【ボクの穴 彼の穴】感想

9月21日、4連休のなか東京芸術劇場プレイハウスにて。
約2週間ぶりの観劇だが、街の賑わいは先日とは様子が違っていた。

話はシンプル。
戦争中にそれぞれ穴に取り残された、二人の兵士の物語。
お互い近くにいることは知っているが、姿を見たことがない。
タイプの違う二人が、それぞれの穴で極限に近い状態での独白から話が進んでいく。

大鶴佐助さん演じるボク(私はカタカナはこっちだなと思った)
とても可愛らしい話し方。動きもコミカル。
ごくごく普通の若い男。

宮沢氷魚さん演じる僕(漢字のボクののイメージ)
真面目な学級委員長タイプ。
友人のマイケルが目の前で死んだことを引きずっている。少し神経質そうだが、こちらも普通の若い男。

この普通の男たちが、銃と戦争マニュアルを渡されれば"兵士"になってしまうんだなぁ。

時間という概念のない中、一人でいる。
他人の気配を感じるのは敵である彼の銃声だけ。
その銃声がほんの少し孤独からボクを救う。相手について考えるということができるからだ。
それが例え、きっと相手は悪いやつ、モンスターであっても。

細かい台詞を一回では覚えきれないのだが(覚えられる人すごいなぁ)
かなり、ふむふむと自分に刺さる言葉が多かった。

ネタバレになるが、互いが相手の穴に行くことで、お互いが自分と同じ人間であるとわかる。
得たいの知れないモンスターじゃなかった。
モンスターだから、正義の心で敵を倒せば良いと思っていたのだが、相手が人間だと気づくことで、戦争の愚かさにも気づく。

相手も人間、これが現代社会において、とても大事なんじゃないだろうか。
昨今、顔の見えないネットの世界で起こっている、所謂"叩き"
顔が見えない相手だから何を言ってもいいのではない。そこに確実に生きている相手、人がいる。
顔が見えない相手は実体がないわけじゃない。
自分の小さな世界の価値観の正義を振りかざして、相手の心を殺していいわけではないのだ。

ラストにお互いが、戦争を終わらそうという手紙を書いて瓶にいれてお互いの穴に投げるのだが、その手紙は1つではなく、たくさんの手紙が穴に降り注ぐ。
二人だけの世界だと思っていたら、世界にはたくさんの人がいるってことだと私は理解したのだけど、これもまさしくそうだなぁと納得した。
私の知らない人は世界には山ほどいるんだ。
こういう気づきは大事だな。

この舞台、セットはとてもシンプルで、穴のあいた大きな布が動くだけなのだが、それがとても効果的だった。
その潔い舞台装置に美しさも感じた。
豪華であれば良いってもんじゃないんだなぁ。

そして、役者のお二人がとても声が良い。
よく通る声。
大鶴佐助は滑舌が素晴らしく、とても聞きやすい。
宮沢氷魚さん、声が私の好みのドストライク!いや、いい声、ずっと聞いていたい。
声が良いって舞台役者には無敵の武器だわ。

あと、ミーハーな感想書くと、宮沢氷魚さんの体型もめちゃめちゃ好みです。背が高くて、細くて、適度に筋肉質。

二人の上裸見れちゃいます(笑)
大鶴さんはお尻半分まで見えてたけど、大丈夫なのか(苦笑)

ともすると、かなり暗い話になりそうな極限状態の二人のストーリーなのだが、所々にコミカルさが散りばめられていて、適度に軽い。
その軽さが、今のご時世に演劇を観るには助かるなと思った。
現実が重い今、虚構の世界もあまりにも重いとしんどい。
笑いの部分も含みつつ、しっかりと考えさせられるテーマもみせる舞台、私の超絶好みでした。
良いもの観たな。

特に誰のファンでもなく、たまたま目にしたHPをみて、これ面白そうだなと思った私の演劇に対する野生の勘! 誰も誉めてくれることではないので、自分で誉めておこう(笑)
以前のように観劇三昧というわけにはいかず、かなり絞りこんで観に行く演目を決めているので、野生の勘は大事。
自分にとって面白いものを嗅ぎ取る力は養いたい。

実になる演劇体験ができたなぁと、ホクホクとした気分になった1日でした。

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