(初めてのレーザーカッターに感動!)

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試作による気づきはたくさんありました。

【発見】レーザーカッターで切りぬいた板は、切った部分と残った部分がパズルのようにぴったり合うので、残り板をガイドにすると、貼り合わせが美しく簡単!

【失敗】4方向の分岐ユニットは思うとおりに機能せず。上からくると下に落ちるだけ。左右から侵入することもできる、というだけの機能になってしまいました。


■試作2回目は土台作りにも挑戦
1回目の試作を経て、経路ユニットのパーツは2つの改善を加えました。
・板の角が危ないかもしれないと思ったので、パーツの角を丸く
・上から来て、横方向または下方向に流れる3またパーツの開発

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土台作りはいろいろ迷いましたが、経路パーツを2×3の6か所配置できるスタイルにしました。もっとたくさん並べた方が面白いのですが、500円玉基準で作られた経路パーツ自体が結構大きいため、配置箇所を増やすほど、募金箱自体が巨大化するジレンマに。シンプルさを優先した小さめにしました。

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また、僕が想定していた募金風景は、無料講座などの後の自由な滞留時間に募金活動を促進するものでしたが、実用の場面を想像していくと、お金を入れてくれる人が、いちいちユニットで遊ぶわけにもいかないというケースも考えられました。
そこで、ごく簡単なシンプル&コロコロ募金箱も作ってみました。

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いずれの写真の募金箱も、壁に立てかけていますが、実用に向けては、募金箱を最適な斜めの角度に保持する支えを作る必要があります。
しかし、どのくらいの角度が最適なのか、いくら想像してもわからないので、まずは壁に立てかけられる試作をつくり、これで実際にコインを転がしながら角度を探るという方法にしました。

【学び】箱全体の傾斜角度が変わると、コインと底面に生じる摩擦力が変わってくる。500円玉と1円玉ではかなり違ってくるので全硬貨でためすこと。傾斜が垂直に近づくと底面の摩擦が減り1円玉でも転がりやすくなるが、重い硬貨の動きが速くなりすぎて見る楽しみが減ってしまう場合がある。

上に載せたシンプル&コロコロ募金箱は、実際に地域活動に使ってみてもらいました。コインの転がっていく速さは、投入から落下まで2秒くらい。おとなとしては十分に目で追えるのですが「未就学から小学校低学年の子どもたちだと理解が追いつかない子が少なくないようだった」という感想をもらいました。

うーん。何事もやってみないとわからないものですね。

(その2へ続きます)


板橋区内に、レーザーカッターや3Dプリンターを使って何かを作ったり届けたりしています。また、そうした道具を使える人を増やしたいという思いで、講座などもちょいちょい開催しています。サポートいただけた場合は、こうした機材費や会場費などに利用させていただきます。